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 裏路地のような場所にある、とある酒場。

 そこでナパームはよく飲んでいた。

「久しぶりに姿を見るな、ナパーム」

「!」

 声をかけられ横を見れば、エアーであった。

 エアーはナパームの横へ座る。

「エアーさん、お久しぶりです」

 ガタッと立ち上がりかかとを揃えて直立しながら言うナパーム。

「いい、立たなくていい。座れ」

「はっ!」

「俺もお前も、階級のない傭兵なのだから力を抜け」

「はっ…心得てはいるのですが…身についてしまっているといいますか…」

 しゅんとしながら答える。

「ふふ、お前らしい。」

 エアーは目を細めて笑う。


 流石に酒を飲むには首に巻いたマフラーは邪魔なようで少し緩ませて口元を出している。

 エアーの顔を見るのは久しい。

 恐らくエアーもそう思っているだろう、ナパームも常にマスクを着用しているからだ。

 しかし酒を飲むためには外さなくてはいけない。

 そして、ここしばらく酒場に顔を出していなかったので別の意味でも『久しぶり』なのである。

「今日はウェーブが任務でいないからここにいるのか」

「えっ…あ、はい…」

 ナパームは顔を赤くして頷く。

「あの…なんで知っているのです?」

「噂話というものはどこかしら耳に入ってくるものだからな。

 上手くやっているようで何よりだ」

「恐縮です…」

「私もお前たちのように上手くやっていきたいものだ」

「…エアーさんには相手がいらっしゃったのですか?」

 思わず問うてしまう。

 意外だったのだ。

 エアーがこういう話を漏らすことが。

 いつも達観したような物腰物言いで、自分のことはあまり喋らないそんな男が。

「あぁ、向こうはそう思っていないだろうが大切にしたいヤツがいる」

「想いを告げたりしたのですか?」

 エアーは静かに首を振る。

「理解が…出来ないだろうな。我々のことをまず理解させるところからだ…。

 理解できるまで私は待つつもりなのだ」

「はぁ…」

 要領を得ず、ナパームは気の抜けた相槌を打つ。

「……すまないな。酒のせいかお前によくわからないことを話してしまった。

 羨ましいんだよ。お前たちが」

 目を細めて笑うエアーの表情はとても穏やかで嫌味ではなく純粋にそう思ってるようであった。

「ここにいたのかエアー。」

 後ろから声が掛かったと思えば、手が伸びてきてエアーの酒が奪われる。

 メタルであった。

「…ふん?これは美味いのか?」

 メタルは酒を飲み干して首をかしげる。

「あぁ、美味い」

「ほう、美味いのか。」

 ニヤリと笑ってメタルはナパームを見る。

 思わずビクっと震えるナパーム。

「お、お久しぶりですメタルさん…」

「久しいなフィフスナンバーのナパーム。2ヶ月と14日と三時間―――」

「メタル、細かな時間は言わなくてもいいだろう。何か用か?」

「何も用はないが。暇というモノを処理したくて来た」

「そうか、座れ」

「あぁ」

 メタルはエアーの横に座る。

 正直ナパームはメタルが苦手であった。

 会話すればまともなのだが行動はどちらかというと奇行に走る。

 残虐性も高い…これは人のことは言えないのだが。

 そして一番ナパームが感じているのは『異質』さ。

 メタルに対して『異質だ』と感じてしまうのである。

「酒とつまみでも食べていろ」

「作業的だな」

 メタルはそう呟いてエアーの言うとおりに与えられたツマミをちまちま食べ始めた。

 彼には味覚がないらしく、何を食べても味がしないらしい。

 先ほどの酒もよく味が解らなかったようだ。

「さっきの話だがなナパーム」

「はい」

「それがコレだ」

 メタルを指差すエアー。

「…えぇっ!?」

「意外か?」

「は、いえ…あの、えぇっと…」

「私とお前は似ていると思う。」

「そ、そうですか?じゃあ俺らみたいに仲良くなれるんじゃないでしょうか!」

「だといいが、こいつは特殊だからな」

「でしょうね」

「ハッキリという…」

「す、すみません」

 あわあわしながら誤魔化すようにナパームはお酒をちびちび飲む。

「何の話をしているのかわからないが。

 わたしの何の話をしている?」

「お前と私の話だ」

「ほう…惚気話にもならんぞ」

「あぁ。身に染みている」

「間に受けるな」

 メタルはうんざりした表情を浮べた。

「エアー、何か不満があるのならハッキリ言えばいい。」

「これは不満じゃない。諦めだ」

「理解しがたい…」

(仲良いんじゃないかなぁ…)

 二人のやり取りを横目で見ながら、ナパームは心の中で呟いた。



END

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