アカンエンド。
奏の身体の傷は癒えたがまだ薬の後遺症が残っていた。
沙汰は奏を病室から自分の家へ移してあずかることにした。
後遺症をあまり他人に見せたくないという気持ちがあった。
「部屋は余ってるから適当に使ってくれ」
「…」
奏は暗い表情のままだ。
体は綺麗になっても、心は壊されてしまっているのだから当然だろう。
奏は朱海先生(どんな先生かは沙汰は知らないが)好みに調教されてしまったという。
「…正法院、こっち使え」
沙汰は奏の腕を引っ張って部屋を案内する。
特に会話することなく、ただ時間を過ごす。
奏を引き取ったのはみこが面倒を見てくれといったのもあるが、罪悪感があるからだろうか。
兄が関わってたのだ。
その罪滅ぼしを―――
カチャリ、とドアが開く音がした。
ゆっくりと近づいてくる足音。
「土鎌くん…」
ぎしり、とベッドが軋む。
奏が覗き込んでくるのを感じる。
「土鎌くん、抱いて」
脳裏で病室内で行った行為を思い出してしまう。
そんな沙汰をかまうことなく、奏は唇を重ねる。
「っう…」
奏の柔らかい舌が潜り込んでくる。
思わず舌を触れ合わせてしまう、絡まる、お互い絡めあってしまう。
奏の手が沙汰の頭を掴む。
「っは、やめ、正法院っ…!」
奏から逃れようとするが、体格差で逃れられない。
「土鎌くん、抱いて」
恐ろしいほどに暗い目で見降ろしてくる奏。
「い、いやだ…」
声を絞り出すようにして、沙汰は答える。
「どうして…?」
奏の指が沙汰の唇をなぞる。
「土鎌くんしかいないんだ…僕を抱いてよ…」
「俺はそういう趣味ない。」
「抱いてくれないとおかしくなる」
「もう薬やってないんだ、おかしくならない。」
「こ、怖い…」
奏は自分を抱きしめ震えはじめる。
「…」
沙汰は身を起こすと、あやす様に奏を抱きしめる。
奏は沙汰に擦り寄り、震えが収まるまでしばらくそうしていた。