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文章は司さんです→pixiv
みこさまが人間の体になってにゃんにゃん
みこの柔肌に無粋な鬼の牙を立てる。血が溢れるほどには強くはしない。みこの肌を傷つけるなどと論外だ。けれども、みこの身体を思うがままにはしていた。みこはいつものように身をぴたりとつけてくることはしない。むしろ、沙汰から離れようともしている。それが、人の身故の本能か、はたまた違うのかは、鬼である沙汰には判らない。
「さ、た」
平素とは打って変わった弱々しく不安げな声。怯える瞳に映る我が顔は、苛虐の快楽に浅ましく笑んでいる。そのさまに怯えたように、またみこは震えた。沙汰の腕から逃れようともする。けれど、人の身がどうして鬼に敵おうか。沙汰はみこをぐいと引き寄せ、そっと腹を撫でる。鬼の逸物を咥え込む白い腹は、心なしか膨らんでいた。
今のみこは蜘蛛になれぬ。荒神様の気まぐれで、今宵一晩は人の身だ。身体が鬼との睦み合いに耐えられる以外にはなんの妖力もなく、腕力もない、非力な娘。沙汰は愛しいみこがか弱くなったことに驚いたが、同時に奇妙な心持ちにもなったのだ。それは鬼たる沙汰が、美しく愛しい娘を目の前にしていれば、当然抱く気持ちでもあった。長く美しい蜘蛛の脚もなく、広がる長髪も蜘蛛の糸とはならない。白磁の肌も、沙汰の爪でやすやすと裂けるだろう。胎とて沙汰がほんの少し乱暴にしてしまえば弾けてしまうかもしれぬ。鶴のように細くたおやかな首に牙を剥けば、赤い血が溢れてしまうのだ。そんなかよわいみこを、沙汰は強く愛しく感じもしたし、同時に蹂躙したくもあった。沙汰の様子を察したみこは逃げようとしたものの、ただびとがどうして鬼から逃れられるものか。かくてみこは沙汰に捕らわれ、その身を思うままにされていた。
恐れ怯えるみこを軽々と押さえ込み、いやがるみこの身体を開かせた沙汰は、みこの静止を聞かなかった。むしろみこが怯え、静止を口にすればするほど悦んだ。みこはそんな沙汰に怯えたし、沙汰からもたらされる快楽の味にも怯えた。平素ならばなんということもない愛撫が、舌が、指が、まるで違う。愛撫のさなかに達することなどなかった身体は、幾度も果てた。だというのに、すぐさまに上がる熱と甘い痺れは、底のないぬかるみへとみこを誘い沈むようだ。底のない快楽が恐ろしくなり、みこは何度も沙汰に懇願した。
「やめ、やめて、沙汰、さたあ……いや、いやあ……」
「おねが、ひぃっ、やめ、した、したが、あああ、さたあ……」
「いや……いや……もう、いやあ……さたあ……」
「や、やめ、まって、そんな、はいらない、さける、さけてしま……あああああっ」
懇願すればするほど沙汰の苛虐心はそそられるのだが、みこはそのようなことは知らないから、鬼に蹂躙されながら幾度も乞うた。沙汰は可愛らしいことを言うみこの口唇と吐息とを奪い、ますます強く抱いた。自らの異形の腕の中にいるみこは、かつての沙汰が恋い焦がれたみこそのままの姿。沙汰はもちろんみこがどのような姿であれ愛しいのだが、最も初めに心を焦がしたみことなればすべて別だ。そんなみこが、今、この腕の中で、泣いているのだ。
思うままにして、我が物にしたいと雄の心と、その身のみならず魂をも思うままにしたいという鬼の心が、そのままにみこを蹂躙する。蜘蛛の糸と化さない髪を掻き分け怯える顔を射すくめ、鬼の欲情を受けるには狭い胎をなぶり、どんなに力を込めようとも鬼に敵うわけのない身体を抱きすくめる。そのつどみこがすすり泣くのが、いやいやと力なくかんばせを振るのが、何より艶めかしい。もっともっとそうなればよい、そうしてしまえと欲情に背なを押されるままに、みこの口唇に無粋な舌を差し込み、形の良い乳房にむしゃぶりつく。人の身で叶わなかったことが今こうして叶うのだ。不格好に膨らむみこの下腹を撫でて、沙汰は低く笑った。
「みこさま、どうなさいました。いつもならば、どうということもありますまいに」
「や、あ、……ち、ちがう、いつ、も、とちがう、さた、さた、やめ、ひんっ」
「ええ、違いますね、みこさまが、俺を、すべて、受け入れて、くださらない」
「ひっ」
鬼の指が触れる触れる秘所には、禍々しい鬼の逸物が押し込められている。沙汰の言う通り、あやかしの身であれば易々と受け入れられるが、今はすべてを飲み込まずにいる。人どころか獣の陽根とも程遠いそれはいつもならば愛しいものであったけれど、今は我が身を穿つ恐ろしいものでしかない。改めて目の当たりにした己が下腹に、みこはすぅっとまた恐怖に駆られ、沙汰の腕から逃げ出そうと身を捩る。そんなみこに、沙汰がまた笑う。無力なみこの狭い胎を、ぐいと突き上げる。みこは声なき声をあげてまた果てた。
「ふ、ふ、今夜は感じ上手であられますね、みこさま、ほんの少し、動いただけ、でしたのに」
「あっ、あ、……いや、さ、た、また、おお、き……」
「ええ、みこさまが、もっと欲しいと、おっしゃいますから」
「い、いってない、いや、いや、もう、もうやめて、さた、きもち、いいの、もういや……」
愛しい人の涙の浮かぶ眼差しと、快楽の恐怖に怯える声音、言葉。蟻走感が沙汰の背を駆け上がる。みこの顔が恐怖に染まる。自分がどのような笑みを浮かべたのか、想像するまでもない。みこの乳房を少しばかり乱暴に掴み、みこの花芯を指で押しつぶしながら、みこを揺さぶった。何度も何度も。みこの華奢な身体は何度も震え、白い胎は抽迭のたびに形を変え、童子のように頭を振り、狭い道筋は逸物を絞め上げるほどこわばり、悲鳴のような嬌声が響く。やめてさた、もうだめ、これいじょうきもちよくなりたくない、こわい、やめて、さた、……
沙汰はにたり、みこへと笑った。
一際強く、みこの胎の奥に突きこまれた楔から、夥しい妖力を帯びた欲情がほとばしる。みこは目を見開いて、はちきれんばかりに注がれる悪寒に苦しげな、あるいは浮かされたような吐息をもらして、敷布にしがみつく。すでにないはずの人の魂――命と呼ぶべきものが、冷たく熱いものに侵され犯され食い尽くされるおぞましさと、身が知る沙汰の吐精のもたらす快楽とがないまぜになって、みこの心を千千に散らす。食われる、食われてしまう。涙をはらはらと流しながら長い長い吐精を受けたみこの下腹は、いつか孕みたての孕み女のようになっていた。
おもむろに、のしかかる沙汰の身が引かれる。ゆっくりと引き抜かれる楔とみこの肉壁の隙間から、鬼の精とみこの蜜が入り混じったものが溢れてこぼれ、やがて全て引き抜かれると、ぐったりとしたみこが息をするに合わせて脚の間から白濁がこぼれるようになった。
長髪を夜の川面のように広げ、しどけなくあられもない姿で、沙汰に脚の間を見せているのも気付かずにいるみこは。
なんと。
なんと。
食らいつきたくなることか。
みこの腿を性急に広げ、またもみこに覆いかぶさる。寸の間、我に返ったみこであったけれど、再び捩じ込まれた鬼の分身にかすれた嬌声をあげる他ない。赤子の部屋を押しつぶさんばかりに押し入るものが、またみこの腹を醜く変える。喉の奥、押しつぶされたような声が洩れ、瘧のように震える手で敷布を握る。鬼は素早くみこの口唇を塞ぎ、喉の奥にまで舌を差し込む。息の出来ぬみこがもがいたならば、ずるり舌を引き抜いて頬を撫でる。みこは童子のように泣きながら、いやいやとまた頭を振った。
「おねが、い、さた、もう、きもち、よく、なりたくない、もう、これ、いじょう、おねがい、さた、さた」
「それは酷と言うものです、みこさま、この沙汰は、まだまだ満足しておりませんのに」
「は、はらが、やぶけてしまう、ややこの、へやが、つぶれてしまう、さたので、こわれてしまう、おかしくなってしまう、おねがい、さた、もう……ひいっ、な、なぜ、おおきっ、いやああっ、おおき、いやっ、さたっさたああああっ」
人の身のみこは鬼の沙汰に懇願したが、鬼の沙汰はうすら笑うばかりで、みこの願いを結局聞き入れることはなかった。
みこは神の気まぐれのままにその一晩を人の身として過ごし、その間ずっと、鬼に貪り喰らわれた。
一晩の間、みこの嬌声とも悲鳴ともつかぬ声は、尽きることがなかった。
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