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これは正史ではなくIFルート
 潮美は半妖である。

 人魚の血を少し引き継いでいると、祖母や母から聞かされていた。

 実際同種を見たことが無いので半信半疑であった。

 ただ海女の中では一番深く長く潜れるし、身体も丈夫だ。

 しかしただそれだけのこと。


「人間より、人魚のが人間を食らうだろう?」


 そう語ったのは、意外にも顔なじみの漁師だった。

 うっかり人魚の話をしてしまい、「あ、秘密よ?人魚の生き血って不老長寿の妙薬っていうじゃない?」なんて

 冗談交じりに言った後の返ってきた言葉だった。

 その漁師はいつも一人で船を出し、いつも一人で海に居る。

 だから気になってたまに声をかけていた。

 漁師…ナミは網の手入れの作業を止めることなく、潮美を見ることなく呟く。

「人間は、選り分けるだろ…。人間は人間を食べない。

 でもあいつらは食べるんだよ、同じサカナ同士で食い合う。

 人魚も人を食らうと聞いたことがある。お前、食べないだろ?」

「食べないわね。どちらかというと貝が好き」

「あ、そう」

 ナミは網に絡まっていた貝を解きといて、潮美に投げる。

「そっちの鯛も好き」

「自分で獲れ」

「おまけしてくれてもいいじゃない」

「オレより儲けてるだろう、お前」

「全部一晩で無くなるわ。今晩一緒にどう?」

「弟が帰りを待っているから」

「あ、そう…貴方人間キライって本当?」

「本当」

「じゃあどうして私を構ってくれるの?」

「……」

 ナミは眉間に皺を寄せて潮美を見る。

「お前が絡んできてるからだ」

「そうだったかしら」

「無視しても船に乗ってくる」

「そんなこともあったわね。じゃあ弟さんがお酒飲めるようになったら三人で飲みましょ!」

「……イヤだ」



   ****



(大津さん、今何してるんだろうなぁ…)

 まったく見なくなった。

 噂話であるが、忽然と兄弟が姿を消したとも聞く。

 兄が病に倒れ、続けて弟も…と。

(お見舞いに行くほどの仲でも、なかったしなぁ…住んでる場所も違うし)

 弟は一度見たことがある、兄と同じく神経質そうな…神経を尖らせて周りを警戒しているタイプ。

 きっと笑えばもてるだろうに…いやきっと兄の前では穏やかなのだろう。

「うー…」

 横から呻き声…唸り声かもしれない。

 もぞりと、床に転がっていた酔っ払いが身を起こして椅子代わりの丸太に座る。

「おはよ…寝ていた…」

「そのまま寝てなさいよ」

「飲みなおす」

 言って酔っ払いは酒を注文する。

 この酔っ払いは一緒に長屋暮らしをしている竜という。

 お世辞ではなく彼は絶世の美男子。

 ちゃんとしていれば「容姿端麗で聡明な青年」として周りから黄色い声が沸くだろう。

 しかし彼は人として欠けている部分が多く、髪は寝癖でボサボサ、身なりも気にしないタチでよれているし、

 酒が入っているせいで表情はとろんと緩んでいる。

 育ちがよければきっと彼は神童と呼ばれる禄に負けぬほどの人間に成れていただろう。

 しかし彼は運がなかった。

 幼い頃に天狗に攫われ、そこで人として育たなかった。ケモノの如く扱われたのだ。

 大人になって捨てられた彼は、子供のころに育てるものを育てられぬまま大きくなった、欠けた人間になったのだ。 

 彼の親は解らない。

 いくら聡明だった彼でも子供は子供である。どこから連れられたのかも本人はわからないのだ。

「そういえば最近よく巻ちゃん来るね」

「乙女同士の密話に男が入ってこないの」

「うーん、乙女とはよくわからんな。巻ちゃん天狗の薬ちゃんと使ってるのか?」

「それは問題ないみたい」

「そっか。女の身には効果がないからな。」

「本当あの天狗は…」

 今、禄の知り合いの屋敷に(座敷牢に幽閉しているらしい)捕らえている天狗を思い出しながら頭を抑える潮美。

 そいつが竜の人生をめちゃくちゃにしたやつなのであるが、竜がそいつに惚れこんでいるのがいけない。

 本来なら退治する対象であるのだが、今は捕獲で済まし、封印の儀というものを施している最中らしい。

 その天狗が使っていたのが例の薬というわけだ。

「あれはなぁ、すごく気持ちよかったなぁ」

「えぇーそんなろくでもない思い出話聴きたくない…」

 なんでこんな男好きになっちゃったんだろ…と後悔する潮美であった。



   ****



 奏は大変苦しい状況に陥っていた。

(な、何故だ…何故…)

 布団の中で身を強張らせながら、奥歯を噛み締める。

 隣で巻の寝息が聞こえる。

 一夜の経験を元に、焦らなくてもゆっくりやっていこうと取り決め、とりあえず夫婦のように布団を一枚にして

 一緒に寝るだけ…もしくは身体中に接吻を施したりと巻が満足するまで愛撫をするようになったのだが…

 奏は自分の下半身の制御が出来ぬことに完全に焦り戸惑っていた。

 今までこんなことはなかったのだ、近頃そういう衝動はあったが自制でどうとでもなっていた。

 なっていたのに……。



 まるで下半身が別物のようだ…いや悪霊が取り付いているわけではないのは解っているのだが。



 奏は眉を顰めながら、うつ伏せになり勃起し始めているそれを握る。

「っ…ぁ…」

 息を吐く。

 声は出せない、巻を起こしたくないし見られたくもなかった。

 ゆるゆるとそれを刺激し始める。

 自分でするとやはり違う。

 巻だとこうで、ここはこうで…と過去の刺激を思い返してしまう。

「ッ!!」

 そのイメージを振り払おうと頭を振る。

 巻を求めている。自分は巻を求めているのだ…そう自覚すると恥ずかしさに心臓が止まりそうになる。

(なんと浅ましい…!)

 自分がここまで堕ちてしまっているとは思わなかった。

 ただ巻に対して肉欲を求めているのかと…。

 ただ、愛したい。触れ合いたい、ずっと触れていたい。

 暗闇の中だというのに目の前がぐるりぐるりと回るような感覚がする。

 浅ましい自分を恥じながら、奏は自慰をする手を止められなかった。



    ****



 巻は悩んでいた。

 起きるべきか、起きざるべきか。

 気づいたのは数日前、奏の呻くような声にふと目が覚めて、何事かと振り返れば



 月の明かりで見えた彼の表情―――



 思わずそのまま寝た振りをして一夜を過ごしてしまったが…

 今晩も、彼の擦れた声が聞こえる。

(あの薬以降…触ってあげてないからかしら…こっちばかり気持ちよくされてるし…)

 しかし触ろうとする前にイかされてしまうのだ。

(ん?)

 そっと肩をつかまれ、引き寄せられる。

 そして唇に柔らかい感触が押し当てられる。

 奏の唇だと、思った瞬間巻の身体が熱くなる。

 しかし目を開ける勇気が無い。

 奏があの、熱に犯された淫靡な表情を浮かべていたらどうしようかという思いのせいだ。

 舌が、唇をなぞる。

 荒く熱い吐息が掛かる。

 舌はぬるぬると濡れていたが不快感は感じなかった。

 巻のぎゅっと閉じられた唇をこじ開けるように舌が―――

 奏の舌が巻の歯をなぞる…

(くち、あけたら…だめ…だめぇ…)

 巻はぎゅっと寝巻きの裾を握り締める。

 しかし巻の意に反して、奏は巻の顎をすくいあげて角度を変えてくる。

「んっ…う…ちゅ…っ…」

 貪るような口付け。

 潜り込んできた舌が、絡んできたかと思えばそのまま吸い上げてくる。

「ッ…!ッ…!!!!」

 巻はビクッビクッと身体を震え上がらせる。

「はぁ…巻…まき…」

 奏の求める声。

 そしておもむろに胸元に手をかけられ、そのまま力任せに肌蹴させられる。

 露になった、巻のまだ幼い乳房に奏はしゃぶりつく。

「~~~~!!!」

 巻は口を抑えて声を堪える。

(や、やだ…そんな強く歯、立てて…やぁ…吸わないでぇ…)

「はぁ…はぁ…ま、き…」

 奏は巻の脚を広げ、とろとろと蜜が溢れるそこへ顔を埋め

 ぢゅるぢゅると音を立てながら吸い始める。

「ッ―――!!!!」

 ぎゅうっと脚を閉じようと力が入るが、奏の腕力に敵うわけもなくただ脚が戦慄くように震えるだけであった。

 吸えば吸うほど甘い蜜は溢れる量を増やしていく。

 巻は思わず奏に視線を向ける。

 ちらりと見える奏の表情…巻を求め、熱に犯された目―――

「…」

 愛しそうに奏の左手が巻の柔らかい腹を撫で始める。

 暖かい手―――それが心地いい。

「かなで、さぁん…」

 泣きそうな声を上げてしまう。

「ま…き…!?」

 正気に戻ったかのような表情で顔を上げる奏。

「わ、私は何を…」

「や、やめないでください…!」

「!?」

「や、やめ…ないで…」

 ひっく、ひっく、と泣き始めてしまう。

「やめられたら…つらいよぅ…」

 巻はもじもじと脚を擦り合わせ始める。

「お、おねがいです奏さん…続けてください…わたし、おかしくなっちゃう…

 こわい…こわいよぅ…かなでさん…」

 奏の理性はこのときふつりと切れた。



   ****



 奏は巻の陰裂に完全に怒張しているそれを押し当て、擦りつけるように腰を振るう。

「あぁぁぁっ!」

 陰核を押しつぶされるようなカタチで擦りあげていくその刺激に巻は声を荒げるしかできなかった。

 腰が逃げると奏はより深く、と言わんばかりに引き寄せ

 押しのけようと力が腕に篭ろうとも、子供の力でどうにかできる相手でもない。

 ほとんど巻の蜜で奏のそれはぬめり、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。

「巻…」

「え?あ、なにっ…」

 ひっくり返されるのかと思うほどに腰を持ち上げられ、そしてそのまま陰部に先端を押し当てられて

 飲み込めと言わんばかりに熱を注ぎ込まれる。

「あついぃ!かなでさんの、あついのぉぉ!!!」

 飲みきれない熱は巻の腹や尻を伝い落ちていく。

「少し、飲めたか?」

「ひゃうぅぅ!!!」

 もぐりこむ奏の指が陰部をかき回す。

「やぁぁ…かき混ぜちゃいやぁぁ…」 

 はふはふと息を吐きながら、巻は奏を求めるように手を伸ばし腕を掴むが、拒むわけでもなく

 そのままぐいぐいと腰を振って掴んだ腕にこすりつけるような仕草をする。

「やぁ、いやなのに、いやなのにぃ・・・きもちよすぎるの怖いのにぃ・・・」

「巻…もっと、したい…すまない」

「いいよ、奏さん…きて、きて…」

 解された菊座に、抉るように奏のそれが突き上げてくる。

 巻は悲鳴のような嬌声をあげ小さな身を捩る。

「おしり、きもちいですかっ…かなでさん、わたしのっ…」

「あぁ、巻…」

 奏は巻を抱きしめる。

「あ、あっ!かなでさんのぉ…!!わたしの、なかで…大きくなってるぅ…!!」

 きゅうきゅうと締め付けられる感覚が堪らない奏は、もっとと言わんばかりに腰を動かす。

「あぁぁぁ…っ!かなでさんっ…!!かなでさん!!!」

 巻は奏の頭を掴むとその唇をついばむ様に甘噛みし始める。

 それに答えるように奏は口を塞ぎ、舌を絡ませる。

「んぅ…んんっ…」

 ちゅう…と巻は吸い寄せるように、奏の舌を、唾液を味わう。

 ずくり、と巻の中で脈打つのが解った。

「あ、あつぃのくる・・・?」

 きゅううっと締め上げる巻。

 奏は呻きながら巻の中に熱を吐き出すと、巻は嬉しそうに声を上げ身もだえる。

「かなでさんの、あついのがいっぱい!いっぱいでてるぅぅ!!!」

 仰け反ると結合部分からごぽごぽと音を立てながら白濁が溢れ

 巻もイってしまったようで潮を吹いていた。

「奏…さん…きもちいいよぉ…奏さん…」

 巻は奏の胸元に顔を埋めながら泣き始める。

「…」

 奏はただただ小さな巻を抱きしめることしかできなかった。



   ****



 奏と巻は気まずい表情で、目の前の膳を見つめていた。

「冷めるよ?」

 禄が声をかける。

「…禄、あの…また…声、うるさかった…?」

「まだ夫婦じゃないけど、二人は好きあってるんだからいいじゃない?」

「ごめん…禄がいるのに、遠慮なく」

 ただただ二人は恥ずかしかった。

 あの後もっともっととお互い求め合ってしまい、同居人のことをすっかり忘れていたのだ。

 そしてこうやって寝過ごした二人に優しく微笑みご飯まで用意してくれている…。

 なんて出来た兄なのか…。

「そんなに気になるなら僕しばらくあの子の家に行ってようか?」

「そこまでしなくても!…ごめんね禄」

「気にしなくていいのになぁ。僕別に睡眠妨害されてるわけでもないし。

 それか近くの家に引っ越す?ちょっと不便かな」

「うーん…わたしが大人になったら出るわ。さすがに子供ができたあととか考えると」

「そう?でも巻ちゃんまだ初潮きてないよね?先のこと見すぎじゃない?」

「今年で12だから、そろそろだとは思うのよ。」

「……!?」

 奏がものすごい形相で二人を見る。

「どうしたの?」

「…え、12?」

「そうだけど?」

「………」

 奏は頭を抱えて蹲ってしまう。

「もう、切り落とすしか」

「なに!?なにを!!!!?ちょっと待って奏さん!!!早まってはいけないわ!!!」

「12歳でも立派な女性だと思うけどなー」

「そうよね」

「あまりにも大人びているから、成長が芳しくないだけかと思っていた…」

「失礼ね!そのうち成長するわよ!!!」

「そこの話じゃないと思うけどね…」

 胸を押さえる巻につっこむ禄。

「とにかく奏さんは自分に厳しすぎるわ…。厳しすぎるからあんなことになっちゃうのよ…。

 体と心が噛み合ってないの。素直に、その…シたかったらしたいって…いってくれれば、わたしだって…」

 もごもご言いながら巻は顔を赤らめる。

「多分だけど、正法院さんの心がまだ安定してないんだろうね。

 心を殺して生きてきた分の反動があるんだよ。ゆっくり解きほぐしていかないと行き過ぎたら堕ちるよ」

「…修行が足りない」

 項垂れたままの奏。

「修行関係ないと思うけど滝行禁止ね…。」
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