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これは正史ではなくIFルート
 初めて見たのは布団の中で苦しんでいる姿だった。
 あちこち噛まれたあとと、爪のようなもので引き裂かれたような酷い傷が痛々しかった。
 そのほかにも古い傷が体のあちこちに残っていて、彼は一人で戦って、傷ついてきたのだろうと思った。
 そして治療をしていくうちに、何かしら惹かれるものがあったのか…
 それとも不器用な彼がほっとけなかっただけなのかもしれない。
 好きだと意識し始めたのは全ての怪事件が終わって平和になったある日から…
 そして彼もまんざらでもないような素振り。
 しかし彼は
 とてつもなく
 不器用だった。
 感情表現が
   ****
「もーーーここは攻めるしかありませんわ!巻さま!!!」
 酒を一気に飲み干し、杯をダンッと卓にたたきつけるように置く。
 意気込むのは巻の知り合いの海女である潮美。
 その横で潮美と共に飲んでいたが完全に潰れている若い男、竜が寝息を立てている。
「あのステキな殿方は貴女を好いているのでしょう?」
「た、多分ね…」
「しかし反応がない、と」
「と、いうかその…あのね、潮美」
 巻は少し暗い表情になる。
「遠慮とかじゃなくて、避けてるような感じがするの。
 禄から色々と彼のことは聞いてるから…多分、なんだけど…人を好きになること避けてると思うんだ」
「まぁなんてこと」
「だから、その…どう接していいのやら…」
「安心してください。巻さま。所詮相手は男。そう、男」
「うん?」
 潮美はぎゅっと巻の手を握る。
「天狗にはその気にさせる薬があると聞きました」
「うん??????」
 巻は要領を得ぬまま、天狗という単語で竜へ視線を向けつつ首をかしげた。
    ****
「…それで天狗の薬を持ってきた、と?」
「そう。飲んでくれる?」
「……」
 奏は小瓶を左手で持ち上げ、目を細めながら睨む。
 妖気はない。もしあったとしても今触れたことで浄化されているはずだ。
 普通の薬だろう。
 巻が考えているのは、要は薬の力で奏の理性を薄めて円滑な夜の営みをしようと、そういうことだろう。
 自分自身はそこまでしなくても、と思うがこれ以上拒めば彼女も恥ずかしいだろう。
 彼女には…色々と…恥ずかしい目にあわせてしまっているし…。
 奏は蓋を開いて薬を飲み干す。
 少々苦味はあるが、美味しいと感じてしまうモノだった。
「が、がんばるわ…色々わたしも勉強してるんだから…!」
「あ、あぁ…」
 奏は巻にされるがまま(というか好きなように)袴を脱がされ下着もしゅるりと奪われて―――
 ぺちゃぺちゃと、塗り薬らしい別の薬を局部に掛けられる。
 萎えている状態のそれを巻は掴み、その薬を丹念に馴染ませ始める。
 手当てのときとは違う、丁寧な手の動きに奏のなかでゾクリとしたものがこみ上げる。
 巻は「天狗の薬だけど、直ぐ効かないんだねー」なんて呟きながらゆるゆると撫でる。
「ッ……」
 奏は身体を硬直させながら、刺激に耐えていた。
 油断するともう勃起してしまいそうなのだ。
 しかしそんな、妖怪の作った薬に瞬時に屈する自分が許せなかった。
「奏さん、あ~んして」
「え?」
 ぽかんとする奏の口にもう一本、薬の中身を流し込む巻。
「体大きいから効きにくいのかも」
 なんていう。
 悪意のない笑顔で。
 効いている、すこぶる効いているのだ。
 仏頂面なだけで、声に出していないだけで。
 奏は泣きそうではあったが、その顔はただ少し眉が顰められるだけであった。
   *****
「っ…は、…ッぐ………ンッ…」
 布団の上で、奏は横になり…その服は奏自身が身悶えるために肌蹴、情けなくも巻に向けて脚を広げているその姿は
 他者を煽るものがある。
 声を抑えようと手で口を抑えて、その眼は涙ぐんでしまっていた。
「効いて、きてるね…奏さん…ほら見てさっきよりもこんなに大きく」 
「ぁ…ぁぁ……」
 思わず巻に言われるがまま視線を下半身に向けてしまい、奏は震える。
 熱に当てられているのか、少々ほわほわとした表情の巻が嬉しそうに自分のイチモツを濡れた手で擦っているのだ。
 もう薬のせいで濡れているわけではない、とろとろと先端から溢れる汁のせいだ。
「っあ、ぅ…ぅぅ…」
 奏は顔を真っ赤にさせて身悶えるように思わず顔を横へ向けてしまう。
「あー、恥ずかしいんでしょ?わたしだって恥ずかしいんですよ?
 ほら、奏さん恥ずかしがっちゃダメ」
「ひぃっ!!」
 巻が指先でその先端をぐりぐりと弄るので、その突然の強い刺激に奏は悲鳴をあげてしまう。
「あ、可愛いですよ奏さん。今の声とってもいいと思います!
 ほら、もっと声を出してみてください。私と二人っきりなんですから恥ずかしいことなんてないですよ今更!」
 指の腹は尿道口のあたりをぐりぐりと、擦り始める。
「ひっ…や、巻ぃ…いけ、ないっ…我慢、できな…これ以上、そんなことッ…
 あ、あっ…!我慢、できなぁ…」
「だから、我慢しないでって言ってるんです」
「あ…」
 巻の手が離れ、奏の腰が揺らぐ。
 次に巻の手が触れるのは胸元だった。
「まだ薬ありますから…全身に塗ってあげますよ」
 懐から出してくる小瓶の中身をぶちまける。
 そして奏に馬乗りになったまま、巻のまだ幼い手が胸を、腹を這う。
「っうぅぅぅぅ…!!!」
 仰け反りながらも歯を食いしばって声を、快楽を求めようとする衝動を抑える。
 もうだめだ、身体がもう限界を訴えて、熱で犯された頭は理性を手放しかけている。
 巻の手が這うだけで自分は興奮している、薬のせいだけではなく、自分自身嬉しいのだ。
 彼女を抱きしめたい衝動を必死に抑える。
 あぁ、もう何も考えたくない。
 巻にこの身を委ねたい。この心地よさに甘えたい。
「はっ…あ…っ…」
 既に奏の表情は蕩け始めて、口端からだらしなく唾液を溢れさせ、その目は焦点を合わせようとしない。
 そんな破廉恥極まりない表情を巻はかわいいと思った。
「気持ちいいですか?」
 耳元で囁く。
「き、もち…いい…」
 唇を震わせながら声を漏らす。
「私のこと、どうですか…?好き、ですか?」
「……」
「奏さん」
 巻は奏の顔に手を添えて口付けを繰り返し始める。
「奏さんが…土蜘蛛の女性を想っていたのは、知ってます…
 だからこそ、もう恋もしないんだっていう覚悟、わかります…でも、そんなの…奏さん辛くないですか?
 奏さんは、人間なのに…誰かを好きになっても、いいじゃないですか…皆が皆…鬼になるわけじゃないです。
 そんなに奏さんは、弱い人ですか?」
「……」
 奏の目はまっすぐ巻を見ていた。
 涙でいっぱいの巻の顔を。
「ま…き…」
 奏は巻を抱き寄せて口付けをする。
 巻の腕が回され、より深く、深く舌を絡ませた。
   ****
「はぁ、はぁ…やっぱり、無理、ですね…」
「…」
 熟したかのようにとろとろになっている巻のそこはしかし、奏を受け入れられなかった。
「え!?あの、かなで、さ…!?」
 不意に奏が巻の腰を掴んでぐりぐりと強く押し当て始めて驚く。
「や、やぁっ!?だめ、あっはいら、ないっ!無理、です、無理…!!!!」
 熱いものを感じた。
 巻のその部分一帯が白濁に汚れる。
「あ、あつぃです…ひゃう!?」
 奏の濡れた指が巻の尻の間を這う。
「あ、あ!?あぁぁ!!!だめ、かなでさん、だめ!そんなところ、さわらないでっ…!!!」
 ぬぷり、と菊座に指が入り込む。
 奏の表情はいつもと違っていた、何かを求めるかのような、無ではない表情。
「いや、かなで、さんっ…そこやだぁ…!!!」
 軽々とうつ伏せにひっくり返され、腰を突き上げるような態勢になってしまう巻。
 再び前と同じく入念に丹念に解されてしまう。
「あ、あぁぁっ!!!?はい、てる、うそ、やだぁ…!!!」
 一度出して少し萎えているせいもあるかもしれない。
 しかしキツい巻の中をほぼ捻じ込むようにして入ってくる奏のそれは酷い圧迫感があった。
「あぁぁっ!!!やだぁぁ」
 泣きながら巻は逃げるように手足で宙を掻く。
「巻…」
 巻を抱き上げ、脚を掴み広げ揺さぶり始める。
 体格さが大人と子供である、巻は軽々と上下に揺さぶられ始める。
「おしり、やだっかなでさんやだよぉ…!!!!」
「まき…まき…」
「ひぅぅ…!!!!!」
 ガッチリと抱きしめられ、再び熱いものが、今度は巻の中に放たれる。
「あつい…あるいよぉ、かなでさんのあつい…」
 巻も慣れてきたのか、泣きながらも身体は反応していた。
「んぅっんん…」
 奏の大きな手が口を覆う。指が口の中に潜り込んでくるので巻は懸命にしゃぶるように舐め始めた。
 そして巻のほうも、前が切なくて仕方がなく、無意識に掴んだ奏のもう片方の手を股の間へと押し当てる。
 巻の望んでいることを本能が察しているのか、指で中をかき混ぜるかのように、少々乱暴に弄り始めた。
「ッ…う、んぅぅぅぅ!!!!!」
 巻は絶頂を向かえ、その後を追うように奏も果てた。
  ****
「…はっ」
 目覚める奏。
 横で巻が寝息を立てている。
 二人とも何も身にまとっておらず、そのままの状態であった。
 変な汗が出てくる。
 自分があんな…あのように…この少女の身体を貪り尽くそうとしたのかと。
 少女の優しさに甘えて、自分は―――
「・・・あれ?」
 目覚める巻。
 身体は綺麗に拭かれ、寝巻きもきちんと直っているし布団の中に居た。
 しかし奏の姿を見ない。
 襖を開くと丁度兄の禄が通りかかるところであった。
「おはよう巻ちゃん」
「奏さんは?」
「正法院さんなら裏の山に行ったけど。呼んでくるよ、巻ちゃんは寝てていいよ。
 あ、ほら枕元にお水とか置いてるでしょ?正法院さん用意してたからゆっくりしてて」
「うっ…」
 顔を赤くする巻。
「あの、禄…夜、声とか…うるさかった…?」
「…んー、まぁ、ほどほどにね。僕は気にならないけど」
「ご、ごめん…」
「気にしないで。じゃあ呼んでくるね」
 奏はいつもの場所で滝に打たれていた。
「正法院さーん!もう上がりましょう~!!!」
 声をかける禄。
「顔色よくないですよ、真っ青です」
「……」
 奏は禄を見るが、酷い顔だ。泣きそうな顔だ。
「邪念が…消えない…」
「邪念て…」
 禄は呆れながらバシャバシャとつめたい水の中に入っていく。
「邪念とは巻に対しての俗にいうと、「いかがわしい感情」ですか?」
「…あぁ」
 死にそうな声でいう。
 実際死にそうなのかもしれないが。
「それは邪念ではありません。あなた、僧じゃないんだから色んな感情もっててもいいでしょう。
 僧の生まれだったなら謝りますけど。あ、でも家筋は仏教の方ですかね?」
 禄は奏の腕を掴む。「わぁ冷たい」なんて呟きながら手をひっぱった。
「帰りましょう。巻を愛してやってください」
「愛…」
「お願いします、あなたのためにもなるでしょう」
「……」
 脳裏に浮かぶのは、あの美しい娘。
 覚悟を決めて、愛するものの後を追った気高き土蜘蛛の神子。
 震える手を禄は強く握り締めてくれる。
「あなたは間違っていません。あなたは人間として生きるのですから」
「神童…」
 頬に伝うのは、滴り落ちる滝の水か、自分の涙か。
 ただ暖かく感じた。
  
 
 
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