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誰かの手記
かの村について
若様の命によりかの村について調べた。
どこにもある山村であるが村に祭られている神は土着神なのか、村に流れ着いた者が信仰させたのかは不明。
麓の村に残っている文献もほぼなかったが、残っているものから推測する。
もともとは社があり、麓の村から通う者がいたようである。
しかし急に村が出来上がっていく。
災害の記録と照らし合わせて社が災害により崩壊したあと移民していると予測できる。
麓の村との交流が最低限しかなく、麓の村の者はかの村を避けている傾向にあるためもしかするとここで神が変質したかすり替わったかもしれない。
かの村の神のことを「日蝕の神」と記述している文献を見つけた。
日を蝕む神とは不思議だと思う。文献はかの村が出来てからの物のため、変質した神に対してそう感じたのかもしれない。
異国では太陽を神に例え、神が死ねば夜に、そして生まれ変わって昼になるところもあるが、それに近い気がした。
人間は辻褄を合わせようとすると似たような思考になるのか、と新たなる研究対象が増えてしまった。
虚無というもの。これだ。
咲に聞いたところ古代の神…この大地が固まったころの神は皆それを持っているという。
噛み砕いていえば『まだ固まっていないもの』ということらしい。
これは生命の源なのだろうか?
しかし咲は「今の時代にそれがいるならもうヒルコと同等だ」といっていた。
変質しやすいものなのだろう。純粋な生命エネルギーがその純粋さを保ったまま時を過ごすのは難しいらしい。
私の研究の鍵になるかと思ったが…。残念だ。
虚無に蝕まれた神、ということだろうか。
なぜ虚無は悪意を餌にしているのだろうか。そういう風に変質してしまったのか。
何もない世界で神の憎悪を食べるしかなかったのかもしれない。
結局何の神か解らずじまいであったが、強力な神であったことを若様から聞く。
サンプルを取ってきてくれればよかったのに…すべて異空間の中へ消えたらしい。
また肉体の研究に戻る。
折角だから退魔師のサンプルが欲しいところだが、咲が必死に止める。なぜだろう?
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