咲は帝威家の屋敷に住んでいる。
主である猛黒は海外に住んでいるのでここにいない。
ここに残っているのは咲と柝と竺と漆発だ。
200年ほど前は賑やかだった屋敷も今ではすっかり静かだ。
「アラー?咲サン、着飾ってお出かけデスカ?」
廊下を歩く咲に気づいて漆発が声をかける。
「今日は契約更新日だからねぇ、柝連れて1泊してこようかなって」
「ア〜、もうそんな日デスか。イッテラッシャ〜イ」
手を振ってくる。腕の関節が無いのでぐねぐねというかビヨンビヨンしてるが咲には見慣れたものである。
柝は旧屋敷の一室で籠って研究しているので咲は速やかに部屋に向かうと柝を引きずり出して服を外出用に着替えさせる。
今の時代もう着物が珍しくなっているのだが柝は気に入ってるらしくそれを部屋着にしているのだ。
「隣の部屋で契約更新すればいいじゃないか」
「あのねぇ…掃除するの誰だと思う?わたし!わたしよォ!掃除する私の空しさがわかるか!?」
「わ、わからないです…」
「私に掃除させる無神経さを知れ。ラブホだったらヤって帰ればそれで終わりだからね。行くよ」
「契約の方法、ほかにないのか?血を混ぜ合わせるとか」
「縛り付けるだけならそれでもいいよねぇ、悪魔もそれだし」
咲と柝は移動しながらウーンと唸る。
柝の研究は魂の研究であるがそれは人間の魂の話だ。神側のことなど知りようもない。
咲と契約しておぼろげにそのようなものだという強制的な納得感があった。
「同じ波長にしないといけないんじゃなかろうか?まったく同じ波長。
嬉しいとか楽しいとかだと個人の差が大きくてダメだけど絶頂なら一緒じゃない?」
「魂の境界線を無くす?ということか?うーん、いや咲との契約は私の魂の保管であるから…。
咲と融合してはいけないのだが。研究としても」
「境界を無くす、そういうことでいいと思うよ。私の場合は最後の了解を柝から得てないから融合しない安心して」
「あぁ、お前の後釜になるというやつか。それは困るからな」
「なってくれた方がいいんだけどね。」
「研究が終わったら考えてもいい」
それは断りだということを咲は知ってるので溜息を吐いた。
柝の研究は永遠に生きる魂を造ることだ。
そのためにホムンクルスで自分の肉体を作り長い間生きながらえている。
咲と契約したのはホムンクルスの肉体にスムーズに魂を乗り移るためだ。
柝の魂が崩れないように咲が守っている、そういう契約。
柝は自力でそれをやろうと研究しているわけだ。
つまり研究が完成することがあればそれは変化のしない魂が生まれるということ。
咲とは交わることがないということだ。
二人は目的の場所に到着し無駄なく部屋に向かいベッドの上で裸で向き合う。
これが初めてではないが、あまりにも作業なので咲がモヤモヤしはじめた。
人間のふりをして生活をしているから人間臭くなったものだと思う。
昔は荒れ狂う雷神だったのになーと懐かしく過去を振り返りながら柝を押し倒した。
柝の体は血色が悪いし目元もクマができている。
顔はマスクで口元を隠しているが、その濁った眼は不健康ですと物語っていた。
昔は勃起不全も起こしていたが、六花凍司がやってきて健康管理にうるさく咲もそれを仕込まれてからは柝の面倒を見るとき利用している。柝も少し体調改善したように思える。
ともあれ今回はちょっと柝を虐めようかと思う。咲のことを考えていないのを反省してほしい。
こんなにも面倒を見ているのに。むしろ射精管理もしたほうがいい気がしてきた。
―――うん、しよう。
「咲?なにを企んでいる?」
「光来の巫女ちゃんを参考にしようと思ってさ」
「は?」
「お前のホムンクルス変異体の裂はドマゾじゃない?お前も素質あると思って、まずは縛るね」
「…いや、絶対そういう素質はない」
抵抗せず口だけ否定する柝。抵抗しても意味がないからだ、咲のやりたいようにやらせる。
ベッドに備え付けられている拘束具が使われた。そういうコンセプトの部屋をとったようだ。
柝は周りに興味がなさすぎてなんにも察することができていなかった。
「普通に性行為してサクっと終わらせればいいじゃないか…」
すぐに終わらない絶望を感じつつ呟く。
「漆発に1泊するって言ってるからね」
「はぁ…」
遠い目をする柝だがその反応にいちいち咲は怒ることなく作業のように進めていく。
ゴム手袋をはめてローションを手に垂らし、ナニに垂らし、ナニを片手で扱きながらもう片方の指を秘所へ潜り込ませてくる。
さすがに未経験なので違和感しか感じない柝だが。
感覚を馴染ませるように優しく入念に動く咲の指先からピリッと静電気が走る。ゴム手袋をはめているのに。
「ッ…!!!」
びくんっと腰が跳ねる柝。
咲の雷は自然のものを操っているものではないので出したいところに出せるのだ。
「電気治療してるみたいだね柝。お前やっぱマゾでは?」
「違…う!ぜったい、ちがぁぁぁぁ…!!!」
長めに電流を流されて仰け反り喘ぐ。
咲はニッコリ微笑みながら電流を流すのを止めない。柝は生理的な涙をこらえることが出来なくなってぼろぼろ泣きながら口を開く。
「わか、らないっ!解らない!!!」
NOだと電流、しかしYESと答えたくない柝は真ん中を選択した。
咲は眉を顰め電流を止める。
「嘘でしょ。お前お尻痙攣してるよ、嬉しがってるって」
「生理現象だ…!誰だって電流受けたら筋肉が痙攣起こすわっ!!!」
「そう?こっちは何も感じないの?」
扱いてるナニをぎゅっと握ると柝は呻き、先端から透明な汁の溢れる量が増えた。
「わかんないな…しばらく続けるから柝は好きなようにしてて。泣き叫んでもいいし悦んでもいいし。
わたしこっちに集中してるからさ」
言って咲は再び電流マッサージを始める。
柝はしばらく声を押し殺し身を強張らせて刺激に耐えていたが次第にそれもなくなっていく。
咲も要領を得はじめて指使いが上手くなってきたせいだ。
前立腺を弄られながらナニを扱かれ耐え切れず柝は射精する。―――が、咲の手は止まらない。
「あはは、これだけ緩くなれば入るかな?」
残酷な声が聞こえる。
指を引き抜かれたと思ったらディルドが捻じ込まれていく。
柝は悲鳴のようなか細い声を上げて悶えるのだが咲は喜ぶだけだ。入ってるね〜、と。
どうやらペニスバンドだったらしい、咲は行くよ〜といって腰を打ち付け始めた。
「ぁっ…ぁ、ぁっ…!!!」
短い悲鳴を上げながら柝は虚ろな目を宙に向けている。
ディルドの圧迫感と感じる所を押しつぶす様に擦り上げてくる感覚と、電流が走るのだ。
射精が止まらず洩らしっぱなしのようになっている。
「好きだね〜。やっぱ虐められるの好きだったじゃない柝。お前今までより警戒心解けてるよ。
そんな好き?嬉しいね、やっぱ人間を支配するのって気持ちがいいわ。
お前は支配されるの気持ちイイでしょ?」
「う、うっ…」
咲は柝の顔を掴む。
「私のあとを継いでよ」
「っ…」
力いっぱい顔を背けようとする。だが咲に顔を掴まれているので逃れられない。
柝の涙で熱くなった目は揺れ動いている。
「柝?あと、継がないの?神様になれるよ?」
「………」
虚ろな瞳が咲を睨む。
「ふふ、嫌か。ごめんよ」
手を放す咲。
「今日はえっちなことに集中するか。もっとお尻開発してあげる」
「も、う、そこは、いいっ…!」
「柝が良くても私はもうちょっと遊びたいんだよね〜。いくよー」
さっきとは違いガンガン攻めずゆっくりと柝の感じる部分を探るように、見つければここだと教え込むように攻められ始める。
柝は意識を手放さないよう唇を噛みしめていたが今までに経験したことのない快楽に酔い始めた。
咲の感覚が伝わっているのかもしれないし、裂の尖った性癖が自分の内にもあったのかもしれない。
柝にはもう何が正しいか解らなかった。
ただ咲の誘惑に飲み込まれないようにだけ神経を集中し、快楽でその集中が掻き乱れそうになったら泣いて叫んだ。
そのたびに咲はごめんごめんと謝ってくれる。
「柝、マスク外すね」
ズレてしまっているマスクを外して咲は柝に唇を重ねた。
柝の舌を味わう。自分の舌ってこんなに動くのか、と頭のどこかで考えながら咲は柝の頭を掴んだままキスを続ける。
もう柝の表情は蕩けていた。虚ろな目も普段の虚ろではなく、快楽に逆上せ上っている目であった。
「さて、遊んだし今から契りあおうか」
「もっと、…もっとはげしくしてもいいよォ!」
咲は上に被さる柝に抱き着きながら叫ぶ。
柝は息を上げながら腰を咲に打ち付けていた。
「無理…、ぁ、あっ」
咲の中に出すが咲は足を柝の腰に絡ませて自ら腰を振り始めた。
「うっ!あ、ぁぁっ」
「いままで作業的だったけど次からこれでいこうねぇ楽しいから」
ガクガク震える柝の頭を柔らかい胸元に抱き寄せて言い聞かせる。
「本当の契りはね、魂が書き換えられる感覚がするんだって。
それを快感に思うか激痛に思うかは相手次第だけど柝なら快感に思っちゃうかもねぇ?」
「絶対嫌だ…咲には悪いと思っている。お前を利用して見返りがないんだからな」
「まぁ前当主様に命じられたしねぇ、柝が気にしなくてもいいよそこは。
それはともかく柝は私を気遣ってよ。私が柝を後釜にしようとしなくなるようにさ」
「それは…難しいが。今更、という気もする」
「私の感覚で数百年の付き合いでも今更にならないけどね」
「感覚の違いか…なら気にせず考えて行けばいいんだな。
その、なんだ…鬱憤を晴らすのも込みで契りの時以外でも付き合う…ぞ?
だいぶ譲歩してるだろう、研究時間を削っているし」
「そうだねーえらいねー」
咲はニコニコ笑いながら柝の頭を撫でて、そして引き寄せてキスをする。
再び舌が絡み合って柝の息があがる。
おや?と思う咲。柝が興奮しているのだ、いつも興味のない様子だったのに。
心境の変化がさっそく起きたらしく嬉しく思う咲。
合理的といえばそれまでだが、柝はあまりにも人間味を失いすぎていたから。
それが可愛らしく思えるのは愛情という感覚はないが、愛玩動物あたりの感情が自分の中でも育ってきているらしい。
「もう一回しよっか!」
「もう体力がない…」
柝は本当に心の底から咲に言うが、体力が有り余っている咲には通用しなかった。
朝帰りをしてきた二人を迎える漆発だが、柝は完全に枯れ果てていた。
「Oh…お勤めご苦労さまデース」
柝にいう漆発。
「柝サンの体力の限界を越えさせマシタ?」
「うん…それで私気づいたんだよね、柝が腹上死しても死んだ瞬間に次の新しい体に入ってるから実質ずっとヤれるって」
「人を種マシンガンにするな…」
「最低な話デース…朝からヤメテー!」