咲は柝の研究室で柝を後ろから抱きしめていた。
柝は熱っぽい目を宙に彷徨わせながら息が荒い。マスク越しに漏れる声は妙にくぐもっている。
それもそう、いつもの白い布マスクに隠れた口は猿轡を噛まされており、両手首は後ろ手に縛られていた。
下半身が時たま震える。
慣れさせるためのディルドが突っ込まれていた。それが身悶える柝に刺激を与えてくる。
「…フーッ…フーッ…」
柝は荒い息使いで快楽に耐えるしかない。
今は咲の手が胸元をまさぐり、乳首をこね始めている。
今日はここの開発もすると言い出した。
このまま全身を弄られそうだが、もう諦めるしかない。咲のいうことは聞いた方が身のためなのである。
身を犠牲にしているが。
ピリピリとやはり指先から電流を流され始める。覚悟はしていたがどのように感じるかは想像つかなかったので柝は喉の奥で唸った。
「マッサージ気持ちいいねー」
言い聞かせるようにいいながら咲は乳首を含む胸をくすぐってくる。
「う、ぅ…」
正直咲にされるがままの状態になって弄ばれるのが気持ちよく感じていた。
マゾの素質はない、ないはずだ、変異体が特別なだけで。
契りを交わしている咲がそう望むから身体が従ってしまうだけのはずだ。
先端をぎゅうっと抓られて柝は仰け反り咲の肩に頭を委ねる形になる。
「今の体で調教してさ…次の体に移ったあとって今までの調教ってはじめからになるのかな?
それとも魂に刻まれてるのかな?気になるよね柝?」
不穏なことをいいながら咲は柝の首筋をかぶかぶと軽く甘噛みし始める。
「んぅっ…ぅ…ぅぅ…」
「まぁ今はしっかり仕込んでいこうね。たまにはいいでしょ?いやーなんか柝が可愛く見えてくるねぇ」
にっこにこ笑う咲。
もちろんずっと胸は弄られ続けている。
「がんばって耐えていこうか柝。まぁ止めてって喋れないようにしてるわけだけど。
こういうの好きでしょ?」
「う…」
咲に見つめられて柝は視線を泳がせるが、諦めた目になって頷く。
恐らく死んで次の体になれば真っ新な状態になる。
咲のやっていることは無意味だ、いくら調教したってもとに戻ってしまうのだから。
猛黒に何度も惨殺されて(故意ではなく事故だが)死ぬことにも慣れてしまったので今ならナイフで首を掻き切ってしまえるだろう。
それぐらいには精神は擦り切れている。
しかしそれをやるほど咲を嫌いというわけでもないし、今の体を大切にしたいと思ってしまうほどだ。
なんだかようやく今になって咲との繋がりを得たような気がする。
歪み切った繋がりではあるが、自分たちらしい気もする。
きっと遠い将来には「こういうこともあったね」と思い出話になる程度の、それぐらいのものだ―――