アースさんの身体は唯一特別ってこと。唯一。



 司令室として使っている部屋にアースとサターンはいた。

 アースは椅子に腰をかけ、サターンがその横で喋っている。

「ずっと地中の中に埋まっているよりは

 今のほうが良かったんじゃないですかね。

 俺はそう思いますけど隊長」

「お前の意見など聞いてはいない」

「それじゃあサンゴッド様は今の状態に満足してるみたいなんでOKってことで!」

 サターンは笑いながらアースに言うがギロリと睨まれてしまう。

 あぁサンゴッドがあぁなってしまったのが嫌なのだろう。

 アースはサンゴッドを敬愛している、それは既に崇拝と言ってもいい。

 しかしサンゴッドは地球人に興味を抱いてしまった。

 そこからアースが呆けたようになってしまったのは仕方がないと思う。

 彼自身の取り柄は自分自身の力でありサンゴッドの力でもあった。

 それが今は双方極端に力を失っている。

 全部失ってしまったといっていい、ほんの僅かに残ったものは隊長という立場だけだ。

「お前は何故私の横にいるんだ」

「俺は弱いっすから。強い人の横にいたいんですよ」

「不快だ」

「そりゃ申し訳ないですね。あ、何か飲みます?」

「……」

 黙りこむアース。

 サターンはやれやれとため息を吐きながら自分のために飲み物を取りに行き、空いている椅子に座って飲み始める。

 味、今まで味というものを感じたことがなかったが、体を修復した際に色々と余計なモノがついてしまった。

 味覚、今まで飲んでいたモノの味がわかるようになった。

 しかし味の分別が出来ないので今飲んでいるこれはおいしいのかどうかわからない。

 苦味があるとマズいと感じるそうなので、これは感じない。きっと「飲めなくはないモノ」なのだろう。

「アース隊長、これどんな味します?オイシイですか?」

「は?」

「味がわかるようになったのはいいんですけどね、ウマいマズいの判断ができないんですよ。

 隊長ならわかるかなって」

「…」

 アースが意外そうな顔をする。

 はて、可笑しなことを言っただろうか。

「お前は味覚がなかったのか?」

「は?みんなないでしょう?」

「……そうか、私だけ生体パーツが多かったせいか」

「あれ、アース隊長まさか味覚持ってたんですか?」

「あぁ、それは別にまずくはない。おいしいとも思わないが。」

「おいしいもの食べたことあります?」

「あるわけないだろう、雑菌だらけのモノを何故口にしなければならない」

「そりゃそうか…」

 アースの潔癖症を思い出して納得するサターン。

「ふーん、皆そうだったのか…」

「知らないなんて意外っすね」

「戦闘に必要のない情報だ」

「まぁ…そうっすね」

「サンゴッドさまはどうだったんだろう」

 ぽつりと呟く。

 あぁ、そういうセリフを言われると胸が痛くなる。

 恋焦がれるような目つきで名を呼ばないで欲しい。

「一緒なんじゃ?アース隊長に味覚があるってことは、あるでしょう。

 俺らと違ってアンタらは作り方が特別だったんだし」

「あぁ、うん…ふふ、そうだな」

 目を細めて笑う。

 少し辛い。

 そうやって振り向かない相手に縋っているような姿を見たくない。

 いや、それは自分にも当てはまることで―――

 強いから側にいるんじゃない、好きだから側にいるのだ。

「なんだサターン?」

「え?あ、いや何でも…」

 アースから視線を外す。

「地上に行きませんか?たまには」

「却下だ。雑菌だらけだ。不愉快だ」

「そうっすか…」





END