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かなさた
目の前には邪悪な笑みを浮かべる沙汰。
いつもの小豆色の着物ではなく、装飾が施された白装束。
後ろには浮遊している後輪がゆっくりと回っている。
奏は沙汰の空間に捕らわれたのだと悟った。
「今日は神子さまは屋敷にいらっしゃらない故、助けを求めても無意味だ」
「……」
「いつものように泣き叫んでみればいかが?」
ニコリ、と邪悪な笑みから作り笑いに顔を変える。
「今の私に抗う力はない…耐えるのみだ」
「あ、そう」
沙汰は興味なさげにいいながら無表情になる。
「お前を食い殺したいなぁ…あの時殺して食べてしまえばよかった…」
沙汰の手が伸びて、奏の脚に触れる。
ゆっくりと這い上がってその着物に隠れた白い脚を露出させていく。
ギリッ…
「うっ…」
沙汰の爪が、皮を薄く裂く。
血が滲む。
「あぁ、加減が、難しい…この姿で人間を触れたことがないんだ…」
「っ…ふ、ぅぅ…」
奏の様子が変わる。
顔が紅潮しはじめ、ぶるぶると身体を震えさせ始めている。
体内の妖虫が奏の恐怖に反応して蠢きだしたのだろう。
難儀な身体だ、と沙汰は笑う。
「あぁ、神子さまに…大切にされて…その上このように可愛がられて…!!!」
「ひぎぃぃ!!!」
いきなり妖虫を引きずり出されて奏は悲鳴を上げる。
妖虫の頭が入り口のところで引っかかって、そこで止まる。
虫は戻ろうと足掻く、うねる。
「あぁぁぁ!!!あぁぁ!!!!!」
奏は狂ったかと思えるほど叫びながら身を起こし、腕を伸ばし、沙汰のその掴んでいる手にしがみ付く。
「はっはっは、取られるのが嫌か?このまま抜かれたいんだろう?どっちだ?」
「うあ、あぁ…?」
奏も混乱しているのか、そのまま硬直してしまう。
恐らく沙汰への恐怖が淫液への反応を鈍感にさせたのかもしれない。
半分気が狂って、半分正気なのだ。
沙汰は喉の奥で笑いながら手から奏を引き離し、そのまま押さえ込む。
「こうやって、神子さまに可愛がられているだろう?」
ずぷずぷと虫を戻させ、そして一気に引き抜き虫の頭のところで止める、を繰り返す。
引き抜くたびに奏は目を見開いて絶叫する。
どろどろの淫液が畳を汚す。
「あぁ…オレもこうして神子さまに愛されたい…神子さま…神子さま…」
虚ろな目で呟きながら沙汰はガリガリと奏の露出した腹を引っかく。
「ひ、ぃっ…」
どろりと白濁を漏らしてしまう。
「なんだ、もうイクのか…。神子さまは何故お前を気に入っているのだ…」
沙汰は後輪を手に取り、環の中に手を突っ込んで何か引きずり出してくる。
妖虫だ。
「な、に…?」
奏は怯えの表情に顔をゆがめ、沙汰から逃げようとする。
「まだ入るだろう、人間の腸は長いのだ。よく見たから知っている」
「いやだ、いやっいやぁぁぁ!!!」
「アッハッハ!女みたいに泣き喚くなよ、食いたくなるだろう!」
沙汰は奏の中にどんどん虫を捻じ込んでいく。
「ひぃぃ…!」
中で虫が蠢いている。
膨らんだ腹がぼこぼこと動いている。
「ハハハ!気持ちいいだろう?なぁ!気持ちいいだろうがよ!」
笑いながら沙汰は奏の一物を足で踏む。
「ぎぁっ」
再び果てる。
「あぁ…神子さまに愛されたい…愛されてるなぁお前は…
オレはずっと神子さまを愛しているのに…みこさまはオレだけを見ていてくれない…
オレだけを見ていて欲しい…オレだけ…」
奏を抱き上げ、沙汰は遠い目をしたまま、呟く。
「神子さまは人形遊びが好きなんだなぁ…昔、そうだ、幼き頃に…神子さまの持ってた人形…
うらやましくて、うらやましくて…黙ってもっていったことがあるよ…
可愛がってあげたけど、千切れて綿が出てしまったから…どうしたっけ」
沙汰の紅い目が、奏を見る。
「首が、千切れ、て…腹も割れたんだ…」
「う、ぐっ…」
爪が首筋に赤い線を作る。
「どうしたっけ…?えぇっと…塩漬けにしたっけ?
人間の肉は美味しい」
まったく支離滅裂なことを喋っている。
「ふ、ふふ、神子さまの人形は可愛い」
沙汰は奏に擦り寄りながら頭を撫でる。
「可愛いから神子さまの気を引き付けるんだよな…だからバラバラにしたんだった。
そのあと神子さまと一緒に人形を探したの、幸せだった…
あぁ、この人形腕がない」
微笑みながらいう沙汰のその目は完全に今のこの世界を見ているようではなかった。
過去を幻視しているような―――
「かわいそうに、神子さまと一緒に探してあげるからね?」
「…」
奏はその目から、目を離す事ができなかった。
離せば何かされるような、酷い悪寒に襲われる。
ふと、沙汰の目がいつもの雰囲気に戻る。
「ふふ…なんだか興奮してしまった。血のせいか」
「っあ!」
先ほど裂かれた太ももの血をなめられて、再び奏の身体が火照り始める。
「お前だけ楽しんでいるのは嫌だな。オレを満足させてみろ」
沙汰は奏の頭を掴んで己の股間へ持っていく。
「な、に…あっぁぁ…」
目の前に鬼のそれを突きつけられて、奏は戦慄する。
「いれる趣味はない、残念だったな。しかし口淫ぐらいはやれ」
「んぐ…ぅ…」
ぐりっとこすり付けられ、奏は屈辱を抱きながら言われるとおりにし始める。
淫液のせいで頭の中がぼんやりする。
蠢きは慣れてしまった。
いまはただ快楽を追って意識を手放したい。
「神子さまにされてるんだろう?どうされてる?なぁ?してみろ」
「っ…」
(みこ…みこは…)
ぼんやりした頭で、神子を思い出す。
神子は、どうしていたか…神子は…
****
ぐったりと失神している奏の顔を掴み、沙汰は口を開かせる。
そしてその口の中に包丁の先端を入れ―――
『沙汰、今戻った。入っていいか?』
「少々お待ちください神子さま」
沙汰は包丁を置いて、奏から手を離す。
空間が戻るのと同時に沙汰の服装もいつものものになった。
スッ…と襖が開いて神子が入ってくる。
「…奏さまはどうした?」
包丁を見ずに神子は沙汰に問いかける。
「少し、遊んでしまいました。直ぐ片付けますので」
「うん。今度からは私の許可を得よ」
「はい」
「奏さまのどの部分が欲しかったの?」
「舌です。柔らかかったので欲しくなりました」
濁った目になって沙汰は神子に答える。
「そうか。しかしそれでは喋れなくなってしまうだろう。ダメだよ」
「あぁ、そうですか…あぁ、この人形腕が欠けてるんです。一緒に探しませんか?」
「うん、いいよ。でも先に片付けよう?
沙汰のお父様がまた怒るよ。散らかすなって」
「あぁ、怒られる…」
ふと、沙汰の目の濁りが消えていく。
「神子さま、この場は片付けますのでお休みください」
「うん。奏さまをきちんと布団に戻しておくれ」
「はい」
沙汰は奏を隣の部屋へ運んでいく。
「…沙汰さんめちゃくちゃ怖かったんですけど!」
巻が入ってくる。
「あの、あぁいうことってよくあるんですか?」
神子は小さく頷く。
「…いい子なのよ。いい子」
「えぇ…」
「いい子であろうと、しているから…。沙汰は何も、悪くない」
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