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文章は司さんです→pixiv
陽之パワーはみんなを女体化できるのだ。神なので。
 なんでこうなっているんだっけ。

 ろくろ首は天井を見つめてぼんやりと疑問を浮かべた。その口からは甲高い嬌声がずっとこぼれていて、浮かぶ疑問の形にはならない。

 なんでこうなっているんだっけ。

 ろくろ首は生前も死後も男だから、揺さぶられるごとに大きく揺れる乳房とは無縁のはずだ。激しく揺さぶられる下腹には陽根があるべきだし、入り口など存在しているわけもない。でも、今のろくろ首は女の身体で、女の声で、女の快楽に泣いている。

 なんでこうなっているんだっけ。

 何度目かの自問は、乳房を撫ぜる手に阻まれた。ひい、と身をすくめて手の持ち主を見れば、そこには女がもう一人。ろくろ首には弟がいるが妹はいない。だのに、目の前の弟はやはり自分と同じように女の姿をしていて、女の場所にわざわざ張り型を詰めて、兄である自分を犯している。陶然とした眼の色ではあるけれど、ろくろ首はこんな目の色の意味を知っている。こちらをなぜ見ないのだ、こちらを見てくれ兄さん、兄さん。声なく叫んで求めて、自分へと目を向けさせようとしている色。ろくろ首の豊かな乳房を手のひらで包み、過敏にも近い先端をつまみいじり、胎の奥を張り型で攻める。そんなふうにしたなら自分だって女を攻められるだろうに。いいや、それがいいのだったっけ。あられもなく鳴きながらろくろ首は思考を巡らせた。

「兄さん、どこを見てる? 天井には何もいないと、兄さんが言ったじゃあないか」

「ひ、い」

 乳房のみならず、女核をつままれて、ろくろ首はそのまま達した。だというのに、弟は女核を摘みいじるのをちっともやめない。達した直後で敏感な突起をこすられて、またろくろ首は達した。強すぎる快楽から逃れようと脚をじたばたさせたもの、弟は決して逃すまいとのしかかってきたので、どうにもならなかった。熱に浮く弟が深く深く口付けてきたのにも追いつけず、また腰が浮いた。女の身体は男の身体よりも敏感なのだな、とぼんやり考えた。

「せ、せん、まって、まっ、ひぃぃっ、やっ、ああああ」

 強く快楽を打ち込まれるうち、下腹からじわり何かがあふれるのを感じて、ろくろ首は羞恥で死にたくなった。繋がる場所をひたひたに濡らすそれが失禁でないと知りえてはいるものの、我が身からすればどうしたって失禁にしか思えない感覚なのだから、弟を汚すんじゃあないかとも、弟にこんな情けない有様なのを見られたくないとも思えた。知らぬままにいやいや、と頭を振ると、弟の手ではない指がくいとろくろ首の顎を掴み、音を立てて吸い付いてきた。それを見たいきり立った弟が身を乗り出したので、更に深みを突かれたろくろ首はがくがくと揺れた。

「離れろ、紫鬼! 貴様の飼い主のところへ戻れ!」

 怒鳴る弟に低く笑う鬼は、やはり本当なら男のはずだ。やはりこちらも今は女で、ろくろ首の顎をつまんだままで口唇をねぶってきた。「赤嶺がここにいろと言うのだ、戻れと言うまで戻らんし、貴様の言葉を聞くいわれもないな、風車」

 言いながら、紫鬼の指がろくろ首の舌をいじり回す。そのせいで、唾液が口の端からだらしなくこぼれていく。どうにか口を閉じられないかと喘ぎ動いたのを、弟は紫鬼の指欲しさのことだと見なしたようだった。得意げな紫鬼の指を引き抜いて、弟の指がつっこまれる。んぐう、と呻くのも束の間、そのまま口淫とばかりにいじり回される。女の細指に舌と歯とを犯されて、溢れたまた唾液が口の端を汚したから、同じように口を閉じようとした。そのさまに弟は気分良さげに笑った。ああ笑った。身体は変わらず強い快楽に振り回されっぱなしだけれど、ろくろ首はなんだか嬉しくなった。

 なんでこうなっているんだっけ。

 仮初の胎を張り型越しに弟と繋げて、揺さぶられるごとに揺れる乳房を紫鬼に乱暴に愛撫される。男の身体でもこんなふうにされる。弟も紫鬼も、どうも自分が女に見えているようで、女のように抱いてくる。普段は弟だけが抱く。時折紫鬼が抱きに来る。ごくまれに、代わる代わるに犯される。弟に菊座を犯されながら紫鬼のものを無理やり口淫させられるのだ。そういえば女の身体で菊座にされたことはないなとろくろ首は思う。それもそうだ。弟は女の身体の自分を孕ませようとしたのだ。孕まぬ場所になど入れたりはしない。あの夜も大変だった。感覚の違う女の身体だからやめてほしいと泣いて頼んでも、弟はまるきり聞き入れず、深い場所へとずっと精を注ぎ込んで……。

 弟の舌が首を舐める。頭のてっぺんから悲鳴を上げた。お構いなしに弟は舐め続ける。やめてくれ、首が取れる! もがこうとした腕は紫鬼に取られて、敷布に縫い止められる。紫鬼はそのまままた口を吸ってきたし、弟はろくろ首の首の継ぎ目を愛しそうにずっと口付けてくる。逃げられない快楽にろくろ首はまた達したし、失禁にも似たものが溢れるのを感じた。

 なんでこうなっているんだっけ。

「ああ……にいさん、にいさん、おれの兄さん」

 弟のうっとりした声とともに、動きが早まる。女陰を突き上げかき混ぜるのが激しくなる。ああだめだ、こんな、こんなにされたらまた! 底の見えない快楽に怯えてもがくけれども、しがみつくようにしてきた弟からどうして逃れられようか。引かれた腰を強く押し込められて、ろくろ首はのけぞって達した。同時に、弟も高く声を上げて鳴いた。鳥のような声だな、と快楽の嵐の中でぼうと感じた。

 荒く息をする弟にのしかかられてるろくろ首は、ひい、ひい、と泣きながら震えていたが、紫鬼の手がぐいと弟を引き剥がしたのを目で追った。紫鬼も欲に駆られた目でろくろ首を見下ろしていたし、いつの間にか張り型をつけている。しかも、弟のものより立派な……。

「や、やめ、やめ、」

「はん、何を言う。どうせ入れたら泣いて悦ぶような奴が」

「貴様、勝手に何を」

 抗議した弟は弟が引き離される。女陰から抜ける感覚と、これから起こることへの悪寒に身震いして、弟へと縋ろうとしたけれど、紫鬼は素早くろくろ首を押さえ込んで犯し始めた。胎の中を全部埋めるような張り型に、ろくろ首はすぐさま達してしまった。

「ひああ、う、あ、あああ」

 いやいや、と頭を振ると、その目線の先には弟がいる。紫鬼を睨みつけようとして、無様に犯される自分を見ている弟が。弟以外にだかれてるのを。弟がみて。

「や、やだ、おと、おとうと、が、みてる、やめて……ぬいてえ……」

 のしかかる紫鬼を押しのけようとしながら、見ないでほしいと頭を振る。紫鬼はこんな時決まって悪い顔になる。がっしりとろくろ首を押さえ込み、音を立てて身を打ち付ける。乱暴な快楽に達し続けている身体は悦んだ。あられもなく鳴いた。弟に見られながら紫鬼に犯されて。

 なんでこうなっているんだっけ。

 なんで弟に口付けられてるんだっけ。犬のように這いながら獣のように女に犯されて、なんで弟の脚の間に顔を埋めてるんだっけ。なんで紫鬼に乳房をわしづかまれているんだっけ。弟もなんでだか自分の脚の間を愛撫したがるっけ。紫鬼は飲み込ませたがるし。弟ははらめ、はらめ、と言いながら何度も何度も奥に出したなあ。そんなことをずっと前にも言われた気がする。もしもはらんだらどうなるんだろうか。俺はずっと女のままになるのだろか。ああ、菊座にも欲しい。旋次郎の魔羅が欲しい。たくさん注ぎ込んでほしい。紫鬼のももっと欲しい。身体のどこを使ってもいいから。もっともっともっと。

 なんでこうなっているんだかわからないけれど、まあいいか。

 きもちいい……。

「もっと、ほし、い、ちょう、だい、ひいいっあああ!

「せ、せん、じろ、ご、ごめ、せんじろ、じゃ、ない、のにっ、ひあっそこっすきいいいい!

「も、もっと、こし、ふるから、もっと、は、はげしくぅっ!」



 なんでこうなったかわからないけど、きもちいいから、いいや。
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