「わたしたちは兵器からヒトになってきています」



「お前、コイビトと上手くやってるんだろう?」

 サターンは据わった目でネプチューンを見る。

「はい?あぁ、ウェーブですか?」

 ネプチューンは緩やかな動作でサターンを見ながら首をかしげる。

 この場にいるのはサターンとマーキュリー、ウラノス、ジュピターそしてネプチューンだった。

 ジュピターとネプチューンが外から持ってきたお酒を飲み始めてから場の空気が変わった。

 態度が変わったのは日頃の鬱憤が溜まっているのであろうサターンとマーキュリーで、

 あとはそれほど変わらずといったところ。

 みんなが酒を飲んだらどうなるか楽しもうぜといっていたジュピターはウラノスに乗っかって眠っていた。

「いいなー!?お前いいなー!!!?」

「はい、ありがとうございます」

「なんでアース隊長あんなんなの!?」

 サターンが詰め寄ってくる。

「と、いいますと?」

「抱いてくれないの!調整したあとじゃないと!っていうか調整したあと絶対ってわけでもないし!

 なんなのこれ!あの人の性欲どうなってるの!?」

「…性欲ないんじゃないですか?」

「それじゃあ俺がかわいそうだろ!!!!」

「そうですね…色んな意味で今可哀想ですよ…」

「ううう…」

 手に握ったままのグラスを口元に持っていって残りを飲み始める。

「みんなリア充か、死ね…ケツ穴爆発して死ね…」

 マーキュリーがぶつぶつ言いながら飲んでいる。

 肉体の形状維持が出来ないのか、末端(手足)がちょっとどろどろしている。

「ハッ!そうか!」

 立ち上がるマーキュリー。

「サターン!抱いてやろうか!?」

「何を言い出してるんでしょうかこの酔っ払いは」

「アース隊長のモンは俺のモンだオラァ!!!!!」

「…」

 サターンがリングを翳すとマーキュリーはスっと大人しく座りなおす。

 流石に異空間送りは本能が嫌だったのだろう。

「仲いいですね…昔から」

「まぁー…昔から面倒みてたからなー」

「見てくれとは頼んでねぇーけどなー」

 マーキュリーはサターンにいう。

「ま、助かってることはあるしありがたいけどな。さすがサターン」

「ドヤ顔で言われても嬉かねーな…さすがってなんださすがって」

「ほら見ろよこの体…アルコール摂取しただけで指が五本にならん。」

 どろりと蕩けている手を翳す。

「昔こういうことがあったとき助けてくれたなサターン」

「そんあことあったかな…」

「何千年前だったか…細菌兵器にやられたときだな。

 助けられて思ったぜ…こいつ使えるって」

「どこまでも上から目線だな死ねばよかったのに」

 やれやれとため息を吐く。

「サターンの優しいところわたしも好きですよ?ふふふ」

「お前のそういうところ嫌いなんだよ!!」

 ネプチューンに吠えるサターン。

「余裕ぶりやがって」

「性分です」

「つかサターンが常に余裕なさすぎなんだろ?いつも必死すぎ」

「!?」

 サターンは硬直する。

「ひ、必死じゃねーし!?」

「不器用ですよね」

「だよねー」




「なにをしている」




 冷たく鋭い声が響き渡る。

 その場にいた者は全員固まった。

 寝ていたジュピターさえカッと目を開いたほどである。

「あ、アース…隊長…」

 声を上げたのはネプチューンだった。

「…えーっと、隊長もどうでしょう?」

(なんでそうなるんだよ!!!)

 ネプチューンに突っ込むサターン。

(だ、だって怒られるの嫌です!!わたしとジュピターが始めたんですよ!?

 今ジュピターみてくださいあの鳥頭寝たふりしてやがりますよ!?)

 カッカッカッとアースは歩み寄ると酒瓶を一つ手に取る。

「ふむ…まだあるのか?」

「え、えぇ。あります」

「…」

 そのままアースは手にしていた酒瓶に口をつける。

「隊長!!!?お飲みになられるのですね!!!?」

「どーぞどーぞ立ったままもあれです、座ってください!!!」

 ネプチューンとサターンは立ち上がってアースをソファに誘導する。

「次」

 空になった瓶を床に置いて言う。

「はい!!」

「…サンゴッド様が前に飲んでいられたものはないのか…なんだったか…」

「なんでしたっけ、東洋のお酒だった気がしますけど」

「あるか?」

「あります」



   ****



「…隊長、下戸かと思ってたけどすげー飲んでるな」

 マーキュリーがウラノスとジュピターに寄って呟く。

「サンゴッド様もあんな感じだよな」

「親子ってあんな感じなんじゃね?」

「あぁ、遺伝ってやつ?」

「でもどういう心境の変化だろうな。俺らに付き合うとか」

「俺はアレぐらいが丁度いいと思う」

 ウラノスが呟く。

「そうだよな、今まで全然表情崩さなかったもんなぁ」

「今の方がいいな、サターンにとっても」

「あぁ」

 表情を緩めているアースと、そのアースが手にしているグラスに酒を注いでいるサターンの姿を眺めながら頷く三人。

「うむ、なかなかいい飲みっぷりじゃ」

「!!!!?」

 突然の声に三人は硬直する。

 サンゴッドだった。

「サンゴッドさまぁ!?」

 アースが気づいて立ち上がったと思った瞬間、姿が消える。瞬間移動だ。

「サターン、アースを戻せ」

「は、はい!!!」

 サターンは命じられるがままにリングを翳す。

「うぐお!?」

 リングから排出されて床に倒れこむアース。

「これアース。吾の顔を見て逃げるでない」

「も、申し訳ございません……」

「別に怒りもせぬ。混ぜてもらおうと思っただけだ!

 お前と飲んでみたい」

「さ、サンゴッドさまぁ…!!」

 アースの表情が明るくなる。

「おやおや、アース隊長が取られてしまいましたよ」

「あー…」

 サターンは髪を掻きながらアースを眺める。

「まぁ、いいよ。別に。隊長にとってサンゴッドさまは特別だから。妬いたりしねぇ」

「そうですか…。実はわたしも…ウェーブがナパームさんを特別に思っていることに対して

 妬いたりしないんですよね、眺めてるだけでわたしも幸せな気分になります」

「不思議だな」

「そうですね」







END