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 司さんの作品になります。(掲載元はプライベッターなのでリンク省略)

 スターリングは
である。
 敬虔な神の使徒であり、良き祓魔師であり、謹厳実直に生きてきた。
 その人生の中で神を疑った試しは一度もなく、人生を終える日までそうであったはずだった。
 しかし生きながらにして地獄にやってきたスターリングは、神が居ないと知ってしまった。祈りも届かず己の中に見出せもせず、スターリングは苦しみもがき、神と己を見失った。
 スターリングは人である。
 神を見失った人である。





 金輪円迦はである。
 飢えと渇きに苛まれ、乾いた屍肉と血を啜り、鬼と成ったものである。
 執念によって地獄の淵へと這い上がり、地獄の向こうへと手を伸ばす。伸ばした手が何に触れるかなどは知らぬ。知らぬが、伸ばし掴まなければならなかった。何もなくなった手のひらに、何かを掴まなければ気がすまぬのだ。
 金輪円迦は鬼である。
 人ではいられなくなったものである。





 金輪円迦はである。
 幾多の試練を乗り越えて、遥か時の彼方にて、神と成ったものである。至るまでに積み上がった金輪円迦の生を俯瞰しながら、円環からこぼれた憐れな欠片たちの上で、己の役目が果たされる時を待つ。その時までは金輪円迦は"金輪円迦“の新たな神であり続ける。
 金輪円迦は神である。
 人ではなくなったものである。





 金輪円迦は人である。
 地獄を巡り、神を見失い、己の名すらも忘れたが、美しい輝きを目の当たりにして、再び地に戻った者である。
 一度見失った神を再び信仰できず、しかして祓魔の力は更に磨きがかかり、降魔調伏に抜かりはない。かつての輝く気質は名と共に失いはしても、新たに得た輝きと名と共に、金輪円迦は長き時を生きる。
 金輪円迦は人である。
 新たな輝き
《神》と共に生きる人である。
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