奇譚での刻と珪の関係のために過去を出力したメモ書き。
流れ的には売り飛ばし→油井先生とのトラブル→刻を買い戻して力のところへ
 家を飛び出して金が尽きたとき、初めは盗みからだった。
 そのうちスリのやり方を覚え、放浪の末に八紘曲水(はっこう・きょくすい)の組に入って高利貸などをやっていた。
 返済の絡みで子を売ることもあり、珪は特別な感情を抱くこともなく売りさばいていた。
 そのまま売ることもあったし、芸を仕込んでから売ることもあった。このあたりは子供の器量によって変えていた。
 ある日水難事故があったとかで身寄りのない子供が複数入ってきた。
 どうやってくすねてきたのやら、と呆れつつ珪はいつものように選り分けていく。
 そして我の強そうな小娘の番になる。
 薄汚れてはいるが器量がよさそうである。しかしその眼はいけない、意志が強すぎる。
 こういうのは仕込もうとしても抵抗するか、受け入れても隙をついて逃げ出したりするのだ。
「なんだお前は。さっさと売る場所を決めたらどうだ。時間の無駄は嫌いだ」
「お前…それで特殊な趣向の親父のところへ売られてもいいのか?」
「どうでもいい、僕に選択肢はないからな。それか今から仕込みでもするのか?さっさと済ませろ」
 なんて言いながら見抜付けているボロ布を脱ぐのだから珪は頭を抱えて呆れた顔で小娘を見下ろす。
「お前に主導権はないんだよ…もういい、お前なんか適当に売り飛ばすから服を着て牢に戻ってろ」
「なんて時間の無駄なことだ」
 ぷりぷり怒りながら娘は布を拾ってスタスタと戻っていく。
 彼女の無駄ではない時間というものが知りたくなったが、あぁいうのは安く買いたたかれてもいいから出荷してしまおうと思った。
 もともと元手はかかっていないし。