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コピロクとトルネードが軽くキスするので注意
メットレスめったん出てくるので注意
 パっとみ、あの子とそう変わらない。

 ただあの子と比べて目の前に立つこの少年には差異がある。

 あの子の髪はロールちゃんの手も入っているのだろう、手入れが行き届いているのか柔らかであるが

 この少年は少し硬めの印象を受ける。

 そしてその目。

 あの子の、青空のような青い瞳はそこにはなく真紅の瞳がそこに在った。

 浮かべる笑顔も見かけに合わない妖艶な笑みであって大分印象があの子と違ってくる。

「君は―――」

「聞いたことあるでしょう?僕のこと。無いのかな。それだと凄くショック~。

 コピーロックマンだよ。皆コピーって呼んでる。好きなように呼んでね。ロックマンでもいいよ」

「コピー」

「ふふふ」

 コピーは対峙する―――トルネードに笑いながら歩み寄る。

「いきなり呼び止めてゴメンねトルネードマン。ふふ、ロックマンだと思った?」

「あぁ、音声は完全にロックマンと一致しているからな。

 何か用なのか?俺はもうお前たち(DWN)に手は貸さないぞ」

「個人的に会いにきたの。ん~立ち話って僕疲れちゃう。」

 コピーはキョロキョロと辺りを見回す。

「あ、向こうに公園が見えるね。あそこでお話しない?」

「…別に構わないが」

 警戒しつつトルネードは頷く。

 断っても良かったのだが、ライト博士がジェミニとスネークを保護している以上目の前のDWNを追い返すわけにもいかない。

 もしかするとコピーはジェミニに会いたいのかもしれないからだ。






「だいたいのことはシャドーから聞いてるんだ」

 コピーはベンチに腰掛けながら、同じく隣へ座るトルネードに呟いた。

「シャドーって殆どスネークの影にいるからねー」

「…なんだと」

「ふふ。いない時もあるよ。でも通じ合ってるからいてもいなくてもどっちでも同じなんだ。

 シャドーはスネークの影みたいなものなんだよ。切り離せない、多分ずっと一緒。そういう関係っていいよね」

 目を細めて影を見るコピー。

 ずっと一緒とはどういう意味なのか、トルネードには今ひとつピンとこなかった。

 シャドーがロボット博物館から中身が空っぽのスネークを盗み、操ってジェミニを迎えにきたことは知っている。

 そういう流れもあったので何かしら切れないものがあの二人にはあるのかもしれない、と理解した。

「誰しもずっと一緒にいたいものだ。別れは、辛いな。」

「だよねー?辛いよねぇ?」

 上目遣いでコピーはトルネードを見てくる。

「ジェミニにこっちへ帰るようにいってあげてよトルネードマン。

 君のいうことならジェミニは聞くよ。君のことを愛そうとしてるものジェミニ」

「…違う」

 トルネードはコピーから顔を背けて否定する。

「知ってる。君をロックマンの代わりにしようっていうことは解ってるよ。僕はジェミニのこと何でも解るもの。

 だからね、君を傷つけてるのもジェミニの愛さ。

 だって僕たち傷つけあっていたからね。ジェミニはスネークの心を抉って、スネークはジェミニの心を抉ってさ。

 そして君の心をもっと深く傷つけようとしてくるよ、好きだもの。これがジェミニの愛だもの」

「……」

 言葉に詰まる。



 それは愛といえるのだろうか。



 そんな愛は存在するのだろうか。



 こんなものは愛ではない。それはまるで―――



「それはただ愛し方を知らないだけだろう?」

「愛し方に形式が存在するの?」

 首を傾げるコピー。

「!? しかし、傷つける行為は愛じゃない。愛し合うという行為はお互い思いやる心が生まれるはずだ」

「ふぅん。僕にはわからないな」

「何故だ!ロックマンのコピーなら―――」

「僕には心は無いんだよ」

「あるだろう?あるはずじゃないか、何故ジェミニを求めるんだ」

「オリジナルに対しての優越感を得たい。そのためのジェミニさ。

 だって、僕がジェミニに対してのこの好意はきっとオリジナルから移った気持ちだよ。

 もしくはジェミニから移されたホログラムデータの心だ。

 ―――僕じゃない。」

「そんな風に思っているからじゃないのか!?悲しいとか、思わないのか!」

「…何故?別に悲しくないよ。まぁ移ってしまった心を拒絶する気もないから受け入れるのみさ。

 ねぇトルネード…」

 コピーはトルネードの首へ腕を回す。

 その妖艶さはまるで、そうだ―――ジェミニだ。

「僕のお願い聞いてよ」

「断る。君とジェミニを会わせる事はできない。」

「どうして?ジェミニを独り占めにしたいの?ふふ、君って意外と意地悪だね?」

「君の愛し方はきっとジェミニを苦しめるだけだろう。俺はこれ以上あいつを苦しませたくないんだ」

「……」

 酷く無表情になるコピー。

 ロックマンの顔でここまでの表情が作れるのか。

 いや、この表情はもしかすると『あの時』の自分かもしれない。

 目の前の、心のないコピー

 あのときの、心を閉じた自分

 これは同じモノではないだろうか。

「苦しめないと約束するんだったら、話だけはしておこう。あとはお前たちで決めることだ」

「つまらない男。じゃあいいよコレで我慢するから」

「!?」

 キスをされる。

 唇が触れ合うキスではなく、小さな舌が潜り込む。

 トルネードは咄嗟にコピーを引き離した。

「な、なにを…!!」

「ジェミニとキスしてるんでしょ?ジェミニの代わりに味わっただけだよ。」

 コピーはトルネードから離れる。

「もしかして、本物にキスされてる…みたいに思って感じちゃった?」

 目を細めてくるコピーにトルネードはカっと顔を赤くする。

「ロックマンに対してそんな感情はない!」

「あっそうなんだ。ふーん。あ、メタルだ」

「?」

 コピーの視線の先に、荷物を持った髪の長い男が立っていた。

 人の姿をしているが反応はロボットで識別番号は『UNKNOWN』になる。

 コピーの知り合いということはDWNなのだろう。

 その男にコピーは歩み寄っていく。

「何をしているコピー。勝手に離れるな」

「ちょっとお話してただけだよ。じゃーねートルネードマン。また会えるといいねぇ」

 手をふって去っていくコピーの姿は、ごく普通の少年の姿だった。
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