奏くんは草食系男子なのです。魔神化しなければ。
「……」
 むっすりとした表情の神子は張り出されている成績の順位を睨んでいた。
 1位 正法院 奏
 1位 寺田 神子
        「また君と同点なのね」
「…そのようだ」
 無表情に抑揚なく神子の横に立っていた奏は答える。
 双方共に成績優秀、素行も良い。
 若干奏の性格が真面目すぎて友達の数では神子の方が勝っている、というそれ以外は五分五分の二人。
 負けず嫌いの神子がよく奏と張り合ってくるのだが、勝負がまったくつかない状況であった。
        「奏くん、今日はお暇?」
「暇ではない」
        「暇ね?」
 逃げようとする奏の袖を掴んで神子をぐいっと奏を引き寄せ耳元で囁く。
        「巻も呼んでるから絶対に一緒に帰るわよ」
「っ……」
 奏は一瞬顔を歪ませ、神子の手を振り払って逃げるように立ち去っていった。
   ****
(どうしてこうなった)
 奏は俯きながら頭を抱えていた。
 半年前までは健全な生活を送っていた。
 それこそ何もない、平凡な。
 それが崩れたのはいつも絡んでくる神子が、神子が―――
        (疲れてたんだ…体が疲れてたせいで…あんな…あんな姿を…)
 そして巻の存在。
 1年生のアイドルともいわれている、可愛い系の女子だ。
 その巻を巻き込んでしまったのは、神子にプレイを強要されて、そのプレイを巻に見られてしまったところから始まる。
(何で彼女もノリが良いんだよ…!)
 普通ならドン引きされるか教師に報告して神子も自分も退学処分レベルである。
「奏さん、奏さーん!」
        「奏くん、帰るわよ」
 教室に迎えにくる美少女が二人。
 奏は死にそうな顔をしながら席を立つ。
  ****
 三人は神子の高級車に乗っていた。
 このまま神子の家へ向かうのだ。
「久しぶりですね〜、奏さんちゃんと拡張してました?」
「うっ!?」
 明るく軽い感じにドギツいことを聞いてくる巻に呻く奏。
        「ちゃんとテスト勉強中もテスト中も挿入させていたわ」
「はぁー、それで学年トップのままってすごいですよねぇ…頭の作りが根本的に違うのかな…」
「……」
 顔を真っ赤にして俯く奏。
        「今も、入れてあげてる…ねぇ?奏くん」
 神子の白い手が、奏の太ももを撫でながら、脚の間へ。
「ひっ…」
        「粗相のないように貞操帯も付けさせているの…ふふ」
「あっ…あっ…」
 股間を撫でられ奏は仰け反って甘い声を漏らす。
 抵抗はできない、抵抗すれば一生外さないと脅されているし、周りにバラされたくもなかった。
「みこぉ…みこ、これ、帰ったら、外してくれる…?これぇ……」
「あは、奏さんスイッチはいると本当可愛いですよね」
         泣きそうな顔で神子の腕を掴んでくる奏の頭をよしよしと撫でる巻。
「外してあげるしいっぱい出していいよ?」
 ぎゅう、と神子に股間のあたりを握り締められて、奏は内股前かがみになってぶるぶる震える。
「ドM野郎」
「それ神子さんのせいでしょう?」
        「素質はあるのよね」
 奏の腕を叩いて離せさせ、神子は微笑む。
「っ…」
 奏は荒い息を抑えようと必死だ。
        「君、ちゃんと巻のこと考えながら自慰はしていたの?」
「わぁ、今週の奏さんのオカズは私だったんですか?」
 恥ずかしそうにもじもじする巻。
「ちゃんとしてくれてます?奏さん」
「ッ…ン、ンゥ」
 涙目になりながら、赤い顔のままコクコク頷く。返事の声は変な呻きしか出てこない。
「わー、えっちですね奏さん。良い子良い子」
 巻に頭を撫でられながら抱き寄せられる。
 良い匂いがする。
 ムっとする神子。
        「甘えさせてはいけないわよ巻。付け上がるから」
        「奏さんはいい子です」
        「厳しくしつけるべきよ」
(なんでこうなってるんだ…)
 奏はどうすることもできず、二人の言い合いを聞き流すしかなかった。
    ****
「お帰りなさいませお嬢さま」
        「土鎌家のご子息がお待ちしておりますが」
「え!?」
 屋敷に着くなり出迎えてきた神子のパパの部下たちが報告してくる。
「なんで沙汰がきてるの!?」
「沙汰って誰ですか?」
「お、幼馴染…」
「いたんですかそんな人!」
「中学上がるときに沙汰が親の仕事の都合で転校しちゃって…
 でも文通で連絡は取り合ってるから」
 もじもじしながら答える神子。
「文通」
「いつの時代の人ですか貴方たち」
「だって!手紙なら魂篭めれるし!!ほら沙汰の手紙とかこんなに心篭ってる!」
「いつも持ってるんですか!?こわ、すごい字が紙いっぱいに書き詰められてて怖い!神子さんと沙汰さんが怖い!
 まぁお客さまが来てるなら私たちだけお部屋借りて勝手にシてますか」
        「図々しいぞお前。まぁいい…ついでだわ紹介する…」
         応接室に連れられた巻と奏は、そこで沙汰と顔を合わせる。
 穏やかに微笑んで挨拶をしてくれる感じのよさげな好青年…に見えるが、
 その笑い方が神子と似ていて、幼馴染だから神子と似ているのか、それとも隠された性格があるのか…
 巻と奏は本能的にこの笑顔は嘘だと認識した。賢い。
「神子が俺に友達を紹介してくれるの初めてで嬉しい」
        「今後顔を合わせる機会があると思って…今日はどうしたの?」
「たまたま近くに来たから顔を見に来たんだよ。」
「そうなの…ここじゃ他人行儀すぎるわね。皆で私の部屋へ場所を移しましょう」
「ふかふかベッド!」
「図々しいよ巻」
 遠慮なくベッドに飛び込んでいく巻に吠える神子。
 いつものことである。
「神子の部屋…」
 なんだか怖い顔で見回している沙汰に悪寒を感じる奏。
「お飲み物をお持ちしました」
 メイドが紅茶を運んでくる。
「わぁ、神子さん家の紅茶美味しいから好き!」
「ふふふ…奏くん、こちらをどうぞ」
「…」
 神子から差し出されたカップを、躊躇いながら受け取る。
 何か入れられてる気配がする。
「ほら、奏くん。イッキ!イッキ!」
 絶対これ何か入れられている。
「どういう掛け声よ…」
「ッ…」
 一気に飲み干す奏。
「おかわりします?」
「したくないっ!」
「そんな大声あげなくても…」
 クスクス笑う神子。
「彼と仲がいいんだね神子?」
「え?別に…仲良くないわ。」
        「えぇ…?仲良しに見えますよフツーに」
 巻が突っ込む。
「そう?でも私、奏くんのこと好きじゃないし」
「それは解ってますけど、一般的な目から見てのお話ですよー」
「不思議な話ね」
 お茶を飲みながら、奏を置いて3人は世間話やら何やらで花を咲かせる。
(またあの薬…)
 奏はグッと唇を噛み締める。
 身体が熱い。
 神子に何度か薬を盛られたことがある。
 それのせいで晒した痴態は数知れず。
 沙汰の前でも痴態をさらせと、そういうことだろう。
(ダメだ、トイレに逃げてやり過ごそう…)
「…奏さんどこ行くんですか?」
「と、トイレ…」
「うんこ?」
「気分が悪いんだよ!なんでお前はすぐにそっちへ直結させようとするんだ!!!」
 神子に叫ぶ奏。
「気分が悪いならついていくよ、フラついてるし」
 沙汰が奏の肩を持つ。
「いや、ひとりで、大丈夫」
「万が一があったら神子が心配するだろう?」
「あ、の…」
 沙汰に連れ出されるカタチで部屋を出る奏。
「君は神子の何だ?」
「何って…」
(何だろ…?)
 おもちゃにされていますとは答えられない。
 沙汰はその沈黙をどう受け取ったのかはわからないが、早足で奏を引っ張っていく。
 そしてトイレへ引きずり込まれて鍵を閉められる。
「は、土鎌…く、ん?」
 押されて便座へ座る形になる奏。
「神子とセックスした?」
「セッ…!?」
 わけが解らない、といった顔で戸惑う奏。
「なにを、誤解をして…」
 バリっと制服を力任せに引きちぎられてボタンが弾け飛ぶ。
「この痣はなに?」
「ひっ…」
 首元や鎖骨の部分を撫でられる。
「神子のキスマーク?」
「ちが、う…!神子も、あるけど、巻のも…あ、ぁっ!?」
 沙汰に鎖骨を噛み付かれ奏は身悶える。
 手に力が入らず押し返せない。
 キスマークの部分を沙汰が痛いほど強くキスしていく。
 カチャカチャという音に奏は我に返る。
「何を…!」
 止める間もなくベルトを外されズボンを降ろされる。
 むき出しになるラバー製の貞操帯。
「…神子に可愛がられているんだね?」
「ちが、う…ちがう…」
「何が?」
 沙汰が、太もものキスマークに吸い付き始める。
「ちがっ…みこは、ただみこは、嫌がらせで…」
「それにしては気持ちよさそうだけど?」
「これは、薬が…薬…」
        「お前も楽しんでるように見えるが?」
「たのしんで、ないっ」
「本当か?こんなモノも咥えながら?」
「あぁぁぁぁぁ!!!!」
 奏は仰け反って悲鳴を上げる。
 後ろに挿入していたアナルビーズを沙汰がいきなり引っ張ったせいだ。
「あっぁっやめて、くれ…とらないで…お願い…みこに、怒られる…おしおき、される…嫌だ…嫌…」
 ガクガクと脚を震えさせながら涙を零し始める奏。
「…」
 沙汰は暗い目のまま奏の頭を掴む。
「キスは?」
「し、した…んぅ!?」
 沙汰に口を塞がれる。
「んぅぅっ!?んぅ、うっ…」
 舌が噛まれる、引きちぎられそうなほど乱暴なキス。
「お前の貞操帯を外してやることも出来る」
「!?」
 奏の目の前に、鍵が―――
「神子の部屋からくすねて来たよ?お前のだろう?」
「は、外してくれ…外して…」
「……」
 沙汰は無表情のままそれをポイっと投げる。
 壁にあたったそれは床を滑る。
「神子にされたこと全部し終わったら外してやる」
「や、やぁ…!?」
 再びアナルビーズを押し込められたり、引っ張り出されたりとされ始め、奏は意識せず沙汰に腕と脚を絡ませて悶え始めた。
「やめ、いじらないでっ!イケないの、イケない…!」
 貞操帯を施されている奏のそれは、射精しないようリングを装着されている。
「あぁぁぁぁぁっ!!」
 ガクガクと震える奏。
「ドライでイってる?はは、ひどい顔」
「イキたい…ひっく…イキたい…っ…ぅぅイってないのにぃ…イってるぅ…」
 泣きじゃくり始める奏。
 沙汰は自然と笑みが零れた。
「体勢が悪いな」
 奏をひっくり返して腰を突き出す体勢にさせる。
「ひぃ!やめぇ、おねがい、やめてぇ…!!!」
 アナルを再び犯され始めて身悶える。
「あぁぁぁぁーーー!!!」
 立っていられなくなって、膝を突いてしまう。
「たすけてまき、たすけて、たすけてぇ」
「……」
 手を止める沙汰。
「…?」
「ものほしそうな顔しやがる」
 冷めた表情で沙汰は呟きながら沙汰は自分の身なりを整える。
「神子の完全な犬だったら殺してやろうかと思ったけど、まだそうじゃないようだ。
 いいか?俺が神子の犬になるんだ、お前じゃない」
(な、なりたくない…)
『沙汰は私の犬にはなれないよ』
「!?」
 血の気が引く沙汰。
『開けて』
「み、神子…」
 ドアを開けば神子が立っていた。
「オレじゃ、役不足…?」
 震える声で沙汰は呟く。
「や、そうじゃなくて。沙汰、貴方どっちかというと私と同じSじゃない?あと従順な犬が欲しいわけじゃないの。
 奏くんみたいな反抗的な男を飼い殺していく、そういうのがいいの。雌犬にするのがとりあえず目標なんだけど。」
 ひどいことを言われている気がする。
「ならば、そのお手伝いをさせて欲しい…」
「ホント?嬉しい、今日沙汰に紹介してよかった…」
 死にそうな気分になる奏だった。
        
             ****
        
 神子のベッドの上に、拘束された奏が寝かされていた。
「じゃーん、奏さんどうです?似合ってます?」
 極太ペニバンを装着した巻が問いかけてくる。
「うん?うん…うぅ…」
 薬で身体がおかしくなっているが意識が飛んでいるわけではない奏は返答できずに微妙な相槌を打つ。
「ちゃんと、私に犯される妄想しながらお尻弄っててくれてました?」
「う…」
 顔を俯かせる奏。
        「奏くん、答えてあげなさい」
「ひっ…」
 神子に髪をつかまれ顔を上げさせられる。
 期待の篭った巻の眼差し。
「い、いじって、ました…巻に、犯される、もうそう、しながら…」
「嬉しい!」
「で、でもそんなサイズじゃ…」
「そうなんですか?でも大丈夫ですよ。ほら濡らしてください」
「う…」
 ぺろぺろと、差し出されたそれを舐め始める。
「わぁ、奏さんの舌って柔らかそう、ふわふわしてて…でもそれじゃだめですよぅ」
「んぐ!」
 巻が奏の頭を掴んで捻じ込んでいく。
「もっと奥まで咥えて濡らさないと」
「んんっ!んぐ、ぅぅ!!」
 喉の奥まで捻じ込まれて奏は嗚咽のような呻きを上げる。
「もういいかな?奏さん、お尻だしてください」
「ひぅ…ひぃ……」
 奏は息を切らしながらうつ伏せになって腰を上げる。
「わー、沙汰さんに弄られたせいですか?すごくものほしそう…かわいい…」
「は、やく…巻、はやく…」
「はぁい」
「んぅ…!!」
(さけ、る…!)
 やはり大きすぎる。
 奏は声を出すまいと枕を噛み締めた。
 ここで拒絶すればまた別の方法で甚振られるだけだ、さっさと終わらせたかった。
「あぁ…入った…すごいです奏さん…飲み込んじゃった…」
 ツゥ…っと結合部分を指で撫でる巻。
        「そんなに顔を赤くして、大丈夫?奏くん」
 クスクス笑いながら神子はパシャパシャと写メを撮る。
「やめ、とらないでぇ…」
        「君の可愛い姿は残しておかなくちゃ。優等生が下級生の女の子にこういうプレイをさせているなんて面白いでしょ?」
「うっ…くっ…」
「奏さんを泣かさないでください!」
        「薬飲ませるとメンタル弱いなぁ君は。いつもの仏頂面はどこへいったのかなぁ?」
「もう神子さん…。奏さん、気にしなくていいんですよ?気持ちよくさせますね?」
 ずりゅっ…と腰を引く巻。
「あっあっ…」
「ねぇ沙汰、奏くんのお口が開いてるんだけど使う?」
「神子がそういうのなら」
「!?」
 ビクリと震える奏。
「や、やぁっ…」
「君に拒否権は、ないよ」
   ****
 後日。
 電車に揺られる4人。
 奏の左右に巻と神子が座り、
 そして奏の正面に沙汰が立って見下ろしている(にらんでいる気もする)。
「皆で出かけるのって楽しいですね〜」
        「そうね、こうやって出かけるのは経験がないわ」
「神子さん友達多いのに?」
        「学校で完結してるから。プライベートではまず遊ばないの。沙汰もこっちに転校してくればいいのに」
        「いやぁ、親が許しませんので。神子がこっちに来るのはどうですか?レベル的にこちらのほうが合っているかと」
「ん…でも今が楽しい」
「そうですか」
「ね?奏くん」
 スゥっと神子の手が奏の脚を撫でる。
「僕は楽しくない」
「楽しんでるくせに。好き好んでこうなってるんでしょ?」
「君が、僕の弱みを握ってるから…」
        「まぁそういうことにしておきましょ。ねぇねぇ、沙汰の具合どうだった?」
「それを、ここでっ…!なぜ聞く…!」
「神子…さすがにオレもそれはちょっと…」
「?」
 フツーに疑問そうに首をかしげる神子。
「あざとい…」
 巻は呟きながらなにげに奏の腕に抱きついていた。