周りは瓦礫が散乱し、巨大な黒い球体がごろりと横たわっている。

 この球体はワイリーに発掘されたサンゴッドが眠っていたコアの一つだ。

 今はその機能を失っている。

 そこでワイリーとアースたちは人型の機械を修復していた。

 コアを管理していたダークムーンを。

 普段のダークムーンの姿は、アースが生み出したこともあってか外見は黒髪のアースといった所で、

 その顔には大きな目の模様が描かれた黒い仮面をつけている。

「うーむ、これで動くかもしれん」

 ワイリーは顔を上げながらアースに言う。

「ご苦労。」

 アースはダークムーンに手を添え生体エネルギーを流し込む。

 目を開くダークムーン。 

『これはこれはアース隊長!お久しゅうございますね。

 はてワタクシは一体どれぐらい眠っていたのでしょう?』

 身を起こしながら首をかしげる。

「良かった、上手く動く」

「やれやれじゃ。地球と構造が違うからヒヤヒヤしたわい。

 これでどうするんじゃ?」

「…ダークムーンよ」

『はい?どういたしました改まって』

 キョトンとした顔で呟く。

「……やりづらいな、仮面をつけろ」

『はぁ…』

 ダークムーンは懐から仮面を取り出しそれで顔を隠す。

「ん。ダークムーンよ、サンゴッドさまの『調整』はできるか?」

『………』

 ダークムーンは球体(コア)へ顔を向ける。

『今の状態では無理でございます』

「直せるか?」

『…地球の科学がもう少し発展すれば』

「換えがないのか」

『はい。サンゴッドさまほどの情報量を納められるメモリーが地球上に存在いたしません。』

「…そうか」

 項垂れるアース。

『ところでアース隊長、ワタクシ状況が上手く飲み込めていないのですが…

 この地球人を利用するのはお止めに?』

 ダークムーンはワイリーを指差し言う。

 ワイリーをダークムーンがそそのかし、キングをアースがそそのかしてサンゴッドを速やかに復活させる…

 そういう作戦だったはずだ。

 しかしダークムーンは途中で破壊され事の末路を知らない。

「もう、我々はこの星から出ることが叶わなくなったのだ…」

『?』



   ****



 アースたちは異星人の『生物兵器』であるのだが、アースたち自身のことである『生体コア』と

 宇宙船と併用している巨大兵器『機械パーツ』の二つで成り立っている。

 機械パーツに生体エネルギーを流すことによって起動し力を行使することができるのだが、

 それとは別に機械パーツの中にいる限り機械側が内臓の代わりをする―――つまり生命維持装置の役割も持っている。

 彼らはそのお陰で何千年もの間生きていられたのである。

 機械パーツは生体データを全て保存し、記憶もそれにバックアップとして残す。

 不運にもジュピターとプルートの記憶装置は深刻な破損があり、ジュピターは記憶障害、プルートは言語障害が発生しているが…。

 現在も『調整』するときにバックアップを取り続けている。

 しかしサンゴッドの機械パーツはDWNとの戦闘で完全に破壊されてしまい、バックアップのない状態になってしまっているのである。

「別に吾はいいのじゃが…。このまま寿命で死んでも」

「いけませんサンゴッドさま!貴方は我々の指導者なのですから先に死なれては困ります!」

「地球人の寿命は…私の技術を入れて延ばせばせいぜい200年ってところかな。

 私が生きてるかどうか知らないけど?皆で殉死したら?」

 キングはフフっと笑いながら言う。

「はっはっは。200年か。一瞬じゃな。まぁ良い…地球人として生きようじゃないか」

 サンゴッドは目を細めて言う。

「もう戦う力がないのだから」



   ****



『一つだけ、方法はありますが…ワタクシはただの機械でございます。

 私がメモリーの代用になるのです。最善かと思いますがいかがでしょう?』

「できるのかダークムーン」

『できるはずです。ワタクシの意志は消えてしまいますがそれは問題ではございません』










「大いに問題がある」

 アースの説明を受けたサンゴッドは不満そうに言った。

「なぜですサンゴッドさま」

『そうです、ワタクシはアース隊長に貴方様の管理のために生み出された存在。

 当然のことだと思いませんか?』

「……」

 サンゴッドはダークムーンに歩み寄ると仮面を剥ぎ取る。

「アースよ、お前は機械に心を移したな。」

『え?』

「鏡合わせのようだよ、外見のことじゃなく中身のことだ。性格と口調を弄ってあってもこれはお前だ」

「……」

 アースは珍しく眉を顰め表情を歪ませる。

「機械でも、信用できなかったのです!私は!貴方の管理を機械に任せるのが信用ならなかったから…

 私の、心を…移しました」

『…ワタクシにはアース隊長の心があるのですか?』

「コピーとはいえ、心を持ってしまっている機械は犠牲に出来ぬよ」

『それはワタクシが困りますサンゴッドさま、ワタクシは貴方様のお役に立ちたいのです!』

「よいよい、お前は吾の身の回りの世話をすればいい」

 ダークムーンの頭を撫でるサンゴッド。

「良いな、アース。お前たちの気持ちは嬉しいが吾の我侭も聞いてくれ」








END