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百鬼夜行奇譚

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土鎌家の食卓

土鎌兄弟。
 神子は自室の椅子に座り、スマホを弄っていた。
 そんな神子の背後に牽牛は立ち、神子の長く美しい髪を乾かしていた。

「あら?今日の夜食の時間が早いわ」

 画面を眺めながら神子が呟く。

「例の方ですか」
「うん、いつも深夜に流すのに。わー、お肉おいしそう。
 いいなぁ弟さんいつも食べれて」
「……」
(それは、土鎌さまです。お嬢様…)

 牽牛はグッとつっこみたいのを堪える。
 教えるのはヤボというものである。



   ****



「にくー!にくにくー!」
「あぁぁぁもう!お前ーーー!!お前なぁーーー!!!」

 沙汰は頭を抱えていた。
 沙汰の実の兄であるシキの『お腹すいたからご飯作る』が始まったのであるが、作りすぎである。

「量を考えろ!!」
「大量に作ると美味い」
「そうだけどさ!!なんですき焼きにすんの!?」
「大丈夫、明日これにうどん入れるから」
「明日の段取り聞いてないよね??」
「ぷりぷりすんなよ沙汰ちゃん~。食べて~?」

 シキはニコニコしながら炊きたてのご飯をよそい始める。

「…シキちゃんが大量に作るから、オレ太りそうで嫌なんだよ」
「女子かよ。」
「ただでさえ!みこが!なんか良く解らん男に取られそうなのに!!!」
「え?いい男なの?」
「オレより背が高い。色白。あとは知らん。なに考えてるのかもわからん顔してる」
「おー、沙汰ちゃんヤバい~。って神子ちゃんの好みはお前だと思うから安心しろって」
「…体型を維持しなくては」
「太らないと思うけどなー。お前部活掛け持ちしすぎてるし。生徒会も入ってるし。
 働きすぎてない?いっぱい食べて体力維持してね?」

 ご飯をもりもり盛るシキ。

「盛りすぎ!!!」



   ****



(うーん、昨日あんだけ食べたのに朝食も食べてしまった…)

 食生活は全ての主導権をシキに握られているせいか、押されるとそのまま食べてしまうのである。

「オハヨー、沙汰」
「はよー銀鏡」

 同じクラスの銀鏡が教室に入るなり声をかけてくる。

「今日暇?暇ならどっか遊びにいかない?」
「今日は予定がある」
「部活?」
「そう」
「部活やめて遊べばいいのに、真面目くんだよなぁ」
「んー…なんか色々と、出来てしまうからな…」
「本当お前それ嫌味だよな」
「出来るだけで、とくに好きにもならないから素人止まりだよ」



  ****



(好きなのは神子しかいない…)

 幼馴染で、昔から可愛くて、今は美しくて―――

 自由で我侭なところもあるが、それを含めて全てが愛しい。

 自分の人生を彼女に捧げても良い、いや捧げたい―――

 あの男が…正法院奏の存在が心を掻き乱すが。
 シキも兄としては好きな部類ではあるが、シキの方が何かひっかかるものを感じているらしく他人行儀に振舞うことがある。
 似てはいないが実の兄であることは確かだ。科学的にも。

 これはシキ側の問題なのだ…。


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