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紫鬼と飛頭蛮の絡みを書きたかった
「美しいですね、ナミさんは」
海難法師は飛頭蛮の長い髪を梳きながら話しかける。
「貴方を一目みたときから、私は貴方を手に入れたかったんですよ…。
初めての感覚でした。少し赤嶺の感覚が解ったような気がしました」
「……」
飛頭蛮は何も反応はしない。
もう何十回と似たような語りを聞かされた。
元より、海難法師に対しては良い印象はこれっぽっちもないので押し黙るばかりだ。
海難法師は優しい手つきで大切そうに胴体から飛頭蛮の首を離して厚みのある座布団の上へ置く。
「愛し合いましょうね、ナミさん」
法師は首に語りかけ、首のない胴体へ手をかける。
首が離れているときは胴体の感覚までは伝わってこない。
触れられているというのは解るのだがぼんやりとしたもので、それが現実味を薄れさせる。
自分の体がまぐわっている光景を眺めさせているというのも法師の性格がよく出ている。
飛頭蛮は法師の性格がよく解っていた。
彼の愛は本物であろう…受け入れがたい愛であるが。
****
弟はどこへいっただろう。
たまに消えるので海難法師に尋ねたことがあるが、どうも以津真天に誑かされているらしい。
一度その場を見せてもらったことがあるが怪鳥に寄り添っていた。
どうも弟は怪鳥が女に見えているらしい。普段でもそういう発言をちょいちょいしていたので納得はできたが、
弟にそれとなくあれは鳥だといっても気付いてくれない。
自分と法師のように交わってはいないようなのだが、もしそうなった場合少々可哀想だと思った。
飛頭蛮が廊下を歩いていると何やら声がする。
「コラーッ!!観念せい!」
「やーだー!」
化け蟹にだいしゅきホールドされどったんばったんと廊下を転がっている紫鬼がいた。
「…蟹さん、手伝おうか」
たまに見かける光景だ。
紫鬼は外から戻ると血と泥にまみれている。
そのままでいるので化け蟹が怒るのだ。そしてそれを飛頭蛮は手伝うようになった。
「良いところに通りかかった飛頭蛮!このまま風呂場へ引きずってくれ!」
「なんだと!?二人ががりとは卑怯だぞ!!」
『そうだそうだ!!!風呂はいやだーーー!!!』
赤嶺もわめいているが実体化はしないらしい。
外に出ていたので妖力が回復していないのだろう。
「別にお前が水に浸かるわけじゃないだろ」
化け蟹は赤嶺に言う。
本当にそう思う。
赤嶺が極度の水嫌いになったのは法師のせいらしい。
法師ロクなことやらないな…と飛頭蛮は呆れたものだ。
赤嶺と魂が混じりあってしまっている紫鬼も水が嫌いになっているのだが、彼は水にぬれても問題はない。
風呂場につくと化け蟹は紫鬼の衣類をはぎ取って全裸にしてしまうとそのまま湯船に投げ込んだ。
「お前と良い白鬼といいもっと住処を綺麗にしようという努力をしろ!」
「汚れているよりは、キレイなほうがいい」
飛頭蛮も頷きながら化け蟹と共に手ぬぐいで紫鬼の汚れを拭い取るように擦る。
「テルミは綺麗なんだから…」
「…き、きれいじゃないし」
紫鬼は頬を赤らめて視線を泳がせる。
「綺麗だよ」
「やめろよ、なんかお前に言われるとくすぐったい」
「ふふ、綺麗だよテルミ」
「やーめーろー」
小さく笑う飛頭蛮。
本当に紫鬼は綺麗なのだ。いつも狂気に歪んでいるが、整っているのだ。
美しいと感じているからこそ、化け蟹の手伝いをしている。
綺麗でいてほしいし、自分の手で美しくなるのは気持ちが良い。
(法師もこういう感覚なんだろう)
飛頭蛮はそう感じるので法師が自分の髪を梳くのを気が済むまでさせている。
だから紫鬼も自分の気が済むまで洗わせてもらってもいいはずなのだ。
「髪伸びた。切るね」
「そこまでせんでいい!!」
「大丈夫、弟の髪切ってあげてた」
「おーおー紫鬼、スッキリするぞ?なんなら坊主にしてしまうか?」
「それはこまる…!!」
「ちゃんと結ってあげる」
飛頭蛮は微笑みを絶やすことなく、小刀を手にして大人しくなる紫鬼の髪を抓んだ。
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