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 冬の空気は冷たくて好きだ。
 夜空は街の灯りで星なんてみえないけれど、代わりにイルミネーションが綺麗に飾られている。
「他に買い足しはなかった?」
 ツンドラは横を歩くトーチに確認する。
「あぁ。他に欲しい物があればついでに買っておくか?」
「ん~~~~。」
 ツンドラはしばらく考える。
「…コンドーム買っとく?」
「はぁ!!?」
「生がお好きか。いやいつも生だけど他の子欲しがるかも」
「そーーいうのはどうでもいいだろう…なんでパーティの買い出しにでてゴム買わなくちゃいけないんだ…」
「ついでじゃないかついで」
 そんな会話をしながら買い物を済ませた二人は部屋に戻る。
 ブラストの部屋だ。一人暮らしなのに金持ちだから部屋が広い。著名人とホームパーティも行うことがあるらしいのでそういうことだろう。
 今回は『ギア被害者の会』というなんだか酷い会の集まりだが、ついでにクリスマスパーティもしちゃおうという話だった。
 クリスマスパーティがメインでいいのではないかとも思ったが誰も突っ込まなかった。
「ただいまー買ってきたよコンドーム」
「やっぱり買ってくると思ったぜー!」
 腹かかえて笑ってるブラスト。ウケたのはブラストだけであった。
「ゴムならボク持ってるよ。ねー?ヒューズ。このうすうすクンが好きだもんねー」
「うわあああ出すな、いいから!知ってるから!!!好きだから!!!」
 ごそごそと荷物を漁り出してこようとするラバーを押さえるヒューズ。
「そっか…ヒューズにはこだわりがあったんだね…」
「そんな目で見るな…」
「おい、どうでもいいから材料もってこい」
 不機嫌そうに顔を出したアシッドがツンドラとトーチにいう。
 彼が料理担当なのである。
「あぁ、手伝おう」
 この中で料理ができるトーチはツンドラの持っている荷物も譲り受けてキッチンへ行く。
「ワインでも飲んで待ってよ~」
 ツンドラはソファに座ってグラスを取ると空いているワイン瓶を手に取る。
「…あれ?パイル3兄弟、何がっちがちに固まってるんだい?」
「こいつら緊張してるだけだよ」
 ブロックがビールを飲みながらツンドラに答える。
「ぶ、ぶらすとさんの…部屋で…ぱーてぃーとか…ヤバいだろう」
「ヤバいよニイチャン…」
「マジヤバ…」
「そうなの?ブラストってそんなに有名人なの?」
「さぁ?」
 首をかしげるツンドラとブロック。
 当のブラストは対面キッチンなので椅子に座ってアシッドを眺めてニヤニヤしている。
 アシッドは完全に視線を無視しているが。
 料理自体は手間のかかるものは買ったものでありあわせているし時短できるものだけ作っていた。
 トーチとアシッドは大皿に盛り付け終わるとそれらをリビングに運ぶ。
「わーい!ケーキかわいいね~~~!」
「じゃあみんなカンパーイ!」
 各自好きなものを飲み、好きなものを食べ始める。
「はい、ヒューズあ~んしてー?」
「……」
 ヒューズは羞恥に顔を赤く染めてぷるぷる震えながらもラバーに応えて口を開く。
 そこにラバーはケーキを食べさせていく。
 なんだからぶらぶに見えるが、二人はそういう仲ではないということを周りは理解しているので特殊なプレイにしか見えない。
 超絶マイペースなラバーに振り回されているヒューズに同情すら覚えるが、ヒューズはヒューズで慣れてしまったので文句はない。
「アシッドさんの手料理毎日食べたいなぁ」
「盛りつけただけだ。毎日料理なんかしてる暇あったら研究してる方がマシだ」
「ですよねー」
「作ってあげればいいのに」
 ツンドラがアシッドにいう。
「お菓子は作ってくれるぜ」
「あれはガキ用だ」
「ガキ…あぁ、あの子か」
 バナ子ちゃんを思い出すツンドラ。かなりむちゃくちゃな娘だった気がする。そもそもが人間ではなく兵器という時点でおかしい。
「大変だねぇ。というか、僕たち大変だったよねぇ…よく生きてるよ…」
 しんみりするツンドラ。
「やめろ、メシが食えなくなる…」
 心に傷を負ってしまっているアシッドが言う。
「はいはい。ブラストに慰めてもらいなよ。僕はトーチを慰めるからさ!」
「性夜だな、アシッドさんがんばろ!」
「お前ら本当シモの話しかしないな?」

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