奇譚収録用草案。採用されるかは現時点ではわかんない。
 みこと寄り添いあって一時を過ごすのが白鬼にとって一番の時間であった。
 みこはなにも語らずただ黙ったまま傍にいてくれる。なんと幸福なことか。
 その白く長い指先に触れれば、みこは反応して指を絡めてくれる。
 愛しい女性(ひと)。
 白鬼のご飯がとても美味しいと微笑んで喜んでくれる。
 こうして寄り添いあって傍にいてくれる。
 子蜘蛛を掃ったときは少し悲しげな顔をする優しい心を持つ女性―――
 みこが離れる。
 何事かと目を向けると、みこは振り返っていた。
 白鬼も振り返る。
 気配がある。
 何かがくる気配。知っている気配。知っている足音。知っている匂い。
 名前が出てこない。
 襖が開かれ現れる3人の退魔師。
 招かれざる者たちだと解った。
「土鎌の」
 一番背の高い退魔師が声を発する。
 忌々しい声。
「お前の頼みを叶えに、みこの願いを叶えに戻ってきた」
「…牛鬼は。倒されたのか。図体ばかりの男か」
 白鬼は立ち上がる。
 後輪が回転し始め展開し異空間に繋がる。
「お前の言っていることがわからんぞ退魔師。お前は俺とみこさまの邪魔をする、邪悪だ。頼みなんぞ知らん」
 退魔師の、浄化の光が帯びる左手が伸ばされる。
「みこの願いはお前を救うこと。お前の頼みはみこを助けることだ。
 わたしは、お前たちを救う」
「戯言ッ!救う!?なんのことか!今とてもとても幸せに暮らしているのに!
 それを邪魔するのは貴様たちだ!邪悪め!みこさまは下がってください!ここは私が調理します故に!」
「胸は痛まないか?何故振り返ろうとしない?土鎌、何故蜘蛛が嫌いになった?」
「五月蠅い!!!」
    ◆◆◆◆
 視えない何かが襲い掛かり畳が砕ける。
「空間が歪んでいる」
 禄は片目を抑えながら呟く。
「目が辛いなら閉じていてくれ」
「いえ、これぐらいの干渉ならばまだ大丈夫です」
「歪ませて俺らを磨り潰すやり方か。あの後ろの土蜘蛛は動く気はないみたいだな」
「みこは、土鎌を見届けるまで手は出してこないだろう」
「ならいーんだけどな。」