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世界各地でロボットによる反乱が起こった。
パイレーツは特に興味はなかった。
その首謀ロボットたちがDRNであるということも
パイレーツは特に何も感じなかった。
やりたければやればいい
昔の自分ならば、そう考えて面白がっていただろう。
今は少し事情が違う。
キングに人類のために動いてくれないかと『頼まれた』からだ。
「俺らが失敗してんだからお前らも失敗するに決まってるんだぜ…」
船長室に備えてあるモニターに映る映像を眺めながら一人呟く。
『パイレーツ!』
モニターがダイブの映像に切り替わる。
『いたぞ!浮上するから捕まえてくれ!』
「あいよ」
船長室から出て甲板へ出る。
今ダイブと協力し合って海で暴れているロボットの捕獲作戦を決行していた。
パイレーツにとってダイブと手を組むという行為は癪に障るのだが、仕方がない。キングに頼まれたのだから。
もちろん断る権利はあった。
だがキングの『頼み』は受け入れたい。
「俺はダイブと違って手荒いぜ人魚さんよ」
轟音と共に海中から水柱が上がり始める。
海中のリモートマインを作動させはじめたのだ。
これで牽制し追い込む。
あとは仕掛けた特殊な網に引っ掛けておしまい、海タイプのロボットなんて魚と同じ。
ガクンッ
船が揺れる。
「!? なんだ今の揺れは!」
「お頭!小型の魚型ロボットが船底に特攻して来てます!」
「はぁ!!!?」
部下の報告を聞きながらパイレーツは海面を睨む。
まさか船(こちら)の位置がバレるなどと―――
かすかな音が聞こえる。
パイレーツの聴覚センサーは特殊である。
その音をきちんと拾っていた。
「なんだぁこの歌は!引け!船を出せ、止まるな!」
―――遅い
今の判断はもう少し早くするべきだった。
船が大きく傾いていく。
あぁそういえば、人間どもの間では船を沈める怪物がいたな
歌声聴いたら船が沈むんだったか。
船から投げ出される。
瞬間、海面から女性型ロボットが顔を出した。
たしか、怪物の名前はセイレーン―――
電子頭脳は相手の識別コードを表示する。
『DRN.067
スプラッシュウーマン』
「邪魔を、するのならぁ!!!!」
「!!!!」
レーザートライデントがパイレーツの肩に突き刺さる。
「なぜロボットなのに、人間の味方をするのです!!!貴方だって処分される可能性があるのですよ!」
水しぶきを上げて沈むパイレーツに叫ぶ。
「…」
パイレーツは返事の代わりにリモートマインを投げた。
「!!」
爆音、熱風に巻き込まれながらパイレーツは海の底へ沈んでく。
スプラッシュはどうなっただろう、至近距離でマインを爆破したので耳が聞こえない。
きっと相手も同じだろう。
今のうちに逃げる、どこかに隠れよう、本気でやると相手を壊してしまう。
(なんで、味方…?別に…味方してねーし…)
ちゃんと答えてあげるべきだっただろうか。
スプラッシュの目をあまり見ていたくなかったのかもしれない。
あの目は、酷い目だ。
(…キング)
昔のキングの目だ、酷い目だ、冷たい目だ、全てに冷めてしまっている目だ。
絶望の目だ。
救えるのなら、救おうなんて、思ってしまった。
どうせ壊されるのなら…俺の下に来ればいい、と。
どうしていえなかったのか。
いや…それはきっと、許されない逃げ道だ。
ダイブからの信号がくる。
あぁ、こんなヘマしたところアイツに見られるのだけは癪だ。
パイレーツはそう考えながらスプラッシュの歌声を思い出す。
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