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時間軸的にはコア修復前


 ロックはテーブルへ紅茶を注いだティーカップを並べる。

「ジェミニマンも飲むでしょう?」

「あぁ…」

 ソファに座り俯いていたジェミニが顔を上げる。

 具合が悪いのか、表情が硬い。

 体調が良いときは笑顔を貼り付けているのだが今日はそれがない。



 コアの不調が治ればいいのに。



 ロックはそう思いながら、口には出さなかった。

 余計にジェミニを追い込んでしまいそうだからだ。



「あぁ、久しいな。この香り」

 手に取り呟く。

「覚えてる?」

「あぁ、ロックが初めて俺に入れてくれたときの香りがする」

「良かった覚えててくれて」

 微笑むロック。

「お座りよロック」

 ジェミニが手招きをする。

「うん」

 ジェミニの横へ座り、ロックはジェミニを見上げた。

「今、幸せだよ僕。ジェミニマンとこうして静かに暮らしたかったから」

「……すまなかった」

「あ…ごめん、別にジェミニマンを責めているわけじゃないんだ。

 僕も悪かったんだよ、あのときの僕は何も解らなかった、君たちのこと理解してあげられなかった」

「違う、違うんだロック…きっと君が俺を事前に止めることに成功していたとしても

 俺はきっと君を裏切っていたと思う。君の気持ちを…」

 ジェミニはカップを戻して顔を伏せる。

「できることならば、戻したい。時間を戻して、君に向ける眼差しは羨望の眼差しでそれ以外何もないと

 ただ俺は…私は、君に、恋をしたのではない、ただ、憧れていたのだと気づくことができていれば…私は…

 醜い部分を認めていれば俺もロックも捻じれなかったのかもしれない」

「ジェミニマン…」

「ロックは優しい、俺の醜い部分を曝け出しても受け止めてくれるのだろう。

 でもそれは、できない」

 ジェミニはロックの手を取り握る。

「私は美しいかい?ロック」

「…解らない。ジェミニは酷いね、自分のことばかり考えているよ。

 少しは僕のことを考えてくれたっていいのに。あ、でも…スネークのこと考えてるね。

 ジェミニに必要なのは僕よりもスネークなんだよ。だってスネークはずっとジェミニを見ていたんだもの。

 ねぇジェミニ…君は僕のようになりたいと思っていたんでしょう?

 ジェミニは皆から愛されてるよ、みんな優しい。君にとても良くしていたよ」

「嗚呼、俺は後悔ばかりしている…どうして鏡の中ばかり見ていたんだろうな…ウッ」

「ジェミニマン!?」

 崩れるジェミニに慌てるが、ジェミニは手でロックを制する。

「はっ…大丈夫、少し、痛かった…だけだ…」

 コアのある部分を押さえながら呻くように声を吐き出す。

「スリープモードになれば落ち着くから…」

「じゃあどうぞ」

 ロックはぽんぽんと自分の膝を叩く。

「えっ…」

「膝枕」

「え、いやっ…」

「遠慮しなくていいよ、柔らかいって好評だから。誰からかは秘密だけど」

「目覚ましが電撃になってしまう」

「大丈夫だって。君は病人なんだから乱暴なんかしたら怒ってあげる」

「……」





 どうしてこうなった





 ジェミニはそう思いながらスリープモードに移行する―――
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