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虚無に半身奪われてる奏さんルート
『誰も遊んでくれない…』
奏の半身を食った虚無はそう呟いて膝を抱える。
いつも遊んでくれる付喪神は戦場に行ってしまったし、白鬼や海難法師は無視をする。
牛鬼は無言で首を横に振るし、化け蟹や飛頭蛮は食べられそうで怖い。
お母さんは今日は『お父さん』のところへ行っているので会えない。
消去法で面々の顔を浮かばせては消していく。
『誰か遊ぼう…』
呼びかけながら虚無は部屋を出る。
ウロウロとしていると、仲間の気配を感じてそちらへ向かう。
何やら怒鳴り声と物音がする。
虚無は嫌な顔をしながらこっそり覗き込むとやはり怒鳴っているのは白鬼であった。
ぎゃあぎゃあ罵詈雑言を叫びながら子蜘蛛を踏みつぶしている。
可哀想に、お母さんとあの人の子供なのに。可哀想、可哀想。
目につく子蜘蛛を踏みつぶした白鬼は急に静まり返って、虚無の方へ歩きはじめる。
虚無はぴゃあっ!と身を屈ませ廊下の端でぷるぷる震える。
白鬼は通りすぎざまに虚無を睨むが、虚無は俯いていたので目を合わさなかった。
白鬼はそのまま台所へと向かって消えて行った。
虚無はホッとしながら立ち上がり、子蜘蛛の元へ向かう。
死骸を妖蟲たちが食べに来ていた。
『遊ぼう』
虚無が声をかけると妖蟲たちは反応した。
****
幼蟲たちは普段薄暗いところに潜んでいる。
巣もいくつかあり、虚無はそのうちの一つに来ていた。
裏庭を通って茂みを掻き分けると一つ蔵がある。
誰も立ち寄らないのは蔵の中に何もないからだ。
何もないから幼蟲の巣になっていた。
虚無はくすぐったそうに笑いながら妖蟲たちとじゃれ合う。
姿カタチは違えど、みんな黒い月から生まれた兄弟だ。
『ふふ、ふふふ・・・・』
虚無は着物を脱いで妖蟲たちに身体を委ねる。
蟲たちが体液を分泌させながら艶めかしく絡み始めた。
虚無の遊びは性行のことである。それしか娯楽を知らないのだ。
だんだんと気持ちがよくなってくる。
妖蟲は虚無の中へと潜り込んだり、勃起し始めているそれを飲み込んだりし始め、虚無はほわりと気持ちよさそうな笑みになる。
『んっう…きもち、いい…もっと、ちょうだい…もっと…』
虚無に応えるように妖蟲たちは動きを激しくしはじめる。
『すき、きもちいい、すきぃ…』
****
「……」
白鬼は蔵の扉を開いてウっと呻く。
中は黒い月のように真っ暗で…その空間の中に白い手や足が浮かんでいるかのように見える。
灯を照らせば、蠢く黒い蟲に埋もれた退魔師の手足だと解る。
何かを掴もうとしているのか、ただ痙攣を起こしているだけなのか、その手はガクガクと動いている。
脚も時たま動くのだが蟲が絡んで動きを封じているように思えた。
「おい」
声をかけるとザワリと空気が振るえた。
蟲が蠢いたのである。
闇の中から虚無の頭が出てくる。
その表情は悦楽に沈みながらも恐怖も混ざっていた。
虚無ではなく退魔師の顔である。
「たす、け…ヒッ!あ、あぁぁぁぁっ…!!!!あぁぁぁあああああ!!!!」
嬌声を上げながら涙を溢す。
脚がガクガクと揺れる。
「きもちいい、ゆるしてぇもぉゆるし、てっ…!!!おねがい、きもちいいからぁ…!!!」
「…みこさまが戻れと言っている。そいつを離して散れ」
「……」
急に退魔師の表情が呆ける。
『…またね』
虚無の呟きに妖蟲は散り始めた。
虚無は立ち上がり、着物を拾って羽織った。
「…お前に蟲の効果はないのか?」
『効いてるよ?ふわふわしてて気持ちいいよ。白鬼も遊ぼうよ。』
笑顔を向けてくる。
ゾっとする白鬼。
笑顔だ、そうだ虚無は無邪気な笑顔を浮かべる。
いつの間にか虚無がその体の主導権を握っているのだ。
少し前までは半身…退魔師側の目は変わらなかったというのに。
『白鬼』
虚無が白鬼の手に触れる。
勝手に手が持っていた灯を落とす。
闇が広がる。
勢いよく引きずり込まれた。
べちゃりと音を立てながら蟲の中へ投げ込まれてしまう。
「貴様…!」
『この子たち、君のこと好きだよ。ご飯くれるもの。子蜘蛛いつもくれてるから』
「あれはお前たちのためじゃな…」
口の中に蟲が入ってくる。
白鬼はそれらを噛みちぎり、身体に絡まる蟲を引きちぎるが物量に負けた。
むしろ下手に噛みちぎったりしたせいで毒の体液が白鬼の体を蝕んでいく。
『白鬼、一緒に遊ぼう』
「さわ、る…なぁ…!!!!」
『気持ちいいでしょ?ふわふわして』
「っ……」
虚無に身に着けていたものを剥ぎ取られる。
『僕、お母さんが愛してる人のこと気になってた。もっと知りたい。けど白鬼は僕をいじめる…どうして?
この体が退魔師だから?』
「うるさい!!!」
『怒らないで…』
虚無は怯え、蟲たちが襲いかかってくる。
「うっ…ぐ…!!」
****
「遅かったわね。…あら?」
みこは首をかしげる。
白鬼がぐったりとしており、それを虚無が支えていたからだ。
「沙汰、どうしたの?」
『一緒に遊んでもらった』
「そう…お前は食べてしまうから大丈夫だけど、沙汰は『毒抜き』しないと…こっちにお渡し」
『うん』
素直に虚無はみこに白鬼を預ける。
「また呼ぶから、この部屋に入ってきちゃダメよ」
『どうして?』
「恥ずかしいから」
『…?』
虚無はよくわからない、といった表情をしながらも部屋を出る。
出るときにちらりと中をうかがったが、恥らうような表情で白鬼に接吻をする母の姿が見えて虚無はその美しさとともに情欲を抱いた。
母に対して浮かばせる気持ちではない。
きっとこの退魔師の体のせいだろうと、虚無は考えた。
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