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ジェミニちゃんと初めて出会ったとき俺は電子頭脳に衝撃が走った。
この子に尽くさなくてはと思った。
美しく―――繊細で―――
尊い存在!
ジェミニは良い子だった、周りに気遣い優しく明るい、青い子を眩しそうに見つめる目は慈悲に満ちていた。
ジェミニは青い子を尊敬しているんだなと気づいた。
そしてそれが愛へ歪んでいくことに苦しんでいた。
顔には出さないようにしていたけれど俺には解った、ジェミニちゃんを知っているのは俺だけだから。
ジェミニは青い子のように周りから愛されたかっただけだものね。
大丈夫だよ、みんなジェミニを愛するよ!
青い子を裏切って苦しむジェミニちゃんは可哀想。
苦しませる者は俺が全部取り除いてあげるから。
俺が愛するジェミニを悲しませるようなことはしないから!
ジェミニは笑っていてね、楽しく暮らそうね。
みんなジェミニちゃんを愛しているよ。
誰も傷つけないし、やりたいことをやろうね。
今まで抑え込んでいたその衝動を表に出していいんだよ。
マグネットはマスク越しに微笑んでいる。
ずっとそうだ、生まれた時からずっとずっと優しく微笑んでいる。
俺が何をしても咎めないと、そう目で伝えてくる。
それが苦痛でもあった、こんなにロックに対して感情を抑えているのに好きにしていいと言わないでほしい。
今の関係が壊れたら俺は壊れてしまう。
壊れた、もう戻せない。
何もかも失った、けれど周りのみんなは変わらずでマグネットも変わらない。
俺だけ変わったのかとも思ったが、違うんだろう。抑えていただけで元々こうだったんだ。
鏡に映る俺は美しい、何もかも忘れさせてくれる。
ずっと鏡だけ見ていればいい、自分のことだけ愛せる。
自分の瞳の色が脳裏でマグネットの色と重なる。
俺は唸りながら頭を打ち付けて鏡を砕いた。
解らない、色んな感情が沸き上がりぐちゃぐちゃになって、鏡を割ると心は落ち着いた。
壊れたものは美しい
美しいな―――
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