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 テングを意識し始めたのは出会った後だった。

 突如現れた台風にトルネードは驚きながらも、その在りえない台風を相殺するためにその地点へ向かいそして出会ったのだ。

 何故台風を生み出していたのかは解らないが、目を合わせた瞬間にテングは戦闘態勢に入っていたように思う。

 戦闘の経験があるとはいえ、空中戦、しかもアンノウン相手は初めてだ。

 トルネードとテングはお互いの風を打ち消しあい、そしてトルネード自身の下半身の竜巻が消された瞬間勝負がついた。

 そのまま海に落ちてしまう。

 スプラッシュに救援信号を送ったのですぐ来てくれるだろう。

 そしてテングはどこへ行ったのか。

 スプラッシュに引揚げられたときには既にいなかった。



   ****



「それ、テングマンだ。よく壊されなかったねぇトルネードマン」

「あぁ、そんなに危険なロボットなのか?」

 ロックに問いかけるトルネード。

「DWNだし…うーん…僕専用に凶暴かも」

「?」

「彼って気難しいのかな、プライド高いし…まだ僕のこと諦めてないのみたいだし…勝つまで満足しないんだよ。

 で、トルネードマンはテングマンのデータをどうするの?」

「いや、興味があるんだ」

 トルネードは目を細め少し微笑む。

「風を扱うロボットはいるが、俺と同じ竜巻を扱っていたからな。

 気になるじゃないか」

「そういうものなの?じゃあライト博士に伝えておくね」

「あぁ、よろしく頼む」

 そうして、データを持ってきたのはロックではなく馴染みのない男だった。

 金髪に青いバイザー、人間かと見間違えるほど精巧な作りのロボット。

 最近よくライト博士の研究所に出入りしている男である、会話などはしたことはないのだが博士と親しそうに

 話しているのを見かけたことがある。

「初めまして、博士からのデータがこれだよ。受け取りたまえ」

「すまない、手間をかける」

 データを読み取るトルネード。

「へぇ、試作ロボットだったのか。」

「そうだね、なかなか良いロボットだった。粗末な改造だったので手直ししてあげるのも楽しいものだったが」

「? どういう意味だ?」

「いやなんでもない。」

「試作か…。もし試作ロボットのままだったら彼はどうなっていたんだろうか?」

「戦闘用じゃなく普通に暮らしていたら、ということかい?」

「あぁ。俺のような完成品が出来たとして、処分されていただろうか?」

 彼の青い目は酷く暗い。

「その目は止めたまえ、気に入らない」

「えっ」

「昔の私を見ているようだ、それに仮定の話など生産性がない、無意味だ。

 仮に処分される身になっていたとしても彼はそこから抜け出しているだろう、君たちのようにね」

「………」

「君は今の立場が嫌なのか?」

「そうじゃない、そうじゃないんだ、俺はただ、先のことを考えてしまうようになって…不安なんだ。

 あの時はそのときの自分の命と今度の全てのロボット達のことばかりを考えていた。

 でも今はあの時と同じじゃない、違う、だから…生きなくてはならないけれど、どう生きるかが……。

 このロボットはどう生きているのだろうかと、少しでも知ることができればと…」

「ではテングが居る場所を教えてあげよう」

「え!?何故知っている!!?」

 男は目を細め、口端を吊り上げる。

 なんだかその笑い方に見覚えがあった。

 後から気づいたが、ワイリー博士だったように思える。

「名乗るのは止めておこうと思っていたが名乗ろう、私の名はキング。

 過去、ロボットだけの世界を作ろうとした者だ。今も諦めてはいないがね」

 別のアプローチを試みている、なんて言いながら、キングはトルネードにテングの居場所を教えたのだ。 



   ****



「テング!見てくれ!上手に焼けた!!」

「いちいち報告しなくていい」

「すまない嬉しくて」

 何が楽しいのやら、トルネードはテングが釣ってきた魚を焼き始め今に至る。

 テングは先ほどから不機嫌だ。

 トルネードに対して怒っているわけではない。

 今更ながらどうしてトルネードが自分の居場所を突き止めたのか、それを問うてみればキングの名前が出てきた。

 それが腹立たしいのである。

 あの男が絡むとロクなことがない。

「あいつとはよく会うのか?」

「いや、俺も研究所に通っているわけではないから、たまにかな。

 よく喋る男だな」

「嘘ばかり吐く」

「そうなのか?そんな感じはしないが…」

「お前らDRNは騙されやすいからな」

「うっ…!?」

「どうせ拙者の居場所を教えたのもからかうためだろう」

「それは、違う…多分、俺のためだ。」

「意味が解らん」

「んぅ…まだ、気持ちの整理がついていないんだ…もう少し、待ってくれないか。

 もう少しすれば説明できそうな気がする」

「くだらん」

「俺は真剣なんだ」

「拙者にとってはくだらんことだ」

「解った、それでいい。俺にとっては真剣なことだからな」

「……」

 ふぅ、とテングは小さく息を吐いて諦めた風に黙り込む。

 トルネードも会話をそこまでにして、焼いた魚を齧り始めた。
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