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バッドエンドルートの異空間です
「いつ成仏してくれるんですか」

「さぁー」

 巻の問いかけに神子は適当な返事をする。

「沙汰は何が好きだったかなー」

 なんていいながら料理の手を止めない。

 料理というものを神子がし始めて、数日。

 最初はあぶなっかしいものであったが、本来飲み込みの早いタイプだったせいでみるみる上達し、今では巻に劣らぬ腕前になった。

「…わたし、奏さんの好きなもの…しらない…過去のことも、あまり知らない…」

「よくまぁそれで正妻面してるな」

「貴女には沙汰さんがいるじゃない!!!!」

「……」

 神子はなんともいえない表情になる。

 神子が荒神の妻であることを知らない巻は首をかしげるばかりだ。

「沙汰は、幼馴染で…いい人。ずっと、いい人。好きだよ…。

 奏さまも…いい人ね」

「奏さんはそうですけど、あの沙汰さんがいい人っていうのはちょっとわかんないです…。

 怖いです。いつも私のこと嫌な目でみてます」

「私以外にはそんな感じだ、気にすることでもない」

「沙汰さんに、甘いですよねみこさん」

「…んー、かなぁ」

「そうですよ…、デレデレしてるくせに奏さんも欲しいなんてズルいですよ」

「…ズルいよ、妖怪だからね」

「…あの、みこさん。たまには奏さんを巣から出してあげてもいいんじゃないですか?」

「どうして?」

「身体動かさないと、どんどん痩せていっちゃう…せめてご飯は温かい火のあるところで食べさせてあげたいです」

「んー」

 みこは目を細める。

 逃げ出そうとする口実であろうか。

 しかしどうやって?

 今すぐというわけではないだろうが。

「いいだろう、ただしそれなりに枷は付けさせてもらうからな」



    ****



「えぇー!!?手錠とかそういうのだと思ってたんですけど!!!!」

 巻は神子の出してきた『枷』を見るなり絶叫した。

「ん?手錠とは言ってない」

「いってませんでしたけど、なんですか…それ…」

「妖虫」

 神子の袖からぬるりと出てきたのは人間の腸のような形をした黒いモノであった。

 よく見れば足が無数に生えて、頭らしいものもある。

「……」

 蜘蛛の糸に巻かれて動けぬ奏はソレを見て呆然としている。

「奏さまなら易々と入りましょう」

 ケラケラ笑いながら神子は虫を放つ。

「ひぃ!」

 奏は悲鳴を上げるが逃げられず、むき出しの菊座に虫が潜り込んでくる。

「ッぅ、あぁぁぁぁ…!!!!」

「どうですか奏さま?」

「なかがっ…!なか…あっ…あぁぁー……」

 涎を垂れ流しながらビクンビクンと痙攣を起こし始める。

「ちょっと!これじゃ動けないじゃない!!!」

「具合の確認をしたかっただけだ。今は恐らく潜り込む為に妖虫からでる淫液でおかしくなってると思うから少し待て」

「うぅ…奏さんごめんなさい…」

 しょんぼり顔で巻は身悶える奏を見つめる。

「ひっ…ぃ…」

 奏の反応が大人しくなっていき、荒い息で余韻に浸っているようだった。

「よし、もういいだろう」

 奏に巻きついている糸が消える。

「奏さまのお召し物は…」

「洗濯しないとダメになっちゃってる…ここ水っぽいのよ…」

 巻は足元をぺちぺちと鳴らす。

「沙汰、お前の古着もってこい」

「なんでですかー!」

 近くで待機していた沙汰が顔を覗かせて叫ぶ。

「だって、お前の古着しか余ってるのないじゃないか」

「そ、そういわれるとそうなんですけど…」

 沙汰は渋々、空間を歪ませ即座に着物を出してくる。

 それを神子と巻は奏に着せる。

「沙汰、肩を貸してやれ」

「なんでーーーー!」

「女にさせる気か」

「うぅ…」

 沙汰は奏を引っ張り立ち上げさせる。

 久しぶりに立つからなのか解らないが、ずしり…と体重をかけてくる。

「なんだろう、つい最近別の世界でも担いだ気がする…」

「わけのわからぬことを言ってないで連れて行け」



    ****



「奏さん、はいあーん」

「…」

 奏は素直に巻に食べさせてもらっていた。

 その顔は憔悴しきって目の下も隈が出来てしまっているが、巣にいたときよりは血色が戻ってきている。

「沙汰」

「はっ!?みこさま!!??」

 神子がぷるぷると震える手でオカズを掴んだ箸先を沙汰に向けている。

「そのようなことされなくても!!!」

「あーんしろ」

 沙汰の口へ押し込む。

「どうだ?」

「おいしゅうございます!!!!」

「そうか、よかった」

 ふふ、と微笑む神子。

(そっか、今日はみこさんが作ったものね)

 好きな人に食べてもらいたいという心はわかる。

 なんだか人間と妖怪の違いなんてないんじゃないか、と思えてくる。

 ハッとする巻。

(ダメ…こういう気持ちがつけこまれるんだって、聞いたわ)

 それに彼女らは、ただ生前の未練を忘れられないからここにいるのだ。

「…」

 奏がビクリ、と一瞬揺れる。

「どうしました?奏さん?」

「…厠に」

 よろり、と立ち上がりながら襖を開く。

「沙汰、また肩を貸してやれ」

「嫌ですけど!!?」

「いい、一人でいける」

「奏さん、場所わかります?」

「前に来たことがある」

 言って奏は出て行ってしまう。

「…途中で鬼とあって食べられたりしないですよね?」

「鬼どもは隣の部屋でまぐわっている」

「そ、そーですかあ…」

 ろくろ首さんも大変だなぁと同情する巻。



   ****



「奏さん、遅くないですか?」

「大きいほうかな?」

「みこさま!!!!」

「冗談だ、妖虫が入ってるから排泄は………あっ」

「……」

 巻はスっと立ち上がって出ていく。

「いい判断だ小娘。どうやら妖虫が活発になっていたようだな…」

「あれなんなんですか?」

「ん?ちょっとカタチを作って命を与えただけだ。作り方は我らと同じだよ」

「はぁ、よく解りませんが…」

 あの造型を決めたのは、みこさまなんだ…

 その言葉を沙汰は飲み込んだ。









 巻はきょろきょろと見回りながら、奏が隠れそうな場所を探した。

 微かに奏の声が聞こえた。

 裏庭のほうだ。

 裏庭は木々が茂っているだけで何もなく、妖怪はこっちまでくることがない。

「か、かなでさん…」

 奏を見つけるが、巻は脚を止めて息を呑む。

「はぁっ…ぁ、はぁ…ひぐっ…あ、あぁ…」

 木に身を預け、切なそうに奏は尻からゆっくりと妖虫を引きずり出し―――ぎりぎりのところでずるりと手が滑って

 勢いよく妖虫が中へ潜り込む。

 その刺激に奏は身を仰け反らせて悲鳴をあげ、再び引き抜こうとして失敗をする。

 手がガクガクと震えているせいだろうか。

「ひぃ、いやぁ…くるしい…いやだぁ…」

 額を地面に擦りつけ、尻を浮かして泣きながら自分の一物をしごき始める。

「とまら、ない…死ぬ…嫌だ、苦しい…」

 片腕だから上手くいかないのだ。

「イキ、たいぃぃいぃ……」

 奏の表情はいつもと違った。

 土蜘蛛の毒に侵されてるときはまだ理性の色があった。

 今はそんな気配は一切なく、泣きじゃくり、神子の言っていた淫液で正気を失っているようである。

(や、やだ私…奏さんのことみて…はしたない…)

 きゅんきゅんしてしまう自分を恥ずかしく思う。

 奏は必死に自身を静めようとしているが、先走りがとろとろ流れるだけで一向にイケる気配がなかった。

 恐らくそこは神子の毒のせいだろう、他者に触られないとイケない呪いだ。

「か、奏さん!」

 巻は慌てて茂みから身を乗り出す。

「あ、あっ…巻ィ…たすけて、くれ…出すとき、怖くて、ひっぱると気持ちよすぎて、独りじゃもうだめで…」

「大丈夫です、もう大丈夫ですから…」

 落ち着かせるようにいいながら、巻は妖虫の尻尾を掴み引っ張る。

「ぎっぁ、ぁぁぁ…!!!」

「あ、痛いですか!!?」

 思わず手を離してしまい再び虫が戻ってしまう。

「いい、きもち、イイ…ごめん巻、きもちいい…」

 上ずった声で奏は言う。

「ゆ、ゆっくりしますね…我慢してくださいね?」

「ひっぃ…」

 ガクガクと奏の脚が震える。

(わ、奏さん自分でしてる…)

 手が再びしごき始めていた。

 そんなに気持ちいいのかと恐ろしく思う。

「えいっ!」

 にゅぽんと虫が引き抜かれるのと同時に、奏は今までとは違う声で鳴きながら果てる。

「こ、これどうしよう…とにかくあっちいけ!」

 虫を茂みへ投げる巻。

「奏さん…」

「まき…切ない…欲しい、欲しい…」

 虫のせいで緩んだ穴がヒクヒクとひくついている。

「ど、どうしよう…わたしみこさんみたいに用意周到じゃないし…虫を戻すわけにはいかないし…」

 巻はとにかく奏を正気に戻さねば、と思い直し仰向けにひっくり返して、そのそそり立つ奏の一物の上へ腰をもっていく。

「あの、満足させれる自信ないんですけど…落ち着くまで、一緒にいますから…んぅ!」

 ゆっくりと、腰を降ろす。

 狭い膣に全てを収めることは出来ない。

 巻は髪留めの紐を解くとそれで奏のナニの根元を締めすぎないよう縛り、

 片手で奏の菊座の中を浅く撫でるように弄りながら、お腹越しにそのカタチに膨らんでいるそれをもう片方で撫でる。

「ア、アァァ…」

 奏は身もだえながら声を上げる。

「か、かなでさん…すごいです…正気なくすと、とっても可愛くなるんですね…

 そんな、腰振って…かわいいいです、自制の利かなくなった奏さんって、すごくいやらしい顔するんですね」

「まきぃ…イカせて、イキたいぃぃ…!!」

「だめです、我慢して、最後に出すんです」

「くる、しぃ…まきぃ」

 伸びてくる腕。

 巻はその手に指をからめる。

「すごいです、かなでさん…なかでピクピクして…ふふ、こっちも…ちょっと可愛いかも…

 あ!?」

 巻は後ろをふりかえる。

 戻ってきた虫が巻の指に構わずもぐりこもうとしていた。

「ダメったら!あっちいけっていったのに!あ、あっあぁ!?」

 どんどん潜り込んでいく。

 巻は体位をなんとか変えて、その虫の尻尾を両手で掴む。

「このっ」

「~~~っ!!!」

 奏の身体が大きく震える。

「ひゃうん!」

 その動きに突き上げられた巻は悲鳴を上げた。

「か、なでさん、だめっうごいちゃだめぇ!」

 ゆっくり引き抜くことができず抜き挿しのイタチゴッコになってしまう。

「あっあっ…だめ、かなでさん苦しいのに、これ、気持ちいいよぉ…!

 わたし、いけないことしいてるよぉ…!」

 勢いよく引き抜いて悶絶する奏のその衝撃に巻は嬌声をあげ、その間に虫が戻る。

「まき、死ぬ、死んじゃう、まき、やめて、まきぃぃ」

「ごめんなさい、ごめんなさいぃ…とまらないのぉ…!」

「イカ、せて…まき、もうイカせて、イキたい、もうゆるして…」

「一緒にいこう奏さん、一緒、奏さんばっかりイヤ…!」

 紐を解く巻。

 解放されたそれは勢いよく巻の中に注がれる。

「あついっ…!!!あついよぉかなでさぁぁん…!!!」

 身を仰け反らせその快感に震える巻。

 そしてそのまま意識は沈んでいった。



   ****



「す、すみません奏さん…わたしどうにかしちゃってて…」

「いや…巻が謝ることはない」

 一緒にお風呂に入りながら、巻はしょんぼりする。

「あの…奏さん…その虫、死んじゃいそうなほど気持ちいいんですか?」

「……」

 目が泳ぐ奏。

 再び体内に戻ってきてしまった虫は、今は大人しい。

 正直気持ちよかった。

「その虫が嫌だったら蜘蛛の巣生活ですし…わ、私としては…我慢してお尻に虫をいれててほしいかなって…」

「………」

 死にそうな奏。別の意味で。

「どうしよう…」

「悩むほど!?」

「巻の望むほうでいいか…」

「やったー!これで一緒にいられますね、あのみこさんのテリトリーにずっといなくてもいいんですよ!」

「身体に虫が入ってるから同じだと思うが」

「気分の問題です!」

「そうか…」

 奏側の気分は置いておかれているようだ。

「奏さん、また虫が淫液出してきたら遠慮なくいってくださいね?

 お手伝いしますから」

「あぁ…」

 なんだか巻が此処に来てからおかしくなってきている気がする。

 自分も頭がおかしくなってきている自覚はあるが

 とくに何もされていない(多少はされているか)この娘は、きっと心を保つために自分に依存しているのだ、と感じた。

 当然だ、ただの少女なのだから。

 巻き込んでしまった罪悪感に苛まれる。

 ズクリ、とまた虫が蠢く。

 この虫は、蟲は…黒い月から生まれたモノは…自分の感情を喰らっているのか、自分のこの、負の意識を―――

『か な で さ ん ?』

 巻の声が遠くに聞こえる。

 巻き込みたくないのに…巻き込みたくは…

 目の前が歪む、意識が、理性が沈む。
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