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 二人が自分を見てどのような感想を持ったのかは知らないし興味もない。
        
         しかしマーキュリー自身はとっつきにくそうな方々だと認識した。
        
         片や最強の兵器だと言われるサンゴッドは自分を見て優しく微笑んでいるわけだが
        
         もう片方、隊長『予定』のアースは真顔で極力感情を見せないようにしているようだった。
        
         そしてこの二人の顔の造詣が似たようなものだったので、マーキュリーはとっつきにくいと感じたのだ。
        
         その微笑の裏に何が潜んでいるのだろう、その無表情の裏にはどんな感情が渦巻いているのだろう。
        
         きっとこの二人は性格は違えど同じ本質の持ち主なのだろうと察した。
        
        「なかなか面白い」
        
        「はい、マーキュリーの能力は見たとおりの肉体の液体化、そしてエネルギーの吸収です。
        
         次のビーナスも近日起動が出来るようで…」
        
        (もう次の話をしている…)
        
         マーキュリーは目を細めて息を吐くが、サンゴッドも同じことを思っていたらしい。
        
         二人で見合ってクスクス笑う。
        
        「…何か?」
        
        「お前の真面目っぷりにマーキュリーともども感心したのだ」
        
        「はぁ…」
        
         アースは眉をしかめて気の無い声を上げる。
        
        「そんなに気が合うならマーキュリー、お前サンゴッドさまの話相手をしてさしあげろ」
        
        「俺が!?」
        
        「つまらない会話の相手をお前がすれば私の負担が減る。
        
         私は忙しいのだ」
        
        「……」
        
         たじろむマーキュリーであったが隊長命令ならば仕方が無い。
        
         ビーナスが起動するまでのほんの短い間であったがサンゴッドとはそれなりの会話をした。
        
         今思い返せばあれは気まぐれではなく確認だったのだろう。
        
         自分たちと同じかどうか。
        
         ただの機械ではないかどうか…。
        
         その時は自分の身体があまりにも特殊だから警戒されたのだろうと思った。
        
         しかしそれは自分の身体が特殊だからという理由からではないのだと、今だから思える。
           ****
「今日は地球人のところへ行かないんですかぁ?」
        
         マーキュリーはサンゴッドの膝の上に抱かれた状態で振り返りながら問いかける。
        
        「うむ。忙しいと怒られてしまってなー。暇をしておる」
        
         そういってマーキュリーの頭をわしゃわしゃと撫で回す。
        
         マーキュリーの髪は髪というより粘土細工のようで遠くから見れば髪の毛なのだがこうやって触れると髪の質感はない。
        
         体質上の問題で一定の細やかな表現ができないのである。
        
        「マーキュリーも暇じゃろ?」
        
        「まぁー暇ですけどサンゴッドさまの相手をしてるとアース隊長が妬くんですよ」
        
        「はっはっは!良い良い、あいつはもう少し砕けたほうがいいからな」 
        
        「本当、昔から真面目ですよねぇ」
        
        「…あの子が潰れてしまわなかったのは、お前たちのお陰でもある。
        
         いつまでも支えてやって欲しい」
        
        「……遺言みたいになってますよ」
        
        「年をとるとこうなるらしいぞ、地球人がいうにはな」
        
         言ってカラカラ笑う。
        
        「やだなぁサンゴッドさま、俺たち永遠に生きれるじゃないですか」
        
        「そうだな…」
        
        「……」
        
         マーキュリーは泣きそうな表情を浮かべて、サンゴッドの首に腕を回して強く抱きついた。
        
        「俺が一番長生きすると思うんです…この身体、腐食するまで俺は死なないから…
        
         でも、皆は違う…皆は……」
        
        「気づいていたか。あぁ、お前は賢すぎるヤツだったな…残してしまう形になるかもしれん…すまぬ」
        
         サンゴッドもマーキュリーを強く抱きしめ返した。
        
        「おそらく私が先に死ぬだろう。だからな、皆のことを頼むぞ」
        
        「そんなこといわないでくださいよぉ!!!」
        
        「今のうちに言えることは言っておかないとな。」
        
         笑顔を浮かべる。
        
         もうあの頃のような裏なんかない、正真正銘の笑顔。
        
         それがとても辛かった。
        
        
        
        
「サターン!起きてるかー!サンゴッドさまから酒貰ったぞー!!」
        
         マーキュリーは気にせず部屋の電気をつけてサターンの下へ歩み寄る。
        
        「…寝てるんだから起こすな」
        
         ベッドの中で睨んでくるサターン。
        
        「寝るの早いよなお前」
        
        「ごめん12時間ぐらいごろごろ寝たい」
        
        「半日じゃねーか!俺と酒飲もう?なぁ?」
        
        (寂しがりやめ…)
        
         サターンは唸りながら身を起こすと、マーキュリーが酒瓶を差し出してくる。
        
        「なんかあったのか?」
        
         一口飲みながら、サターンはマーキュリーの顔を見る。
        
        「別にない。」
        
        (嘘つくの下手だよなぁ…)
        
         サターンは酒瓶をマーキュリーに返す。
        
         二人っきりの場合…相手がサターンの時だけであるがこうやって飲みまわすことが多い。
        
         マーキュリーの癖というのか、中身をコップで分け合うということが出来ないし、
        
         たとえ2本あったとしてもそれを一人一本といった形で分けることが出来ないようなのである。
        
         相手の所有物が欲しくなって堪らなくなってしまうのだろう。
        
         だからこうっやって「あくまであげるのではなく自分の物を分けてやる」といったカタチをとってしまうのだ。
        
        「なぁ…俺思うんだけどさ…」
        
        「うん?」
        
        「サンゴッドさまとエッチしたほうがいい?」
        
        「!!!?」
        
         硬直するサターン。
        
         マーキュリーは至って真面目な顔だ。
        
        「楽しい思い出作りしたいんだけど、サンゴッド様を気持ちよくさせることができるかどうかが問題だよな」
        
        「お前のぶっ飛んだ思考が一番の問題だと思うな」
        
         そこまで言って、そういえばいきなりアースに抱かれたことを思い出してサターンは頭を抱えた。
        
         もしかすると2番目に生まれたこのマーキュリーはアースの影響を存分に受けているのではないか…と。
        
        「うーん、サンゴッドさまってあの地球人が好きなのかなー。あの人わかんないよなぁ…」
        
        「サンゴッドさまは、アース隊長が、好き…なんじゃないのか…」
        
        「…?」
        
         マーキュリーがキョトンとした顔で見てくるのでサターンは顔をそらした。
        
         胸が苦しい。
        
        「それはないよ、あの方はアース隊長のこと、息子みたいに思ってるから。」
        
        「え…」
        
        「だからさ、お前は遠慮なくアース隊長のこと惚れていいと思うぜ?」
        
        「うっ…うぅ…」
        
         顔を赤くするサターン。
        
        「んー、この身体でえっちなことする練習付き合って?」
        
        「何言ってんだお前」
        
        「俺たち友達だろ!?なぁ!友達が困ってんだよ!!」
        
        「やだよ!!!地球人の身体いじればいいだろ!赤毛のさ!」
        
        「お前がいい!お前優しくて大好き!!」
        
        「こんな歪んだ友情いやだ!!!」
        
        「健全健全!」
        
        「うぐお!?」
        
         マーキュリーが液体化して身体に絡みつく。
        
        「やめ、服の中に入ってくるなぁ!!!」
        
         一瞬冷やりとするがサターンの体温に暖められたのか生暖かい感触となって肌の上を這う。
        
        「大丈夫痛くないから」
        
        「うぁぁぁ…!?」
        
         全身が痺れる。
        
        (生体エネルギーを吸われてる!?)
        
         身体の力が抜けていく。
        
        「邪魔だな」
        
         上半身だけ実体化して呟くと、マーキュリーにするりとズボンを脱がされてサターンは思わず呻いた。
        
        「サターン、ナニだよナニ、ほら!オナニーの手伝いしてもらってると思えば!
        
         なんなら俺をオナホと思えばいい」
        
        「そんな友達嫌だ!!!マーキュリー、何があったかは知らないが―――」
        
         口を塞がれる。
        
        「んぐっうっ…!!!」
        
         喉の奥までマーキュリーの一部が潜り込んでくる。
        
        「小難しいこと考えんなよ。気持ちよくしてやるっていってるだけだろ?」
        
        「ッ―――――!!!!」
        
         目を見開いて身体を仰け反らせるサターン。
        
         彼の下半身はマーキュリーの溶けた下半身に沈み込んでいた。
        
         秘所に潜り込んでくる圧迫感がありながら柔らかい感覚―――
        
         そしてナニもその柔らかい感覚に締め上げられているという奇妙な感覚―――
        
         口が自由なら初めての感覚に悲鳴を上げていただろう。
        
         無意識に抵抗しようとマーキュリーに伸ばした手は、彼の体の一部が飛んできて手に絡まると重みを増して
        
         ベッドへ押さえ込まれてしまった。
        
         ニコリと微笑むマーキュリー。
        
        「楽しもうな?」
        
        
        
        
 スライム状になった身体の一部が這い回って刺激を与えながら、内部に侵入したそれらは自由なカタチで
        
         蹂躙しサターンを犯していた。
        
         熱に犯された友のためにこの顔を友の愛しい者の顔へと変化させてやりたいところなのだが
        
         一度それをして嫌われそうになったので堪えた。
        
         アースとの情事の内容は知らないが、サターンは幸せだろうか?
        
         サターンは当初アースに対して恋愛感情は抱いていなかったように思う。
        
         あれはどこか狂信的な崇拝のようだった。
        
         いつからだったか―――右目を失ってからだ。
        
         きっと、サターンは感情を爆発させたアースに魅力を感じてしまったに違いない。
        
         嗚呼、酷く不器用に感じてしまう。
        
         自分と違って他の皆は、もっと通じ合いやすいだろうに…。
        
         マーキュリーは喘ぐサターンを抱きしめて頭を撫でる。
        
        「ッ…ゥ…」
        
         腕の中でサターンが震え、力を失う。
        
        「ん。落ちたか」
        
         呟いてマーキュリーはそのままサターンを離そうとしなかった。
        
        
        
            ****
「何があったのかはもう聞かないが…気は済んだか」
        
        「喘ぐお前は可愛いもんだな」
        
         正直な感想を述べると頭にサターンのチョップを食らう。
        
        「お前に穴があったら逆に犯して復讐してやるのに」
        
        「残念だったなぁ。ところで良かったろ?」
        
        「うるさい黙れブラックホールに吸い込むぞ」
        
         サターンは顔を赤くする。
        
        「俺も気持ちよかったよ。あったかいモノを包み込んでるのってなんかいいな」
        
        「エネルギー吸われてる感覚がして生きた心地しねぇよ…」
        
        「吸うわけないじゃん、吸ったら冷たくなるし」
        
         ニコニコ笑いながら言う。
        
        「よし!サンゴッドさまに試しにいって――――」
        
        「やめろ!!」
        
         マーキュリーを引き止めるサターン。
        
        「何でだよ」
        
        「絶対無理!物理的に無理!おとなしくされるがままになると思うか!?
        
         思い出作りなら一緒に考えてやるから早まるな!!!」
        
        「えー、お前サンゴッドさまを何だと…」
        
        「破壊兵器」
        
        「いやそれ間違ってないけどさ…」
        
        
        
        END
        
  
 
 
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