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通じ合うの続き
「ウェーブ、これ預かっててくれ」
「え」
ナパームはウェーブの手を掴んでぎゅっと何かを握らせる。
それはナパームの部屋のカードキーだった。
「俺は今から任務にいってくるんだが長期任務になりそうなんだ。
その間、俺の部屋の掃除とか任せていいだろ?お前掃除とか上手だし」
ほんわりとした笑顔を浮べてくるのでウェーブは顔を背ける。
笑顔が直視できないぐらい可愛い。
「あ、あぁ…別にそれぐらいなら…」
「良かった。あ、武器庫は一応ロックしてあるけど危ないから触るなよ。
飾ってるコレクションの方には弾は入ってないから暴発はしないけどあまり触らない方がいいな…」
「解った」
「…ウェーブ」
「ひゃいっ!?」
抱きしめられて変な声が出るウェーブ。
「ふふ。充電しとかないとな~しばらく会えないもんな~」
「じゅ、じゅうでん!!!?」
「キスはいらない?」
耳元でナパームが囁く。
「あ、あぅ…えっと、オレ…」
ウェーブは顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるが声が出ていない。
ナパームはクスクス笑いながらマスクをずらしてキスをした。
今回は触れるだけの軽いキスだ。
「帰ったら続きしような」
「あ、あぁ…」
「なぁーにイチャついてるんだい」
スターがやって来る。
「む、恥ずかしいところを見られてしまった…」
「別に構わないけどね。そういうの後にしときなよ。ジャイロが待ってるんだから」
「あぁ、もう時間か。じゃあなウェーブ」
「お、おう…」
ナパームはウェーブから離れ部屋を出…ようとして立ち止まり、振り返る。
「I'll be back!!」
「なんでもいいからさっさといきなよ!!!それいちいち言わないと気がすまないのかい君は!」
「ははははっ」
行ってしまうナパーム。
スターはため息を吐き、そしてウェーブに顔を向けた。
「君も『気をつけて』とか『いってらっしゃい』とか何とか声かけてあげなよ」
「あ、あぁぁぁぁそうだったあああああ」
頭を抱えて叫ぶウェーブ。
「つい、なんて声かけていいかわからなくなって…」
ぐすぐすしはじめる。
「まぁー君たちそういう仲が丁度いいんだろうけどさー
見ててもどかしい」
「ウッウッ…」
****
ウェーブはナパームの部屋に来ていた。
一人だとなんだか落ち着かない。
いつも横にいるナパームがいない、それだけで凄く寂しいのだ。
漂う火薬の匂いも薄れているような気がする。
ウェーブはコテンっとソファに横になった。
独りは慣れている、むしろ独りが心地よかったはずなのに…
いつのまにかナパームがいないと落ち着かなくなってしまうだなんて。
今の自分が考えられない。
そういえば…ナパームは出会った頃から優しかったように思える。
皆に優しかった。
銃の扱い方、爆薬の取り扱い方、丁寧に教えてくれた。
しかし戦場のナパームは少し恐い。
彼は『オーバーキル』を好む。だから軍隊から追い出されてここに流れ着いた。
ここは同じような人間がいるので彼もすぐ馴染んだのだろう、そして心にゆとりができて皆に優しくなれたのだろう。
優しい彼も、少し怖い彼も、全部ひっくるめて自分は―――
ナパームが帰ってきたら、どう出迎えればいいだろう。
笑顔、そうだ笑顔で「お帰り」と言えばいいだけだ。
(笑顔…)
何故か歪む笑顔…だめだ、笑顔を浮べられない。
(なんでオレ…いろいろとダメなんだ…)
ウェーブはぐすぐすと泣いてしまった。
****
定期的な掃除も習慣になり、ウェーブはふと思い立ってナパームのクローゼットの前に立った。
武器庫は触るなといわれたが他は何も言われていない。
他人のモノを覗くのは趣味ではないが、少し興味はある。
クローゼットを開くと数着コートが入っていた。
「あ、これだけでも結構重い…」
ごついコートを引っ張り出すウェーブ。
「デカい……」
羽織ってみる。
デカイ、すごくでかい。
しかしなんだかナパームに抱きしめられているような気分になって、嬉しくなった。
「ナパーム…」
思わず自分を抱きしめるような形でぎゅっと裾を握り締める。
しかしなんだか恥ずかしくなってきて、ウェーブは慌てて元に戻した。
胸の鼓動も激しくなっている気がする。
「掃除、終わったし…帰ろう」
ウェーブは自分に言い聞かせるようにそう呟き、ナパームの部屋を後にした。
END
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