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浮かんだだけのIF世界
飛頭蛮に手玉に取られている海難法師がみたいんだよぉ!
屋敷の地下にある洞窟。そこは広く深く赤い水が溜まっている。
その上に小舟を浮かせて飛頭蛮は横になっていた。
弟も法師も討たれて静かだ。
望んでいた静けさがここにあった。
「…そろそろか」
呟いて飛頭蛮は身を起こして赤い水へ手を差し込む。
望めばそれが手に触れて、しっかり掴んで引き上げる。
見慣れた法衣に身を包む法師だった。
しかし特徴的なヒレはついていないし、死んだような肌色、目は閉じたままだ。
飛頭蛮は覆いかぶさるようにして法師の耳元に顔を近づける。
「慙愧、起きて」
「…う」
ぴくりと反応があった。
「…なみ、さ…ん」
「気付いた?慙愧」
目を見開く法師。
「わたしの、名…」
「ふ、ふふ…死ぬまでオレに教えてくれなかったね?そんなにオレを信用してなかった?
愛してるって囁いてくれてたけれど、信用はできなかったんだろう?オレが人間だから」
「そんなことはないんですよ?ナミさん…わたしは本当に貴方を愛して―――」
飛頭蛮の腕が動く。
力の入らぬ法師はそれから逃れることはできず、広い刃をもつ銛に両腕を切り落とされてしまう。
激痛に悲鳴を上げながらのたうつ法師。
「人間の身体で作ってみたんだよ慙愧の身体。虚無はすごいね、望めばその通りになる。
痛い?痛いね?大丈夫だよオレはお前の愛を知っているよ」
法師の顔を掴みながら飛頭蛮は呟く。
「これは人形遊びみたいなものなんだよ。人形相手ならオレはなにも怖くない。
可愛がってやることもできる。ねぇ?オレはお前の愛を知っているから」
「怒っていますか?復讐ですか?」
「そういうのはとっくの昔に諦めて、捨ててしまった」
「では、本当にわたしに向ける感情は愛なのですね?」
「そうだよ慙愧」
「なら何をしてくださってもいいです。受け入れられます」
「そうなんだ、そう…。俺は不安で仕方がなかったのに」
飛頭蛮は銛を思いっきり振り下ろした。
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