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猛黒くんちの日常。
六花は目覚めると身支度をし、早々に氷室から出る。
向かうは我らが主である猛黒の眠る部屋だ。
「若、入りますよ」
返事を待たずに襖を開く。
「勝手に入んなよ」
猛黒はちょうど起きていたらしく、目を擦りながら布団の上に座っていた。
「お返事を待っている間に逃げられると困りますし?」
「う…」
前に逃げ出したことを持ち出されて呻く猛黒。
以前、勉強をサボるために家出したことがあるのだ。
「用意が出来ましたら一緒に朝餉を」
「わかったわかった」
猛黒は咲が用意してくれた朝食を味わう。
咲や六花が来るまでは使用人が料理を作っていたのだが、六花が「若の食事は我々で用意したい」と言い出したのが始まりだ。
家来なりに尽くしたい精神なのだろう。
しかし料理が作れるものが限られていたのである。
色々あって今は咲が料理担当として落ち着いた。
「思ってたんだけど…お前、昔からこうやって世話焼きだったのか?」
「私ですか?」
六花は顔を上げて首をかしげる。
「以前は…うーん、ぼんやりとしか思い出せないのですが…別にここまでではなかったかと。
そもそも仕える主はいませんでしたから。」
「ふーん」
相槌を打ちながら猛黒はスープを啜り、六花は水を飲む。
六花はたまに温かいものが恋しいなぁ…なんて呟くことがある。
しかし食べれないのだ、温かいものに触れると凍らせてしまう。意識して凍らせるのを避けたとしても口に含むとそれは温度を失う。
彼はもう温かいと感じる食べ物は人間の魂だけになってしまっていた。
「ごちそうさま」
「それではお勉強いたしましょう」
「ううー…」
****
日が暮れてきた頃、静堂は棺桶の蓋を押し開けて身を起こす。
ささっと手早く身なりを整えると部屋を出て猛黒の部屋へ向かい、居なかったので広間へ向かった。
「おっす静堂」
「おはようございます猛黒さま」
ソファでくつろいでいる猛黒と家来たち。
「おや?六花さんは?」
「また『貧血』起こしたんで轟に運んでもらった」
「あぁ、彼も大変ですね…」
「どこからか人魂をとってきて摂取させたほうがいいんじゃ?」
轟は真面目な表情でつぶやく。
「いいよ、そんなことしなくて」
猛黒は不機嫌そうな顔をする。
「しかしだな若…」
「あいつに魂食わせたら…あいつじゃなくなるかもしれないだろ。いいのかよそれ」
「…それは、わからないだろ」
「お前と違って、あいつは人間なんだぞ。今ギリギリ人間の魂を保ってるんだ、それが崩れたら妖怪になる。絶対にな」
「…」
「ごはんの用意出来たよ野郎どもー」
咲が声をかけてくる。
「ちょっとは坊ちゃまも料理やろう?」
「絶対嫌だ」
「あ、いいと思います。色々習得するのが猛黒さまの務めですし」
「習い事ふやすんじゃねぇぇぇぇー!!!!」
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