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まきかな
 奏の切なげな声を聞いてしまうと、巻はどうしても体が火照り始めてしまう。

 土蜘蛛の巣から出された奏は、巻とは違う部屋を与えられた。

 そこは自分から出ることは出来ず、選ばれた者しか行き来できない、巻と似たような制限が設けられている。

 許可を得ている巻は食事を持ってそこへ入るのだ。

 しかし、そこで奏の痴態を見てしまうと身体がおかしくなってしまう。

「ッ…フー…ッ…フぅーッ……!!」

 奏はうつ伏せになってギリギリと布団を噛み締め、声を抑えながらガクガクと高く上げた腰を震わせていた。

 普段の無欲を貫こうとする彼が、土蜘蛛の毒に負けてこうやって顔を赤らめ、

 厭らしい声を上げまいとしながらも脚を擦り合わせて身悶えるその姿は劣情を煽り立てる。

 今日は巻が来る前に神子に遊ばれたのか、それとも沙汰がやったのか…

 彼の残っている片腕が後ろ手に身体へ縛り付けられていた。

 手で弄ることを許されていない彼は、必死に耐えようとしているのだ。

 ぴちぴちと、軽い音もする。

 恐らく妖虫の尻尾がはねているのだろう。

「アッァッ…!やめぇ…やめてぇ…あっぁぁ…イケないからぁぁ…!」

 涙を流しながら奏は虫に訴える。

 どんなに身悶えてもイクことが出来ぬ彼にとってこの快楽は拷問でしかない。

「…奏、さん」

「ひっ…」

 巻の声に奏は悲鳴を上げて振り返る。

 情欲にまみれて哀願して泣きじゃくっていた表情は一転し、まるで怒られるのを恐れているかのような表情になる。

「まき…まきぃ…たすけて、まきぃ…」

 再び涙を零しながら情欲にまみれはじめる。

 本来の奏が表に出たと思えば、毒によって狂っている奏がすぐ外に現れる。

 巻は一瞬現れる本来の奏が好きだった。

 あの叱れるのに怯える子のような表情がたまらなく愛しい…

「奏さん、ご飯食べましょう」

「ご、はん…」

「そうです。それ触ってあげたら止まらなくなりますからまずはご飯です。

 ご飯は食べれば直ぐ終わりますから、ね?」

 いいながら巻は奏を宥める。

「食べおわったら触ってあげますから」

「うっ…ぅぅ…」

「ほら、お口を開いて…?」

 匙で粥を掬い、巻は奏の口元へもっていく。

「はぁっ…ぁぁ…」

 口を開く奏。

 先ほどまで喘ぎを我慢してきたせいなのか、ねちゃりと糸が引く。

 伸ばす舌も艶かしい。

「んっん…」

 ひどくゆっくりとした動作で、飲み込む。

「ま、きぃ…」

「もう、奏さん…」

 奏の長くて大きい脚が、巻に絡み、股間を巻の脚へこすりつけてくる。

「はっ…はぁ、はっ…」

「ダメです、擦りつけて気持ちよくなるのズルいです」

「がまん、できないっ我慢ッ…我慢ッッ…!!」

 巻に乗りかかって、カクカクと腰を上下に揺らし始める。

「あっ、あっ…ぁっ…」

 さっきの切なげな声ではなく、艶っぽい声で鳴き始める奏。

「もー、ダメ!わたしのいうこと聞いてください!」

 グイっと奏を押しのけるのと同時に奏の小さな悲鳴。

「ひっ…みこぉ…やだぁ…ゆるして、みこぉ…」

 一瞬で、奏は梁に掛けられた荒縄に吊り上げられる形になっていた。

 膝をつく形で吊り上げられており、それとは別に首にも縄が巻きついている。

 前へ…巻のもとへ行けば首が絞まってしまう。

「ほらー、ズルいことするから神子さんに怒られるんですよ」

「だって…辛い、くるしぃ…」

 泣き出す奏の頭を優しく撫でる。

「大丈夫ですから、ちゃんと気持ちよくします。

 ほら奏さん。このお茶碗一杯分を食べるだけなんですよ?直ぐ終わりますから

 ほら、お口、あーん」

「……」

 口を開く奏。

 もう既に諦めているのか、落ち着いてきたのか…虚ろな目で食べ始める。

(ふふ、奏さん可愛いな…匙までしゃぶって可愛い…)

「奏さん、お茶碗に残ったご飯粒が上手く取れないので舐めてもらってもいいですか?」

「……」

 素直に奏は犬のように舌を伸ばし始める。

(あぁ、奏さん可愛い…犬のよう…犬みたい…可愛い…)

「綺麗に食べれましたね、ほらすぐ終わった♪」

「んぅ…」

 口づけを交わし、二人は舌を絡めあってお互いの味を味わう。

「んふ、んぅっ…ちゅっ…はっ…んぅ…」

 唾液を流し込みながら巻は奏の肌蹴た胸に手を伸ばし、くにくにと乳首を転がし始める。

「うんっ!!?ぅぅぅ…!!!!」

 ビクビクと身体を震えさせ目を開く奏。

 しかし巻は手を止めない、接吻もやめない。

 奏は呻きながら射精する。

「わぁ、すごい奏さん。直接触らなくてもイケちゃうようになりましたね」

「ひィっ…やめてぇ、ビリビリするぅぅ…!そこやらぁ…!!」

 仰け反りながら奏は訴える。

「うふふ、舌が回ってないですよ奏さん。しっかりしてください。

 ここ弄られて気持ちイイんですよね?この前ここいっぱい神子さんに可愛がられてましたもんね?」

「み、こぉ…いじって、毒が、毒…」

「あはは、ぷっくりと赤く可愛らしくなってきましたよ~。」

「いやぁぁ……」

 泣きながら奏は身を捩る。

「まきぃ、それ、いじょ…こねなひで…あたまおかしくなりゅぅぅ…」

 はぁっ!はぁっ!と舌と唾液を垂らしながら訴える。

「もうおかしくなってるかも…。舌回ってないですもん…」

「らって…らってぇ…ひぁぁ…!!」

「神子さんの毒は恐ろしいですね」

 微笑みながら巻は手を離す。

「奏さん、可愛くて好き…」

 ぎゅう、と奏を抱きしめる。

「あんなに素敵だった奏さんが…こうなっちゃうんだもん、神子さんは怖い人ですねー?」

「みこ…みこ…」

 ぼろぼろと涙を零し始める奏。

「ゆるして、みこ…ゆるして…」

「奏さんはどうして神子さんに謝るんですか?何もしてないのに…むしろされてる側ですよ」




    *****




 幼い頃にお堂の前に捨てられていた。

 それを拾い上げてくれたのがそこの寺の住職であり、育ての親だった。

 奏は一切泣くこともなかった。

『良いか奏、妖を討つのに心は要らぬ。

 心こそが妖が巣食う根源だと思え』

「はい、義父上。」

 ぎゅっと、左手を握り締める。

 この手で全ての邪悪を討つのだ。

 そしてそれは妖の解放にも繋がる。

 この世に縛られた存在を、解放する。ただそれだけの手―――


「わたしを救ってくださるの?」

 甘い香りがする。

 長い髪がはらり、と掛かってきたのを覚えている。

「お侍さま…」

 切なげに、求めるように、願うような…その声。

「救って―――」



 身体が動かない。

 声が出ない。

 女が蜘蛛になる。

 蜘蛛の、脚が、腹に突き刺さる。

 血ではなく、子蜘蛛が溢れる




「ひぃっ…!」

「あ、気づかれました?奏さん」

 巻の顔が目の前にあった。

「よかった、その顔は正気の顔ですね。

 うなされていましたよ」

 巻の手が、汗の流れる額に触れる。

「あ…裸!?」

 思わず身を起こす奏。

 お互いの姿に顔を赤らめるが、巻はもじもじしながら見上げる。

「いつも裸の付き合いしてるのに、改められると恥ずかしいです…」

「す、すまん…そ…そう、だったな…」

 自分の痴態と奇行を思いだして死にそうになる。

 どうして狂ってるときの記憶もあるのか。

「そういえば虫は…?」

 いつもの異物感がない。

「あそこに閉じ込めました」

 指をさす、その先にはひっくりかえったお茶碗。

 重石が乗せられていてカタカタ揺れている。

「あんなんでいいんだ…」

「まぁ虫を体内から出すと奏さんがこの部屋から出れなくなっちゃうのでどうしようもないんですけど…

 たまには正気に戻らないと本当に奏さんの頭がおかしくなっちゃうし。」

「ま、まぁ…そうだな…」

「今日はかなりキてましたけど、酷いことされてたんですか?」

「う…うん…神子に、ちょっと…」

「ずるーい!わたしだって奏さんと気持ちよくなりたいのに」

 巻は奏に抱きつく。

 育っていないその薄い胸はふにふにと柔らかく、突起部分は少し硬くなっていた。

 思わず目がいってしまう。

「奏さんのえっち」

「うっ…」

「ふふふ、神子さんとどっちが好きです?」

「え!?」

 巻は意地悪そうな笑みを浮かべて奏の手を胸に押し当てる。

「揉むと大きくなるとか、神子さん言ってましたけど…もし大きいのがお好みでしたら大きくしてくださいね?」

「う、うぅ…」

 真っ赤になって俯く奏。

 ただの少女が男を知っただけでここまでになってしまうという罪悪感と、巻の可愛さに興奮している自分に落ち込む。

『小娘、奏さま…湯の用意が出来ております、そこから出てくるように』

 神子の声が響く。

「ううーむ邪魔が入る…しかたないですけど」

 巻は重石をどかし、茶碗の中の虫を捕まえる。

「奏さん、ごめんなさい」

「…あの、いれるだけだぞ、本当に入れるだけで頼む」

「はぁい」

 ニコっと微笑む巻が怖い。

 巻の前で脚を開く奏。

 ググ…と虫がもぐりこみ始める。

「ッあ…あぁ…」

「あの…奏さん」

「…?」

「奏さんが気持ちよくなるところって、ここですか?」

「ひゃう!!!?」

 ごりっと虫を引っ張られて声を上げる。

「あ、やっぱり。ここ奏さんの前立腺なんですね~。

 あ、前立腺って知ってます?蘭の本に載ってたんですけど―――」

「ひぁっ…あっ…あぅぅ…!!!!」

「とまぁ、神子さんがよく言ってる「奏さまの大好きなところ」というのはそこで…。

 あ、奏さんあんだけだしたのにまたお汁垂らしてる」

「…ひっ…ひぃ…」

 腕で顔を隠しながら奏は息を荒げる。

 巻の指がつつ…っと奏の太ももを撫で、虫がもぞもぞと蠢く。

「はーい、全部入りましたー。がんばりましたね奏さん」

 巻に撫でられる頭が心地よい。

「まき…すきぃ…」

 トロンとした顔で奏は呟きながら、巻を引き寄せ口づけをする。

(…あぁ、どっちの奏さんも愛しく思ってしまう……ごめんなさい奏さん)

 巻は胸が締め付けられる思いをしながらも、奏の口づけに答えた。
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