過剰な愛

ジャックさんの甘やかしが変な方向にいったIF世界


 大和はジャックに初めて出会ったときにハグをされた。
 突然のことに硬直しているとジャックはまるで懐かしい友に会えたかの如くの表情と声色で自分の名を告げ、手を握ってくる。
 大和はただただ呆然とした表情で名乗り返すことしかできなかった。
 退魔師や魔術師は意志の強さで前世の記憶が残りやすいというのは聞いたことがある。
 ジャックもそれであり、前世の大和とは旧知の仲だという。
 ジャックの恋人であるシャーロットは呆れた表情を浮かべつつ大和にアイツは嘘や騙りはしないが大げさなところがあるので気を付けるようにと忠告してくれた。情に訴えてくる悪い癖があるということと、前世で何があったのかはシャーロットは知らないが大体甘やかそうとしてくるらしい。
 どういうことかその時は解らなかったが、今理解できそうである。
 何かと気遣ってくれる。それはまぁいい、慣れないので狼狽えてしまうことがあるが。
 時たま熱の篭った視線で見てくるのはなんなのか?
 壊れモノを取り扱うかの如く優しく手を握って来たり手を添えてきたりして顔を近づけて囁いてくるのは何なのか?
 あまりにも近い、距離感がおかしい。

「前世の大和にお世話になったんだよ、素晴らしい男だった」
「ど、どーも…?でも、わたしはわたしになるので…」
「うん、解っているよ。君は君。前世の彼は彼だ。でも魂は変わらないからね、私の気持ちは君に注がれることになってしまう」
「あ、あの」
「ん?」

 大和が下がると背が壁に当たった。
 ジャックは壁に手を当て大和に詰め寄る。壁ドンのようになってしまう。

「距離が近いですっ!?」
「君が逃げるからだね。私は今の君の柔らかい表情を見るのが好きなんだよ」
「ひゃいっ」

 ジャックの手が大和の頬を撫でる。

「キスしてもいい?親愛のキスなんだけど」
「はっ!?キス!!?」

 大和の顔が熱くなる。
 よくわからない、無い感覚が“思い出される”。
 何かを言おうと開く口から言葉が出てこず、ジャックはその半開きの口を塞いだ。
 親愛のキスなのに舌を深く入れてくる。逃げようとする頭を押さえられ、ジャックの愛しそうにする目を見つめてしまう。
 雰囲気に飲み込まれてはいけないと、ジャックの舌を押し返そうと舌を動かしたのがいけなかった。
 絡みつく感覚にぞわぞわと背筋が震え頭の中が痺れる。

「魂がね、覚えてるんだよ。君は優しいからよく私の相手をしてくれていた、ありがとう大和」
「はぁっ…はぁっ…」
「できれば続けてもいいかな?」

 近くで囁くジャックの声が遠くに聞こえる。
 息が上がって仕方ない、身体が疼いているこの感覚は何なのか。
 前世なんて知らない、知らないが―――ジャックのせいで思い出させられているのかもしれない。
 大和は言葉に出さず、ただ小さく頷くだけだった。



  ◇◇◇◇



 大和はジャックの上で鳴いていた。
 前はジャックからやっていたので今度は大和が好きにしてほしいと騎乗位をさせられて大和は初めてなのに腰を振るよう言われて解らないなりに上下に動いていると「ここが好きだろう?」と感じるポイントを擦られ、叩かれてるうちに喘ぎながら腰を振っていた。
 奥にもっと欲しくてM字に脚を開き、仰け反って、でも手はしっかりとジャックが掴んで支えてくれていて。

「じゃっく、どの、…!じゃっく、あ、ひっ…あ、あっあぁぁ…!!!」
「ここ好き?奥のここが届くの好き?ねぇ大和、もっと動いて、ほら」
「うご、けなぃっ…きもち、よすぎてぇ…!」
「できるよ、ほら、こう…」
「ひぃっ!あ、あぁぁぁ」
「ね?腰支えてて上げるから」

 ジャックは離した手を腰に回し、大和はジャックの肩に手を回す。

「ぁっ!あっ…あ…!ひぃっ!!!!」
「気持ちいいね大和、ほら、もっと動くんだ」

 ちょっとサディスティックさを覗かせながらジャックが大和を応援しているうちに大和は悲鳴と痙攣を経てぐったりとする。

「自分でイケたね、可愛いよ。ふふ、興奮してきたな」
「ジャック、どの…?」

 大和はまだ中にあるジャックのナニがより一層硬くなるのを感じる。
 イったのは自分だけだ、ジャックはまだイケていない。

「大丈夫だよ大和、今度は私に身を委ねて」

 優し気に微笑むジャック。
 この笑顔、知っている!―――大和の脳が警笛を鳴らす。



 しっているかおだ!

 まぐわっている時によくむけていたかおだ!

 このかおがみたくて、抱かれていたのだ!



 ヒュッと息をのむ大和。
 思い出してしまった、自分が好きだったもの。前世の記憶ではなく趣向のみ。
 これからジャックにたっぷりと出されるのだと考えただけで中のモノを締め上げてしまった。 



 ◇◇◇◇



 ジャックに蹂躙された大和はまだ解放されなかった。
 たっぷりと気持ちよくなってほしい、という。

「良い時代になったよね」

 なんてやっぱりあの笑顔でいいながらジャックは大和を玩具で責めていた。
 舌を噛んではいけないと、猿轡を噛まされ深く感じて欲しいからと目隠しを付けさせられ、変に動くと危ないからとM字開脚に拘束する手足の拘束具で繋がれて長くて太いバイブを突っ込まれていた。
 唾液を垂れ流しながら唸り身悶える大和に「やっぱり拘束しておいてよかったね」なんて言いながらバイブの振動調整をして責めの手を止めないジャック。
 バイブだけでなく他の場所も弄られて大和はイキ続けとろとろの精液が垂れているところに水のようなものが一気に噴き出たりもした。ジャックは嬉しそうに喜んでまったく手を休めない、鬼畜であった。



 そうして体力の限界を迎えて気絶した大和の意識が戻ったとき、身体は既に解放されていた。

「おはよう大和、水分取ろうね。」
「……」

 声が上手く出ない、カラカラに乾いている。ジャックから水を受け取り飲み込んでいく。

「お風呂入ろうね?洗わせてくれないか?そのあとゆっくり御飯でも食べて過ごそう」
「え、いや、あの…」
「どこか痛い?やりすぎたかな?大和なら大丈夫だと思ったんだけど…」

 ジャックの手が腹を撫でる。

「ひゃっ!いえ、痛い所はなくて!」

 腹の奥がずくずくと疼き始めて思わず大和は腰を引く。

「…おもちゃであれだけやってもまだ足りてないんだね?」
「え!?そんなことはない、はず…」
「大和は自分で気付けてないだけだ。前の大和は私の相手をしてくれたあともまだ足りてなさそうだった。

 私は申し訳なくて…今世ではたっぷりやろうと思って準備していたのに、甘かったようだ」

「ちがっ…!わたしを淫乱のように言わないでください!
 あ、あのですね、貴方が触ってくるからこうなるんですよ、近いんですよ!近すぎる!距離を保って!
 そんな手つきで腹を触られたらそうなります!」
「そんな手つき…?」

 ジャックは自分の手を見てにぎにぎする。

「わたしにベタベタしないようにしてください…」
「そ、そんな…私は大和を抱きしめたいんだが?甘やかして、健やかに過ごしてほしいって思ってて…ね?大和
 私に甘えてくれていいんだよ」
「遠慮します、本当に、まず距離を取らせて、ずっとわたしの相手はダメでしょう!そもそも恋人がいるでしょーに!」
「シャーロットも甘やかすよ。大丈夫、みんな甘やかしたいんだ」

 ふふ、と笑うジャック。

(こ、この人…壊れているのでは…?)

 ジャックに脳を溶かされて状況に流されてこうなってしまったが、早急にシャーロットと相談しなくてはいけないのでは?
 前世に囚われている…というわけではない、前世の記憶を今世で追っているのではない。
 いや…ある意味では囚われているのだろう、前世で体験した何かしらの事象に囚われている。
 大和もジャックに絆されてしまったが強い意志でもって流されずにしなければジャックの甘やかしというものが止まらない気がする。