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百鬼夜行奇譚

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輝美

※忌譚収録(加筆してたかも?)
 その銃と出会ったのは必然であったのだろう。
 出遭うべくして出遭ったのだ。
 朽ちた寺に捨てられていたこの銃は見た目からして不気味であった。
 火縄銃のようではあるが、血のようなもので文字が書かれた札がべたべたと銃を包むように張られ、銃自体、弾がいらなかった。
 引き金を引くだけで人を殺せる。


 火野輝美。ごく普通の武士だった男はこの銃に廻り合ってから人生が変わってしまった。


 野武士を襲い武器を奪い、時には合戦後の死体から魂を奪い、輝美は銃の付喪神に命じられるがまま己の快楽を満たしていた。



 凛とした表情も今ではとり憑かれ、虚ろな目を怪しく光らせて身につけていた鎧も手入れをしないせいで朽ちてボロボロだ。
 ふらりふらりと、あてもなく歩き回り屋根がある場所を見つけてはそこで眠る。

「あかみね、あかみね…」

 輝美は銃に頬ずりしながら、銃の名を呼ぶ。
 愛しすぎてたまらない。
 自分の人生を変えたこの銃を手放すことなんて出来ない。

『て・る・み…』

 ぼんやりとしたものが銃から溢れ出てくる。

「おお、あかみね…その姿、久しく見た…」

 銃にも本来の姿というものがある。
 しかし輝美と初めて出会ったときにしかその姿を見ていない。
 こうやって現れるのはいつも影だ。

『満月で、気分がいいんだ…』

 輝美に覆いかぶさるように、まるで恋人のように寄り添う影。

『月光は我が身に良い。あぁ…て・る・み』

 耳元で甘く艶かしい声―――名前を呼ばれて輝美は身体をゾクリとさせる。

『まだ身体が火照っているのか、フフフ…』
「ッあ」

 下半身を触れられて輝美は声を上げるが抵抗はしなかった。
 虚ろな目は影を見ることなくぼんやりとどこかを見つめている。

「お前の引き金を引くたびに、果てる感覚に襲われて疼くのだ…」
『かわいいやつ』

 ズズッ…と何かが集まるような気配と共に、影は本来の姿を現す。
 武器付喪、魔弾の赤嶺。
 笑みを浮かべるその口からはギラギラと鋭い歯が見える。

『渇き、疼き、もはやお前は満たされることはないだろが自分(オレ)と交わることでひと時だけでも満たしてやることはできよう』


 ――人からかけ離れて行くだろうが、な


 赤嶺は崩れるように倒れてしまう輝美の着物をするりするりと脱がし肌を暴かせる。

「ひっ…」

 下半身のそれを手で包み込まれ声を漏らし、ぎゅうっと抱いていた銃をもっと抱きしめる。
 本当、この男は面白い。
 もともと大切に扱ってやろうとは思っていた。
 しかしここまでとは思わなかった、こうやって交わり…堕すほどの価値を自分は見出しているのだ。





 輝美はうつ伏せに、獣が交わるかのような態勢で土に額を擦り付けて揺さぶられていた。

「あか、みねぇ…あ…か…み、ね……」

 息を吐き出すように名を呼びながら、輝美は抱きしめる銃に頬を擦り付けて快楽に身を委ねる。
 快楽とは別に…快楽に紛れて「何か」が身体に、心に染み込んでくるその感覚が堪らない。
 高揚感に輝美は抑えきれず歓喜の呻きをあげる。

「あか、みっ…も、だ、めっ…」
『そうか…ふふ、耐えれるかな?身体が馴染むまではキツいかもしれんなぁ

 人の身に自分(オレ)の妖力を注ぐのは』

「ッ…―――」

 下半身から何かが来るのを感じて、輝美の身体はガクガクと震え熱を放つ。

「ッぎぃっ…!!!」

 白目を剥きながら輝美は仰け反るが赤嶺が頭を掴んで地へ押さえ込む。

「っひぃ、ぎ、ッぉ、ぁッ…ぁ、ぁぁ……」

 身体の中が「何か」に掻き回されているような感覚。
 本能的に…身体に宿る「生命」の部分がその「何か」を拒絶している。

『ははは、さすがのお前も耐えれんか。童のように漏らしよって』

 失禁する輝美に赤嶺は苦笑する。

『まぁ良い。お前は大切に扱う。お前と相性がとてもいい…自分(オレ)を完全に扱えるのはお前だけだ…』







「あ、か……」

 意識を戻した輝美は虚ろな目を周囲へ向けるが、もう赤嶺の姿はなかった。

「…うぅ」

 涙を流しながら輝美は銃に口付けをする。

「くるしぃ…あかみね…くるしい…」

 じんわりとした快感と胸が焼け付けるような苦しみが襲っている。

「もっと、魂を集めれば…いいんだろう…?そうすれば、苦しくなくなるんだろう…?
 お前と同じになれるんだろう…?」


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