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2014年のもので、途中で終わってるのですがまぁ読めないこともないかと思って晒します
「君には私のために色々働いてもらおうと頼んだね」
「はい」
 キングが改まっていうのでマジックは少し首をかしげる。
「どうかなさいましたか?」
「私の全てを知る覚悟はあるかい?」
「覚悟など、ございませんが―――」
 マジックは手にしていたステッキをくるんと回し、
「私は手品師でございます。知ったところでいつもと変わりませんでしょう」
「消えてしまわないかい?」
「それは保証できませんね」
 フフフと笑うマジック。
「ですがキング、私は貴方についていくと決めました。
 死ねと命じられると困りますがある程度のことなら覚悟はできております…。
 ただ私を驚かせることは妬きますね。目立ちますからね」
「妬かせてしまうかもしれないな」
 キングは椅子から立ち上がりそのまま部屋のドアを開いた。
「地下へ来てくれないか」



   ****



 キングの屋敷の地下はとある施設と繋がっており、二人はそこに来ていた。
「この研究施設は普通じゃないってことは素人の君でも解るね?」
「えぇ、個人の趣味レベルではないですから」
「あぁ、もともと軍管轄の施設だった」
「キングは軍出身なんですか?」
「いいや、違うよ。軍から盗っちゃったんだ。ふふふ」
 オモチャを得たような言い方をするキング。
「恐ろしいお方ですね」
 本心を率直にいうマジック。
 軍から盗った、とはどういう意味なのか。
 そのままの意味なのだろうか、そのままの意味なのだろう。そんな気がする。
「軍にとって私の存在は弱みでもあるからね」
 とある部屋に入るキング。
 その部屋は大きな試験管が並んだ部屋だった。
「紹介しようマジック、息子のグランドだ」
 培養液の中を見るマジック。
 中には胎児がいる。
 これはなんだ、まるでテレビでよくやるSFではないか。
 しかし目の前に実物がある。
「生きているのですか?」
「あぁ、ここから急速に成長して成人になる。大体七日で出来上がるよ。
 軍がやっていた研究は人間の強化。メインはココを弄って強化すること。」
 キングは自分の頭を指差す。
 つまり『脳』のことだろう。
「この培養器を使わないままなのは勿体無いからね、今も使わせてもらってる。
 研究も、私が引き継いで研究しているよ。片手間にね」
「キングはここの研究者だったのですか?」
「んー…なんていうのかな…私もここから生まれたんだけどね」
 コツン、とガラスを叩く。
「私が天才すぎたんだ、研究者は私よりも劣ると判断して処分しちゃったよ。
 なかなか大人気なかったと思うがね。
 でもまぁそのお陰で私はモルモットではなくなった。
 代わりにここで研究を続けてあげてるんだよ。おかげでこの国の医学レベルは上がったんじゃないかな?」
 キングはバイザーを外す。
「これ以上踏み込むと君は戻って来れなくなるが…」
「……」
 最後の忠告。
 マジックはぎゅっと唇を噛んでキングを見る。
 ここでやっていたことは人道的なことではないのだろう、そしてキングは生まれはどうあれ被験者なのだろう。
 マジック自身、キングのことは恐ろしく思う。
 しかし彼は自分に手を伸ばそうとしているのだ、それはそれは遠慮がちに。
 こうして打ち明けることも彼にとっては思い切った決断だったろう。
 彼なら巧みな嘘を並べて自分を見せないようにすることも可能だ。
 キングはマジックを信頼している。
 そしてマジック自身は期待を裏切るような性格ではなかった。
「大丈夫ですよキング。で、今は何をしているのですか?
 私は貴方が超能力の研究をしている、としか知りません。」
「あぁ、特別な力をどうして持っているのか。原因をずっと調べている。
 しかし異能者の数が少なくて答えはまだでない。
 それと平行して今は宇宙人の修理をしようとしていてね」
「…宇宙人??」
「まぁ見てもらえればわかる。ここから先は特別だ」




    ****



「彼らの存在が我々地球人の生態系に影響を及ぼしていると考えられるんだ」
 キングは呟く。
 目の前には培養液に浸された男がいた。
 長い髪が揺れている。
「人間のように見えますが」
「偶然にも同じ型だったのかもしれないし、変異したのかもしれないし…その辺は目が覚めてから聞かないとね。
 マジック、私についてきてくれるか?」
「キング…」
「君は素晴らしいパートナーだと思う、君なら私がおかしくなっても止めてくれる。きっとだ」
「キング?」
「『彼』を見ているととても不安な気持ちになってくるんだ。自分を見失いそうになる」
「…解りました、あなたの思うがままに」
「ありがとう、マジック」

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