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さたかな
みこは巻の家に来ていた。
普段は巻たちがみこの家に行くことが多いのだが、こういうこともある。
しかしこの場合は女子二人っきり、お茶とお菓子を食べながらの女子会である。
「女子会って初めて!」
今まで何故か交友関係が希薄で友達とこういう経験がないみこは初めてのお茶会の時そういったものだ。
巻は不思議に思う。
なぜみこは希薄な人生を送っていたのか。猫かぶっていたと言えばそれまでなのだが。
ともかく自分はみこに懐かれているということなのだろう。
巻はそう結論づけて、ケーキを頬張るみこの前にあるカップにおかわりの紅茶を注ぐ。
「このケーキ美味しい」
「良かったです、手作りなんですよ」
「巻って器用だよね…将来パティシエになれるよ」
「いえ、私はお嫁さんになりますから」
「いや、奏くんは私のだし」
「みこさんには沙汰さんがいるじゃないですかー!そういう欲張りはダメです!!」
「えー」
「えー、ですみません。ところでみこさん、こないだ貸した本はどんな感じになってます?」
「こんな感じ」
みこは古書とメモを綴ったノートをカバンから出してくる。
それは魔道書と、魔道書に書かれていたものを巻にわかるよう翻訳したノートだ。
みこは外国の文字が読めるがその内容はさっぱりだ。
巻から説明を受けても首をかしげる内容である。
しかしながらその中で一つ興味のあるものがあった。
「この仲良しになる魔法って何?」
「文字通り仲良しになる魔法ですかね?」
巻は読みながらウーンと考える。
訳したのはみこであるが、その内容を読んで頭の中で組み立てるのは巻である。
「これ沙汰と奏くんにかけれない?面白そう」
「また玩具にする気でしょ…」
「別に危ない目にあうわけじゃないでしょ?二人が仲良しになれば私も嬉しい」
「うれしいのはみこさんだけですよ、あの二人舌噛んで死にますよ」
「巻は大げさだなー。ともかく沙汰は許してくれるし奏くんはわたしのいうこと聞いてくれるもん」
もはや暴君のような理論である。
「巻もわたしのお願い聞いてくれないと、もう手を貸さなくなっちゃうかもしれないわよ?
いいの?もしかしたら胸が大きくなる呪文があるかもしれないのに」
「クッ…わかりました」
二人の命よりおっぱいを選択する巻。
みこ的には、ほっといてもそれなりに育つのでは?という見立てなのだが本人が必至なので何も言うまい。
まぁ育たなくとも、奏はロリフェチなのかわからないが今の平坦な胸を気に入っているようではあるが。ちなみに脚フェチである。
「呪式を組み立てますからできたら連絡しますね」
「わーい!巻好き!!!」
*****
というわけで4人はファミレスに来ていた。
ドリンクバーで汲んできたジュースを飲みながら巻とみこは二人を眺める。
いつもの仏頂面ではあるが、居心地悪そうにしている奏と嫌そうな顔をしている沙汰。
「効果でてるのかしら?」
「さぁ?奏さんの霊力が強いんで見えにくいんですよね」
禄に『視えないモノを視る訓練』をさせてもらった巻は集中すると人の周りに漂うエネルギーのようなものを見ることができるようになっていた。
ただ奏や禄をそれで視ると光り輝いてるような感じになっており、視え辛い。
(あ、でも若干奏さんの光が弱くなってるような…?)
「…何されたんだろう」
「知るか。わからねーの?」
「僕、魔法よくわからなくて…」
「つかえねー…」
「仕方ないだろ、僕には向いてないんだから…」
「はぁ…」
遠い目になる二人。
目の前の女子たちは目を輝かせてニコニコしている。(いや、どちらかというとみこが楽しそうなのだが)
天使のような微笑みのみこは可愛くも美しい、その笑顔は自分だけに向けてほしかったと思う沙汰。
奏から見れば悪魔のような笑顔なのでどんどん沙汰に向けて欲しく思ってるのだけれども。
居たたまれなくなった沙汰は席を立つ。
「どこいくの?」
「トイレ」
みこに答えて一歩踏み出すと、グイっと引っ張られる感覚。
「?」
「…?」
振り返る沙汰。服を奏に掴まれていた。
そんな奏の顔は、なぜ自分はこのような行動をとっているのか、という焦りのような表情だった。
「あ、いや…」
離そうとするが、ぎゅうっと手に力が入る。
「…い、一緒に…行く……」
奏は死んだ目になってそう呟くのだった。
男子トイレにて。
「だんだんと効果が出てきてるような気がするんだが正法院ッ…!」
「…左手でお前を殴ったらこの呪い無くなるかもしれないぞ?」
「自分殴ってろよ…!」
「いや、モノは試した方がっ!」
完全に錯乱状態に陥っており、冷静さはそこにない。
なぜなら相手に対して「離れたくない」などという感情が沸き始めているためだ。
「はぁ!」
「あぶねぇ!!」
奏の渾身の突きを払い流す沙汰。
そしてそのままその腕を脇に挟みこんで動きを封じる。
「それで光来の呪い解いたことないだろーが!」
「多少の犠牲は出そう、土鎌くん」
「じゃあ俺はお前殺すわ…対象いなくなれば呪いも発動できないだろ?」
「発想がサイコパスだよね土鎌くん」
「殴りかかるお前に言われたくない」
それはすごく自然であった。
睨みあいながらも近い顔をより近づけて、キスをする。
割とデュープな方の。
普段から女子に弄られ調教されている奏は甘い声を喉の奥から漏らし始め、沙汰は崩れそうになる奏を抱き込み支える。
長い時間だったように思える、実際の時間はそうでもなかったのだが、触れ合う感触が長く感じた。
「あっ…」
名残惜しそうな表情で奏は離れていく沙汰の舌を視線を追う。
そして、沙汰の表情に気づいて自分の表情も同じように、こわばらせた。
「…」
「…」
手洗い場で二人は並んで口をすすぐ。
忘れたい。
熱とあの感触を忘れたい。
「お前はともかく、極力雰囲気に呑みこまれないように意識を持て…俺はお前に抑え込んでいた殺意を向けよう」
震える声で沙汰が言う。
だいぶ弱っているようだ。そうだろう、自然に求め合ってしまったのだショックは大きいだろう。
「巻の魔法だから、この魔法はずっと続くことはないと思う。タイムリミットまで持ちこたえれば僕たちの勝ちだ」
何と戦っているのかわからないが。
「長期戦になる可能性もあるのか…」
「あぁ、とにかく近づきすぎないように、距離を取ろう。接触すると求め合ってしまう気がする」
「俺もそんな気がする…」
****
少し時間は遡り…
「はー。最近の魔法ってすごいのねー」
みこは感心しながら巻のスマホを覗き込んでいた。
そこに映し出されているのは言い合っている沙汰と奏の姿。
「はい、帝威教授考案の技術だそうで教えてもらいました」
水晶で映像を映すとか時代遅れだよねーとか言いながら編み出した術である。
もちろん防犯対策のためか『術をかけた対象を監視する』のみの機能しかない。
それだけで十分犯罪くさいのだが。
「この右端にあるHPバーみたいなのなに?」
「らぶらぶバーです」
「空っぽね。まだらぶらぶじゃないのね?あっ」
沙汰と奏がキスをした。
ドキドキしながら様子を見守るみこと巻。
(いいなー奏くんいいなー、沙汰にキスされていいなー)
(奏さんすっごくいやらしい顔してる…このままじゃ誰とでも寝てしまうえっちな人になるのでは…!?)
心の中で好きなこと言いたい放題である。
そんなこんなで地味にらぶらぶバーがピロロと上がっていく。
「あら増えていくわね」
「らぶらぶチャージされてます。これが貯まると仲良しになります」
「へー、わかりやすいわねー」
「帝威教授すごいですよね…魔法は可視化するべきとかいってましたし。…口をすすいでいる」
「…そんな嫌がらんでも………」
まるで私たちが悪いことしてるみたいじゃない…なんて呟きが聞こえたが巻は流した。
そして戻ってくる二人だが、沙汰が用事があるとか行ってさっさと出て行った。
逃亡である。
「…巻、僕たちに何をしたんだ」
奏が席につきながら死にそうな顔で問いかけてくる。
「わたしというか、みこさんなんですけども…」
「沙汰と奏くんに仲良くなってほしいなって思って」
「強制はいけないだろう。」
「強制じゃないもん、二人の内に隠してる思いを出す手伝いをしてるだけだもん」
「…」
手で顔を覆う奏。たぶん泣いてる。
さすがに可哀想だなと思う巻。
「まぁまぁ奏さん、5日間で魔法の効果は切れますから…」
「…!」
明確な効果期間を知って奏は笑顔を浮かべる。
なんだかだいぶ邪悪な笑顔に見えてしまったのだが、今の奏さんの精神状態がそっちに傾いているのだろうと巻は思うことにする。
こんな状態で聖人でいろというのは酷である。奏も人間なのだ。
「とりあえず、禄にはこのこと伝えておかないといけないな、巻。魔法で遊んでることになるよこれは」
「にゃーーーー!!!????」
*****
―――5日間。
それは長い、と沙汰は思う。
現在3日目。
学校が違うし住んでる場所も離れているので出会うことはないのだが、精神的に辛くなってきた。
無意識が求めるのである。
無意識が相手を求め、そして寝れば相手の夢を見る…恐ろしい呪いだ…。
何故みこと俺にしてくれなかったのか…と思うが命じたのはみこ自身だ。
沙汰は諦めながらも頭を抱える。
夢の内容が生々しすぎるのだ…
場所は沙汰の自室。
一糸まとわぬ姿でベッドに両手両足を拘束された奏。
その白い肌のところどころに赤い斑点が浮かび上がっている。
それはみこがつけたキスマークだと認識する。
あぁいつも可愛がられているこの男。
愛する女に可愛がられているのだ、この男は。
嫉妬と憎悪と、少しばかりの愛情(恐らくみこに触れられている部分に対して)を抱きながら奏を抱くのだ。
みこによって遊ばれ、今も玩具が埋め込まれてるそれを引き抜いて代わりに自分のナニを捻じ込む。
奏の嬌声のような叫びが癪に障る。
こいつは気持ちいい目にしか合わない。
こうやってみこの触れる部分を上書きして行ってもこいつは悦び腰を揺らすばかりで
苦しませたい、その整った顔を苦痛にゆがませたい。
思わず首を絞めるが、それが良かった。
首の骨が折れてしまってもいい。
力いっぱい締め上げる。
その苦悶の表情がたまらなく、そそる。
抵抗できずただ悶えるだけなのも良い。
そしてそのまま、奏の全身の力が抜けていくのがたまらなく興奮できるものだった。
「……」
奏は首筋に浮かぶ手形になんとも言えぬ表情になる。
(みこは土鎌くんのことSだよって軽く言ってたけどこれSとかそういう問題じゃないような…)
夢の中で2回殺された。つまり二晩連続だ。
犯されながら殺されるというひどい夢だ。
もしかすると意識的に距離を置くとこういうペナルティが与えられるのかもしれない。呪いだし。
相手が土鎌というサイコパス気質なタイプなので、死ぬオチになっているだけかもしれないが…。
ともかく本能が次は危ないと警告してくる。
「…会うしかないのか」
奏はスマホを取り出す。
「……レン!これどうやって使うの?友達に連絡したいんだけど!」
「にゃー、ロックの解除からにゃー!にゃ!?充電いつしたにゃ?」
「充電…?」
****
奏から「放課後会いたい(以下猫スタンプ)」というふざけたものを送り付けられた沙汰は渋々待ち合わせ場所に向かっていた。
待ち合わせ場所にはすでに奏がいた。
「待たせたな」
「いや、すまない。部活で忙しいだろうに」
「別に」
一定の距離を取りつつ会話をする。
「俺も夢を見たな」
「そうか、たぶん次で僕は本当に君に殺されていたかもしれない」
奏は学ランのボタンを外し首元を見せる。
「チッ」
「殺し損ねて残念だったな」
「本当に…」
二人は場所を移すために歩き出す。
「ねぇ土鎌くん…僕は、君からみこを奪う気はまったくないんだよ」
「……」
「みこに、抵抗することもできないから…土鎌くんはみこが僕に手を出す前に、手を出してほしい」
「命令すんな」
「ごめん…」
「で、どこに行くんだ?」
「どうしよう、何も考えてない」
「おい!」
「だって、とりあえず会わなくちゃってことしか考えてなくて…遊ぶ?」
「……何して?」
「そういうのは土鎌くんが詳しくない?」
めちゃくちゃ投げやりに言われる。
たしかに奏よりは自分の方が遊び慣れているとは思う。
(…まぁ時間つぶしと思えばいいか)
触れ合わなければいいし、抱きしめたいと思う気持ちも抑え込むことはできている。
我慢しつつ、一緒にいる時間を長くとっていれば今夜は安眠できるかもしれない。
とりあえずゲーセンで時間を潰し、二人はカラオケにいた。
ファミレスで休憩でもよかったのだが、もし『事故』があった場合に人の目がある。
ここならとりあえず安心だ。
シロミを呼ぼうとしたが、どうも都合が悪いらしく小五ロリがどうのこうのと話が長くなりそうだったので切った。
「えー、シキちゃん呼びたくないしなー…もういいや」
ひどい言われよう。
「お前こういうとこ来たりするの?」
「連れられて…」
「だろうな…」
「身内がこういうの好きで、よく歌ってくれる」
「そうか…シロミも物真似しながら歌うんだけどめっちゃ上手いからあいつは芸人になったほうがいいレベル」
「へー、その友達は来れないんだったっけ?」
「小学生がどうのこうの言ってたから犯罪犯してないか心配だな。先に通報しておこうかな」
「容赦ないなお前」
(…なんだか変な感じがする)
お互いそう思う。
こうやって落ち着いて会話したり、そもそも遊んだりするのは今日が初めて。
いつも間にみこがいたのだが、みこはこういうのを望んでいたのかもしれない。
しかし性的欲求まではいらない、あまりにも辛い。
平然を装っているが、お互いがんばって抑え込んでいるのだ。
冷静さをなくしているのか会話の内容がだんだんとおかしくなってきているような気もするが。
(わだかまりさえなければ、土鎌くんとも普通に友達になれて―――)
それは突然だった。
物思いに浸って隙が出たのがまずかったのかもしれない、沙汰に唇を奪われる。
「っ―――」
押しのけようとした手が握られる。
思考が快楽に侵され停止する。
舌で相手を求め、絡ませ合う。
沙汰のもう片方の手が奏の股間に触れた。
「んぅっ…ふっ…んんっ…」
優しく撫でられ与えられる甘い刺激に声が漏れる。
唇を離す沙汰の首に、奏は離れまいと抱き着いた。
「ヤバい…」
吐き出すように呟く沙汰。
「俺の家のが、近いから…」
「んっ…」
奏は小さく頷いた。
身体を落ち着かせた二人は沙汰の家へたどり着いた。
シキはいなかったがいつものことなので気にせず、沙汰は奏の手を引いて自室へ向かう。
そしてベッドに押し倒した。
「正法院…」
「土鎌くん…」
もはや二人に正常な思考を求めることはできないだろう。
求め合うことしか考えられなくなっていた。
「はがまく、んっ……!!」
求めるような奏の声。
鎖がジャリッと音を鳴らし奏の脚をそれ以上進ませるのを止める。
ある程度までは動かせるようにしているが、沙汰をしっかり抱きしめられないよう調節してある。
理由は二つある。一つは趣味だが、もう一つはめちゃくちゃな力で抑え込んでくるからだ。
「やだ、はがまくん、やだ…」
どうもそれがいやらしい、だだっこのように泣きながら名を呼んでもっともっとと強請るのだ。
おそらくみこは知らずに奏を縛り上げて調教していたのでここまでになるとは気づいていないだろう。
沙汰はぎりぎりまでナニを引き抜くと、奏は涙を溢しながら首を振る。
「やめないで、やだ、やめないでっ…」
やめるとは言っていないのにこの勘違い。よっぽどみこに苛められていたのだろう。
ちょっと悪戯心が沸くというものである。
「どうしようかなぁ?飽きてきたし?」
「っ…ほしぃ、もっとほしぃからぁ…」
腰を浮かせて奏は強請る。
「はがまくん、やめないで…おねがい…」
「じゃあ扱かれて我慢できたらな?」
「ひぅっ!?」
ナニを扱かれ始めて奏は仰け反って唇をかみしめる。
「んくっ…うぅ…うっ…!!」
鎖がギチギチと悲鳴を上げる。
もう我慢汁でどろどろになっているそこに、沙汰は悪い笑みを浮かべながらローターを押し当てる。
「~~~~っ!!!?」
悲鳴を上げながらイってしまう。
「ひっ…ひぃ…」
ガクガクと体を震わせながら奏は沙汰を見る。
「ごめんなさぃ…ごめ、んなさいっ…ゆる、して…」
しゃくりあげながら謝り始める奏の姿に沙汰は満足する。
これは苛めたくなる。
「しゃーない。お前の望む様に犯してやるよ?」
言って沙汰はローターを鈴口へ押し込むかの様に強く押し当てながら深いピストンを始めた。
「ひぎぃっ!!!?」
上がる悲鳴のあと、何を言っているのかわからない奏の嬌声が上がり続ける。
完全に仰け反らせて顔は見えないが、きっと快楽でぐちゃぐちゃになっているだろう。
****
4日目。
一度タガが外れてしまったせいだろう。
二人は頭では分かっているのだが止めることができず、体を重ねあわせていた。
休憩をはさみながらも求め合って。
途中でシキが「がんばってー」なんてのんきなことを言いながら差し入れを持ってきたのが腹が立ったが
沙汰はどうすることもできず、その日は終わった。
最終五日目。
「…おはよう、正法院」
「……」
奏は生きているし意識もあるのだが、疲れているのか放心状態のまま微かに反応するだけにとどまった。
実際その潤っている唇にキスをすると反応は返ってくる。
一日中姿勢を固定されたまま喘がされていればさすがの奏もダウンしてしまうのだろう。
シキの差し入れ(無駄においしいので腹が立つ)を食べながら、ときたま口移しで奏に分け与える。
完全に呪いに屈してしまったのだが、今日で終わりだ。
自由の日々だ。
……戻れるのかどうか心配ではあるのだが。
「っ…」
動けるようになったのか、奏が身を起こす。
「…あたま、ぼんやりする……」
それはそうだろう、延々と快楽を与えられていたのだから。
「…土鎌くん」
奏がキスをしてくるので受け入れる。
「僕は、土鎌くんのこと嫌いじゃないんだ」
「……だからって俺がお前のこと嫌いじゃなくなる理由ないよな?」
「本当に、僕のこと嫌い?僕が消えても、また別の物に嫉妬していくだけだ。きっと」
「うるせ。」
「サタちゃん、体拭くタオル持ってきてあげたから拭いてあげてね?サタちゃんの精液で大変なことになってるし」
「お前が一番ウルサーイ!!!!」
顔真っ赤にしながらノックなしで入ってくるシキへ枕を投げつける沙汰。
「なんであの人は動じないんだろう…」
「頭おかしいからだろ」
ひどい言われよう。
しかし兄のいうことはきくらしい。
奏の体を拭きはじめる。
「動けるようになったら風呂の用意してやるから」
「うん…」
(土鎌くんって普通にしてれば優しいんだけどなぁ…)
―――沙汰は優しいの
みこの言葉を思い出す。
やっぱり二人は相思相愛なのに、早く寄り添え合えばいいのに…と思う奏であった。
****
翌日。
「らぶらぶになったかしら?」
「なってない。って正法院!お前俺を盾にすんな」
沙汰の肩を持って背後に隠れる(沙汰より大きいので隠れ切っていないが)奏に叫ぶ。
「いや、割とこれ有効かなって思って…」
「みこさんのせいで奏さんがどんどん怯えた大型犬になっていくじゃないですかー」
巻がみこに不満をいう。
「あら、それはそれでかわいい」
「かわいいですけどカッコイイ奏さんがいいんです!
二人とも大丈夫ですか?らぶらぶですか?」
「「違う」」
否定する二人。
「元に戻ったようでよかったです…奏さんって私の魔力を溜め込む性質だから残ってたら禄に助けてもらおうかと思ってました」
「……残ってないな?」
「……たぶん」
「さぁ、どんな肉欲の日々を送っていたのか私に教えてちょうだい?」
みこはにっこりとほほ笑む。
もちろん、監視していたので内容は知っている。
しかし喋らせることで羞恥心を煽って遊びたいのだ。
あとこれは絶対に言えないのだが…らぶらぶバーが四日目でいっぱいになり、そこで魔法が解けたことは絶対に言えない。
言ったら二人が可哀想だな(巻は発狂しますと強く主張していたが)と思った。慈悲深いみこなのだ。
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