深夜。

 休憩室はちょっとした飲み会になっていた。

 ジャイロとストーンが持ち込んだ久しぶりのマトモな酒に宴会が発生したのである。

 任務に出ているチャージと、部屋に引きこもっているグラビティーとウェーブがこの場にいない。

「ねぇナパーム」

 クリスタルはスススと、ナパームに擦り寄る。

「貴方、女性の経験はあるんでしょう?」

「あぁ、まぁ…軍人の頃に…仲間と一緒に…」

 女を買いに行くのである。

 よくあることではあるが、ナパームは付き合いでついていく程度であった。

 ストーンより小さいとはいえ一般から見れば大柄な部類に入ってしまう自分である。

 恐がられたのがいけない。

 恐がられては萎える。もう銃を女のように可愛がっている方がまだマシである。

「それがなにか?」

「…私の誘いは断りましたよね?

 この私の!!」

「酔ってるなクリスタル…」

「ウェーブも抱けるんですから私だっていいでしょう?」

「それとこれとは…」

「ナパーム…」

「うわぁ!」

 クリスタルに押し倒されキスをされる。

 それだけではない、何か飲まされた。

 ナパームは慌ててクリスタルを引き剥がす。

「っ…なに、飲ませた!?」

「秘密ですよ。さぁ私を抱きなさい。ウェーブより私の方が柔らかいですよ色々と」

「何やってるんだ。貴様の痴態なんぞ酒の肴になりゃしないぞ」

 ジャイロが不機嫌な表情を浮べてクリスタルの頭を小突く。

「肴になりますよ!!?失礼しちゃいますね!!!」

「うっせ詐欺師」

 クリスタルの頭から酒をぶちまけるジャイロ。

「ぎゃああああ!!!何するんですか!!!」

「あはははっ!喧嘩かい?どっちが勝つか賭けようじゃないか!」

 スターが悪乗りしてくる。

「なめんなー!」

「こいやー!」

 殴り合いを始めてしまう。

「……すまない、部屋に戻る」

「おう、そうしとけ」

 ストーンに見送られながらナパームは自室へ戻った。

 一体何を飲まされたのか。

 非合法なクスリであることは間違いない。

 目の前がぐらついていくる。

「むぅ…これは、まずいか…も……」

 ずるずるとナパームは崩れ倒れた。



     *****



 ウェーブは自室の浴槽の中にいた。

 水を張って頭まで潜ってじっとするだけというちょっと変わった入浴。

 気が済むまでやるので数時間いることもある。

 ナパームが笑いながら「水槽買おうか?」なんていっていたが、本当、その中にいたほうがいいかもしれない。

 世界から隔離されていながらナパームの姿を眺めることが出来て、いいかもしれない。

「……」

 ぼんやりしていると、足音に気づく。

(ナパーム?)

 迷いなくこちらに向かってきてドアを開き、そうして腕を掴み上げてくる。

「え?え?」

 自分を浴槽から引揚げたのはナパームだった。

 しかし様子がおかしい。ナパームはこんなことしない。

「ナパ―――」

 口を塞がれる。

 キスだ。

「う、うっ…うぅ…」

 もがくウェーブだが、ナパームに押さえ込まれる。

 舌が熱い。

 いつものキスとは違って、熱くて乱暴で―――

 ナパームの目が怖い。

 いつもと違う。

 いつも遠慮がちに微笑んでるのに、無表情だ。

「いやだっ…」

 ウェーブは思いっきりナパームを突き放そうとする。

「ウェーブ…」

「や、あ!?」

 壁に押さえ込まれそのままナパームが屈んでウェーブのナニを口に咥えた。

「あっあ、あぁっ…!!!」

 与えられる刺激にウェーブは思わず艶のある声を上げてしまう。

 慣れた行為に身体は従順だった。

「やだ…ナパームやだ…」

 泣きながらウェーブはナパームの頭を掴んで呻く。

 しかしナパームは反応もせず、射精してしまったウェーブの熱を飲み込んでいく。

「ん…もっと欲しい…」

「もっと!?うわっあぁぁぁ!!?」

 ナパームの指が秘所にもぐりこんでくる。

 耐え切れずウェーブは声をあげ、しかし浴室の反響に驚いて口を手で覆う。

「うっうぅぅ…」

 ガクガク震えながらウェーブはずるずると崩れ床に座り込む。

「ん…ぁ…」

「ふっ…う…うぅ…」

 無表情からうっとりした表情に変わり、ウェーブのナニを舐めるナパーム。

 いつも思う、舐め方がえろいと。

 いつもマスクで隠されている口元。

 形のよい唇。

 それが自分のモノを咥えているその光景から視線を外せず、ウェーブは顔を真っ赤にしながら震えていた。



    ****



 もはや意識が朦朧としている。

 フェラに満足したナパームに貫かれてからどれぐらいの時間がたったのかさえ把握できない。

 後ろから抱かれるようにナパームに犯されている。

「ウェーブ…見て」

「ぁ…?」

 ナパームがおもむろにウェーブの両脚を広げさせる。

「鏡、ほら。繋がってるねぇ」

「!!!!!???」

 鏡に思わず目を向けてしまった。

 目つきの怪しいナパームと、酷い顔で涙を流し続けている自分の姿。

 その姿の下半身へ視線を向けてしまったのはナパームが繋がっている部分を指で触れたせいだ。

「ひぃっ…」

「ふふ、すごい締め付けて…ウェーブかわいい…」

 すりすりとナパームはウェーブの頭に頬擦りをする。

「や、ナパーム、ひどい…こんな…」

「んー?可愛いぞ?ウェーブ大好き…もっとウェーブに感じてもらいたい」

「………」

 ナパームの目つきがさっきよりも恐く感じた。

 だんだんと理性のタガが外れてきている。

「やだ、いやだ恐いナパームいやだっ…!!」

「痛くしない。可愛いんだウェーブ、たまらなく可愛いから…もっとお前を見ていたいんだ」

 あぁだめだ、その言葉を聞くと抵抗できなくなる。

 ナパームはずるい。

 絶対に逃がしてくれない。



   ****



 ナパームはハッと我に返った。

 まずここはどこだ、と思った。

 よくわからないまま目の前の光景に絶句した。

 拘束されたウェーブがいる。

 目隠しされ、後ろ手に拘束された状態でバイブを突っ込まれている。

 意識があるのかどうかわからないが、唾液を垂れ流している口から微かに声を漏らしていた。

「…ウェェェェェェブ!!!!?」

 ナパームは慌ててウェーブの目隠しを外す。

 虚ろというか、熱と快楽に当てられた焦点の合わぬ目をしていた。

「ウェーブしっかりしろ!!!」

「あ…?なぱー、む…?次、なに…したいんだ…?」

「!!!!?」

 完全に硬直する。

「…まさか、これは、俺か…俺なのか…」

 記憶が甦ってくる。

 そうだ、クリスタルによくわからないクスリを飲まされ…正気を失った状態でウェーブの元へきてしまったのか…

「お、おおおお俺が不甲斐ないばかりに!!!!今楽にしてやるから!!!」

 拘束を外し、挿入されていたバイブもゆっくり引き抜く。

「ッ…ナパーム?」

「ウェーブ…すまない、無理をさせてしまって」

 しっかりと抱きしめる。

「…正気に戻ったのか?」

「あぁ…」

「やっぱりお前ドSじゃん…」

 ナパームから顔を背けるウェーブ。

(嫌われた!!!?)

 ショックを受けるナパーム。

「す、すまない!!お前にもしや酷いことを!!?怪我したのか!?痛いところは!!!?」

「………」

 ウェーブはジト目で見上げてくる。

(お、怒っている!!?)

「うぅ…本当にすまない、この通りだ!」

 華麗にベッドから床に移動して土下座する。

「……あぁいうこと、今までずっとしたかったの?」

「え?あ、いや、何をしていたのか、覚えてはいないのだが…」

 ナパームは辺りを見回す。

「………」

 色んなオモチャが転がってて変な汗が出てくる。

「…あ、の…」

 ウェーブを直視できない。

「シたかった…です…脳内、とかで考えてるだけでした…」

「ドSめ」

「う、うぅぅ…」

「オレ、マゾじゃないんだぞ」

「申し訳なくッ…!!!」

 床に額を擦り付けたままもう頭が上げれないナパーム。

「…痛くしないんだったらしてもいいけど」

「え…?」

「…だ、だから…気持ちよくしてくれるんだったら、何してこようがオレは構わないよ…」

「う、ウェーブ…」

「でも、何があったのか知らないが理性ふっとばしてヤりにくるのは恐かったから怒る」

「はい…以後気をつけます…クリスタルにクスリ飲まされた日は自分の脚を撃ち抜いておきます…」

「…ナパーム、許して欲しい?」

「できることなら…」

「じゃあオレと一緒にお風呂に入れ」

「え…」

「い、いいから!オレのいうこときけよーっ!!!」

「はいはい!」

 ナパームは慌ててウェーブを抱き上げて風呂場へ向かった。






「これで許してくれるのか?焼き土下座とかしなくていいのか?」

 一緒に湯船に入ったナパームが問いかけてくる。

 ナパームが大きいのでウェーブがその上に乗っかっている形になっているが。

「なんで好きな人にそこまでさせなくちゃいけないんだ」

「俺はウェーブを傷つけたから…」

「…別にいいよ。そんなに怒ってない」

「え、そうなの?」

 ウェーブは詰め寄ってナパームの首に腕を回す。

「オレの入浴を邪魔したの腹が立ったかな。それ以外は別に恐かっただけだ。

 ナパームのこと嫌いになるわけないだろ…」

 キスをする。

「……」

 頬を赤くするナパーム。

「なんでオレ、お前のこと好きになっちゃったんだろ…。お前色々とズルいんだよ」

「そ、そうかなぁ…?普通なんだけど」

「…オレの前からいなくなるなよ」

 ウェーブはナパームに寄り添う。

「死なないよ。お前がいるからな」

「ん…」

 ナパームはウェーブの頭を撫でた。







END