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虚無と沙汰
 鬼どもの乱交は日常茶飯事と言っていい。

 元鵺の河童は呆れかえるほどの鬼どもの痴態に頭を抱えることもあった。

 今日も誰かが広間で乱交でもしているのか、声が漏れている。

 少し襖を開けて中を見てみれば、珍しいことに白鬼が恨みがましそうな顔をしながら喘いでいるという器用なことをしている。

「くっ…ころすっ…ころすっ…!!!」

『気持ちよくない?ごめんね?僕よくわからなくて…こう?ねぇ?あ、もっとこう…』

 白鬼を背後から押し倒し、ケモノのように犯している虚無は試行錯誤している様子で腰の動きを変えたり、手で白鬼の一物を扱く。

「うっんんんっ…ん……!!!!」

 声を上げるのを耐えきる白鬼だが、半裸の身体はぶるぶると震えて強請るように腰を突き上げている。

「何してんの坊っちゃん」

 河童は虚無に声をかける。

「っ……」

 白鬼の顔がこわばる。

 河童に目を向けることはなかったが、そのまま顔を俯かせてしまう。

『あ、河童』

「鵺おにいちゃんだよ」

『僕白鬼と仲良くなってるの!』

 笑顔を向ける虚無の顔は退魔師のそのものなのだが、表情の作り方が違うのか幼げな印象を与える。

「へぇー」

 近づいて見下ろす河童に対して、白鬼は冷や汗を流し始める。

「でも坊ちゃんが下手くそすぎて白鬼が怒ってるんだ?」

『そうなの』

「っ…」

 白鬼が河童を睨みあげる。

「白鬼、おまえどうしちゃったんだよ。虚無ぐらいお前の力で……」

『あぁ、僕は白鬼に勝つ力はないけど同じもので出来てるから力を抜かすこと出来るんだよ。

 ほら、白鬼の右目って『僕』が剥き出しになってるから触るだけでいいの』

 虚無の手が白鬼の右目を塞ぐように覆い、触れた瞬間ぐちゅぐちゅと音を立てながら指が右目に潜り込んでいく。

「あああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 仰け反りながら絶叫する白鬼。

 左目は白目を向きかけており、嬌声を漏らし続ける口からはだらしなく舌が垂れて―――

「面白い芸だな。」

『今のところコレが一番好きみたい。ねぇ?気持ちいいね?』

 手を引き抜くと白鬼はぐったりと畳の上に倒れこむ。

 不思議と右目は元の状態のままだった。

「コレでもまだ心折れないんだろう?もっと壊すようにしないと仲良くなれないぞ」

『どうすればいいの?』

「妖蟲使ってやれよ。あ、そうだ妖蟲って望み通りに動けたりするのか?」

『できるよ?』



   ****



「ふっ!う!うううう!!!!」

 沙汰はもがいていた。

 しかし両手を縛る糸は引きちぎることが出来ず、猿轡も同じ素材で出来ているのか噛み切れなかった。

「いいか?仲良くなるにはまず布団の上だ。畳の上は野蛮野郎がすることだ」

『赤嶺は野蛮なんだ』

「賢いな、その通りだ。あと白鬼は凶悪だから安全のために縛っておく。

 お前半分人間だからな、食べられるぞ」

『あ、そうだね…河童すごいね、頭いい、学者さんのフリしてるの上手だと思ってたけど本当に頭いいんだね』

「お前は他人の地雷を踏みにいくのが得意なんだな…」

『?』

「まぁいい、さてどう遊んでやろうかな…」

 河童は悪い笑みを浮かべながら妖蟲を一つ摘まみあげると白鬼のナニの上へ。

 虚無の言うとおり、思うように動いてくれる。

 妖蟲はない口を作り、糸を引きながらグパっと口を開いて白鬼の一物を飲み込んでしまう。

「~~~~~!!!!」

 白鬼の体が飛び跳ねる。

 しかし腕も足も影から伸びてきた妖蟲に絡め取られて逃れられなかった。

 幼蟲の中は無数の突起が蠢いており、味わったことのない快楽が襲う。

 にやにやする河童。

「ひぐっ!!!」

「我慢できるかなぁ?白鬼」

 尿道に細い管が侵入してくる。

 奥まで到達されてしまい、じんわりとしたものを感じる―――妖蟲の体液だ。

 それに気づいて白鬼は目を見開いて拒絶するように首を振る。

 じんわりとした感覚が膀胱から腰へ広がっていく感覚。

 その途端、ぞわぞわした感覚に襲われ始める。

 熱い、気持ち悪い、もどかしい、気持ちいい、刺激が欲しい、イキたい

「ぅぅぅぅ!!!!!」

 涎を垂らし、涙を溢しながら白鬼は身をくねらせる。

「おごっ……ぉぉぉ…!!!!」

 ガクンガクンと震えはじめる。

 膀胱に侵入していた管が脈打っている。

 いや、何かを出されている。

 小さな粒状の物を管が出しながら引き始め、尿道いっぱいに詰め物をされてしまう。

 にゅぽんっと妖蟲を引き上げる河童。

「ひっ…ひぃっ…」

 白鬼はガクガク震えながら自分の一物を見る。

 快楽に腹が力を込めれば尿道から粒がぷにゅぷにゅと溢れてきてそれが気持ちいいのだ。

「あっあ、ア ァ ァ … …」

「けっこうよさそうじゃねーか」

『毒のおかげで粒々が気持ちいいんだね…』

 虚無は愛しそうな手つきで勃起し始めている白鬼の一物に触れ、ゆるゆると撫でる。

「ひぅっ…ひっ…ひぃ…!!!!」

 猿轡を噛みしめながら白鬼は仰け反って腰を浮かせる。

『いいよ白鬼、このまま気持ちよく出そう?』

 河童は知らないが、虚無の手つきはみこの手つきそのものである。

 虚無と白鬼しか知らない動きだ。

 しかし白鬼は情けなく脚まで大きく開いて震えているがなかなか出せないでいた。

『白鬼?』

 虚無は白鬼の猿轡を指で簡単に引きちぎった。

「でな、いぃぃ…詰まってるの、邪魔、して…」

『押したらどうかな?』

 虚無は扱きながら白鬼の腹を手で押す。

「ひぎぃっ」

 ぶちゅぶちゅと粒が出てくるが勢いが足りない。

「っ……!!!!」

 再び白鬼はガクガクと震える。

 イけずに逆流しているのだ。

「河童…ころすぅ…!!!!」

「こっわ。でも気持ちいいんだろ?痛そうな顔でもないし、むしろえろい顔してるし?」

「うるさいっうるさい!」

『白鬼、もっと毒飲んで』

「んぐっ…」

 妖蟲が口の中に潜り込んで、白鬼の顔がとろんとなってくる。

「白鬼はいれるほうが気持ちいいんじゃね?」

『そうなんだ、じゃあいれてもらおう。ありがとう河童』

「いえいえ。あんま遊んでると怒られそうだしオレもう行くわ」

『うん、またね』



    ****



 まどろむ意識の中、視たことのない表情を浮かべている正法院がいる。

 おかしいな、あのむっつりした表情なんて微塵も残っていない。

 柔らかな笑顔というのだろうか…淫靡な笑顔というのだろうか、情欲に塗れた表情だ。

『白鬼、もっと欲しい…もっと…』

「白鬼…?せいほーいん、なに、いって…?」

『びゃっき…?ぼく、きょむだよ』

「せいほういん…?」

 沙汰は微睡む意識の中であったが、奏の顔に手を添えながらその唇を奪う。

 何故かわからないが、欲情している自分が抑えることができない。

 正法院でもいい、なんでもいい、快楽を求めている。

「は、がま…やめ、はがまっ…」

 逃れようとする奏の手を押さえつけて貪るような接吻をする。

 下半身は正法院と繋がっているようだ、まるで溶けてしまうかのような、妙な感覚がある。

「欲しい、と言ったな正法院」

 沙汰はぐっと奏の脚を押し開く。

 何故か長い時間繋がっていたようで、自分の精液が溢れていた。

 奏のそこは期待しているかのようにぎゅっと締め付けてくる。

「やだ、はがま、はがま…」

 奏は涙を流しながらいやいやと首を振る。

 何を言っているんだこいつは、こんなになるまで交わっていたのに。

 しかしそれが興奮を煽ってくるのも事実。

 沙汰はパンパンと強く打ち付けはじめる。

「っ!ぅっぅぅ……!」

 奏は指を噛みしめながら耐えているようだった。

「正法院!」

「ひぅ!」

 沙汰は一度引き抜いてお互いを立ち上がらせると、奏の腕を掴みながら後ろから犯し始めた。

「アッ…あぁ…ヒッ!はがま、はがまぁ…!!!」

 奏はイっているらしい、脚がガクガクと震えて今にも倒れてしまいそうだった。

 しかし沙汰が支えているのでそれはありえないことだ。

 こんな細くなった体を支えるのは苦でもない。

 …どうしてここまで痩せているのだろう?

 正法院はもともと顔色が白かったが、どうして青白いのだろう?

 髪もこんなにぐちゃぐちゃになって…あぁ、こうやって自分が掴んでいたせいか。

 奏の頭を鷲掴みながら納得する沙汰。

「もっと啼け!!正法院、俺に犯されて気持ちいいんだろう?」

「うぁ…ぁぁ…」

 奏が沙汰に視線を向ける。

 その目は涙で溢れていた。

「は、がま…もっと…ちょうだい…」



   ****



『僕は虚無だけど…正法院になれば白鬼と仲良くなれるのかな…』

 妖蟲の巣の中、虚無は独り言をいう。

『は・が・ま』

 虚無はふふふと嬉しそうに笑う。

『白鬼の名前、はがま!ふふ、ふふふ』

 嬉しそうな様子で近くにいる妖蟲を抱きしめ撫でる。

『…僕も名前、欲しい』

 せいほういんって、つけてくれれば…いいのにな…
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