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さたかな
屋敷の台所は沙汰の領域だ。
たまに化け蟹が掃除をさせろと押し入るが、それでも一応は沙汰の了解を得ている。
屋敷に見合った広い台所は血と脂でどろどろに汚れている。
そこへ拘束された奏っは引きずり込まれていた。
汚れた床に転がされ、『何か』の腐敗臭に吐き気を起こすがグっと堪える。
グチャグチャと、嫌な音がする。
蹲った沙汰が内臓を貪っている音だ。
台所に携わるモノの特権だとかでナマの内臓を食べている。
ここの妖怪たちは調理した肉を好むのに逆転してしまっているのが皮肉にも思えた。
「はぁ…お前を食べれればいいのに」
沙汰が這いずって奏に近づく。
「余すところ無く調理してやるよ…そしてあのケダモノたちの餌にしてやる…
みこさまの口には一切入れさせん…入れさせない…畜生」
沙汰の爪が奏の着物を掴んで切り裂く。
「貴様はぁ…みこさまに血をやっているだろう」
「……」
奏は無言のままだ。
何か言ったところで、目の前の鬼は話を聞いていないのだから。
現に沙汰の目は鬼の狂気に満ちて理性を感じさせない。
「貴様を…」
沙汰の手が首にかかり、そのまま押さえつけられる。
「引き裂ければ、どんなにいいか…!!!早く死んでしまえばいいのに…!!!!」
◇◇◇◇
「っ…あ、あっあぁ…!!」
奏は身を仰け反らせたまま、沙汰の上で悲鳴にならぬ声を漏らす。
沙汰にその身を貫かれ、何度も突き上げられてその苦痛に喘いでいた。
繋がる部分からは赤い血が流れている。
沙汰は笑いながら血肉を貪っている。
いつも腐りかけの死体なのに、今日は嫌に生々しい。
こういう場合は沙汰自身が狩って来たものだろう。
狩り取った腕を掲げるようにして握りつぶし、その滴る血を啜る様を目の前で見せ付けられてしまう。
「オレが殺せなくて悔しいか?オレも悔しい…貴様を殺せなくて」
「んぅっ…うご、くなっ…痛ッ…」
ガクガク震える奏の肩を掴んで、沙汰は思いっきりまだ入りきっていない部分を押し込むように腰を動かした。
ぎゃあ、と奏が悲鳴を上げる。
ゴリ、という嫌な音がした気がする。
「痛いか?クク…大丈夫、妖虫が治すさ…あとでな。
お前を痛めつけながら飯を食うのは気分がいいな」
また笑う。
そして奏の胸元を軽く爪で切り裂き、その溢れる血を舐め始めた。
「ひっ…く、ぅぅ……」
奏は白目を剥きかけながら苦痛に顔を歪ませる。
みこのときは極上の快楽を与え続けられるが、沙汰の場合は違う。
純粋な苦痛しかそこにはない。
「あぁ、生き血は美味いな」
沙汰の血でベトベトに汚れた手が、奏の頬を撫でる。
「お前でこれなんだから、あの小娘はもっと美味かろうな」
「や、めろっ…!」
「クク…なら頑張れよ。小娘の分まで」
「うぐ!」
べちゃ!という嫌な音と背中の感触に奏は震える。
バラバラに解体された死体たちの上へ叩きつけられたと悟る。
「お前も食べてみればどうだ?気に入るかもしれんぞ」
「ぐ!!?」
沙汰が笑いながら死体から内臓を掴んで奏の口元へ押し付ける。
そうしながら腰を動かされ始めて奏は涙を零して悲鳴にならぬ声を上げるしかなかった。
あまりに激しかったために縄が緩んだのか、縛られていたはずの残った奏の腕が沙汰の腕を掴むがまったく抵抗にもならなかった。
たまらず奏は嘔吐する。
胃は空っぽのため、胃液が出るばかりだが沙汰はおかしそうにゲラゲラ笑い、奏は胃がひっくりかえるような感覚を味わいながら咽て咳き込む。
沙汰は腸を引きずり出してくると、それを奏の口へ噛ませて頭の後ろで縛る。
猿轡替わりであろうが、その噛みしめたときの食感がたまらなく気持ち悪い。
「っひ、ぅ…ひっ…」
「この残った腕邪魔だなぁ?」
奏の震える腕を軽々と掴みながら沙汰はいう。
「指を一本ずつ齧り取るのもいいかもしれない」
「ひっ…」
沙汰の舌が指と指の間を這う。
「今度みこさまにお願いしよう、指ぐらいならいいだろう無くなっても」
*****
化け蟹が台所に入るとその光景に呆れた。
散らかすだけ散らかして後は片付けておけとは一体どういう神経をしているのか。
臓物の布団の上で、血肉まみれになって失神している奏を化け蟹は引き上げる。
なんという勿体無いことを。食べ物を粗末にするだなんて…という気持ちがある。
沙汰はというと、虚ろな表情で火車が運んできた死体の解体を行っていた。
さっきから淡々と包丁を振り降ろしているので化け蟹は声をかけずに奏を引きずって外にでる。
「井戸まで運ぶのを手伝おう」
「あぁ牛鬼、助かる」
ひょいっと牛鬼が奏を掴み上げる。
「この男も囚われて大変なものだな」
「そうか?飼ってるようなものだろう?」
「…そうだな」
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