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オイルと金属と雨の匂い。
手を伸ばし、もしくは押しのけ、這い出る。
「う、あ・・・」
何故自分は動けるのだろう。
なぜ皆、起動していないのに自分だけ起動しているのか。
なぜ、なぜ…
ホーネットは戦慄にも似た感情を抱く。
よろめき、雨で滑った。
抵抗する力も出ずスクラップの山からずり落ちる。
どうすればいいのだろう
廃棄処分となった自分が何故こうして動けているのか?
嗚呼、眠ったままでいたかった、これではあまりにも残酷だ。
「酷い嵐だな、『兄弟』。動けるか?」
「!!」
声に、顔を上げるホーネット。
別のスクラップの山から覗く数体のロボットの影。
カッと雷が閃光となってあたりを照らす。
声をかけたらしい緑のロボットはカメラアイを青く光らせている。
晴天のような、透き通った青。
ロボットはホーネットの下へ降りてくる。
「大丈夫か?」
手を伸ばすのでホーネットはその手を掴んでいた。
「は、はい…すみません、大丈夫です」
「俺はトルネード。皆はあとで紹介しよう。
君も来るだろう?好き好んでここにはいたくないだろう?」
「それは、えぇ…でも、どこへ行くんです?」
不安げに疑問をぶつける。
「アテはないが、まず君のようなロボットを回収していこうと思う。
そして俺は人間たちに間違っていると主張したいんだ。
俺はもっと働ける!もっとだ、もっと!!!この場に眠る彼らたちもきっとそう思っていただろう!
君だってそうじゃないか?まだ俺たちは動けるのだと、人間の定めた期間は間違いだと!」
「……はい」
「共に歩もうじゃないか。俺たちと一緒に行こう。動ける俺たちが正しき道を歩まなくてはならない。眠る彼らのためにも」
「大丈夫、でしょうか…できる、でしょうか…」
「できるできないじゃない、やるしかないんだ」
「…!」
「ついてきてくれるか?」
トルネードは少し不安げな表情でホーネットを見る。
この男はきっと真っ直ぐな性格なのだろう。
そして他人を思いやる心を持っているのだろう。
そしてスクラップと化した彼らを見捨てることもできないのだろう。
そんな彼についていっていいのだろうか
否
ついていかなければいけないのかもしれない。
少なからず自分も彼の助けになるかもしれないのだ。
彼のために何かしてあげられることがあるかもしれない。
「行きます、貴方について行きます…。
私は、ホーネットマンと言います」
「ホーネット…」
トルネードは笑顔を浮べる。
「よろしくなホーネット!」
その笑顔が目に焼きつきそうなぐらい、魅力的だった。
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