これが百鬼夜行の花吐き病だ!!!(バンブーエルフ、花を吐く)
突然に、リウは膝をついてそれを吐いた。
喉の奥から込み上げてくる"何か"が口の中で膨れ上がって吐くことしかできなかった。
花だった。血色混じりの桃色の花。槍水仙に形が似ているがこちらの方がだいぶ大きい。
「チビ?」
もう成人して高身長になったにも関わらず狐も3匹もリウをチビと呼ぶ。
吐くのを止めようと口に手を当てて押しとめる。
「っ…ぅっ…」
えずいて呻く。
「花の精霊に魅入られたわね。うーん、ちょっとお待ち」
狐はどこから出したのか解らぬ大きな布でリウを包み込むと猪に抱かせる。
「どこか小屋かなにかあればそこを寝床にして治しましょ。チビは極力吐くのを我慢して。
それは腹の下にある丹から精を吸って花を咲かせてるから」
「花精霊(シェ・ファーリン)ってのが近くにいるなら探すけど?」
猿はくるくる如意棒を回しながら言う。
「近くにいても隠れてるから見つけるのは難しいのよ。大丈夫大丈夫、やり方があるから」
一同は山道を進み、そうして都合よく小屋を見つけた。
近くに狩場でもあるのだろう、持ち運びがしにくい手入れ道具等が中に転がっている。
「よしよし、お前ら入れ。猪ちゃんはチビをここに寝かせてね」
狐は自分のデカい尻尾をぽんぽん叩いていう。
そして小さな香入れを懐から出してそれを焚き始め、狐尻尾を枕に寝かされたリウの頭を撫でる。
「なんでチビが食われちゃったんだ?弱くない人間だろ」
強い妖怪の部類に入るので下級精霊のことは気にしたことも無くてあんまり解っていない猿。
他の2匹もそうだろう。いや、水怪も知識はあるだろうが砂と河の地に住んでいたので花のことは得意ではないかもしれない。
「美味しそうだったからじゃない?仙人になりかけ修行中の人間の丹は美味しいのよ。
我々妖怪の丹は不味いらしいけど。ほらこれ食べてみ?」
リウから吐き出されている花を3匹に投げ、狐も花を摘まみ食べるので従う3匹。
「「「おいしい!」」」
猿は味に納得してウンウン頷いて、その隣の2匹はやめられないとまらない状態でパクパク食べている。
これは猿の舌が肥えていて割と今まで良いモノ食べていたのと、反して悪食の水怪と大食いの猪の差がでている。
「この花食べてていいのか?花精霊怒らない?」
「花精霊は花を丹から咲かせる瞬間が御馳走なの。花に執着するのはそこの大食いたちじゃない?」
狐は猿に答えながら赤い紐をリウの首、手首、足首に巻いて結んでいく。
赤い紐はなんだか見ているとその赤さが気持ち悪く感じてくる。血は好きなのに、この血の色はなんだか嫌な気がする。
猿は紐から視線を外す。
「へぇ~。やっぱ精霊ってワケわかんねーわ。姐さん…?何してるの…?」
リウに目隠しをして服を脱がせる狐に猿は震える。
「え?花精霊をおびき寄せる準備してるのと並行してチビの丹が枯渇する前に私の気を流すのよ」
狐の股間から生える赤い鬼のちんちん。
「デッッッッ」
「行くわ」
「いぎぃ!!!!」
悲痛なリウの悲鳴。猿のお尻がキュっとなる。尻尾が脚の間に挟まっている。
「げほ、ぅっ!ぅぅー!」
口を開けば花が出るのでリウの悲鳴が呻きとなる。布が吸い切れぬ涙が目隠しの隙間から流れてくる。
「逃げろ逃げろ、外で食べよう!」
猿は2匹と花を持って外へ飛び出していく。
「あんな逃げなくても猿のケツに興味ないわ…。チビはまぁまぁ肉付き良くなってきたわね。もっと筋肉つけるのよ」
胸元を撫でながら言う狐。
「もう少しお待ち。あいつらが外にいったからそこから本番なのよ。それまで死ぬんじゃないわよ?」
キスは花を舌で掻き分けながらリウの舌に触れ合う。
花の味がする。花の香りも強い。リウ自身が花を噛みしめたせいだろう。
まだまだ溢れるので狐も口の中に少しだけ花を入れて咀嚼する。
美味い、人間の精気は美味い。
ズクズクと鬼の股間が疼く。これは仕方がない、鬼はそういうものだ。
リウを寝かせゆっくりと腰を前後に動かし始める。全部はさすがに入らないが今回は性行為が目的ではないので問題ない。
房中術というのがあるが、狐は抱かれる気が全くないので力技でいくのだ。
リウの腹部に手を当て気を流しながら腰を動かし続ける。
「ひぅっ…ぁ、ひっ…」
吐く量が治まってくる。狐の気が花の生成を邪魔しているのだ。
しなしなだったリウのナニが少し元気になってきた。
「良い感じだわ。ふふ、じゃあ深くイキましょうか」
「ッいぎィ!!!!」
奥まで貫かれてリウの身体が跳ねる。
脚は指先まで伸び、痛みに狐尻尾の毛を握り締める。
「全部押しつぶしてしまってるからチビのキモチイイとこってピンポイントで責めらんないなァ」
「やめっ、苦し…ぃ!いたイ!」
「もうちょっと、もうちょっと…」
もうリウをオナホ代わりに、リウの腰を掴んで離さず狐は攻め立てる。
「ぃぃぃぃ…!!!」
痛みで仰け反りながらリウは鬼の精気と精液を腹の底で受け止め、自身も射精した。
バツン!と、リウに結んでいた赤い紐が5本とも同時にはじけ飛ぶ。
「丁度いいタイミングだわ。」
ナニを引き抜いて立ち上がる狐。
見下ろされるリウの姿は煽情的な息遣いで事後の姿であり、外見の相乗効果でとても淫靡である。
「ま、チビのことはあとにして…やるか」
狐はリウを放置して外に出た。
◇◇◇◇
猿と水怪は激痛に腹を押さえ崩れる。
口からボトボトと花が溢れ零れてきた。
「「!?!?!?」」
混乱する3匹であるが小屋から狐が出てきて二人のザマに微笑んだ。
「よし、上手く移せてたようで何より」
「あ゛ね゛さ゛ん゛っっ!?おごっ」
「苦しいでしょ?安心して。花精霊も苦しんでるわよ。美味しい人間の丹からお前らの腐った丹になったからね。
だから怒り狂ってここに来る」
腐ってないもん!と抗議しようにも吐いても吐いても口の中が埋まって上手く喋れない2匹の後ろにいた猪が先に気づき動いた。
地面を抉る強い強い足踏み。
土の中にいる、それだけでその場の者たちは体が動いていた。
水怪が腹に当てていた手を地に着けて力を籠める。土が水分を含んで一帯が一瞬にして泥水と化す。
仲間たちの足元は沈むことのない器用な術だ。
「げほげほげほっ!」
全然喋れてない。吐き出される花がみずみずしさを失っていて、枯れていっているのではなく"ぐちゃり"と文字通り腐り始めていた。
あまり良い音ではない濁音まみれの水音と共に泥の槍が地から無数に生え出て花精霊だろうと思われるミミズのような形の何かが貫かれていた。
「姐さん゛!」
猿が如意棒を伸ばし花精霊を押し飛ばす。
「おらぁ!」
振り上げた金棒でもって、狐は花精霊を叩き潰した。
ぼんっと爆発するようにして花精霊が破裂し血色混じりの桃色の花びらが舞い散った。
「はーっ…やっと収まった」
ぐったりする猿。水怪が地面から手を離すと泥は元の土に戻る。
「…これか」
恨みがましそうな顔をしつつ水怪は猿の襟首に突っ込まれていたヒトガタを取ると、自分の首筋も探って見つける。
そのヒトガタは赤い糸(髪の毛かもしれない)でヒトガタと黒髪の一房を巻いて縛り付けていた。気持ちが悪い。
恐らく黒髪はリウの髪だ。
猪だけ無事なのは多分ただ狐の依怙贔屓である。
「そう!小屋の中で焚いた香でチビの存在に目隠しをしてね、術で花を移してあんたらをチビと誤認させたのよ。
それじゃ花を全部燃やしますか」
「食べないんだ?」
「さすがの私も疫病は気分的に食べたくないわ…チビから出た花はギリ食べれるけどネ」
「あ、あぁ…」
納得する水怪に首をかしげる猿と猪。
「アナタたちに教えてもすぐ忘れそうで嫌ザンスけどまぁ説明しましょうか…
花の気がある妖怪は病が変化したものが多いザンス。
全部がそういうワケじゃないけど今回のは症状が病に近いので間違ってはないでしょう」
「病は"木"からってそういう…コト!?」
「違うよ?」
「はいはい、延々続きそうな会話はそこまでにして花を集めろー」
パンパンと手を叩く狐。
小屋のなかで吐いたリウの分も含めてできる限りの範囲で集めた花をお焚き上げしていると弱ったリウがやってきた。
花を吐いて体力を失ったせいではなく、痛む部分がある歩き方でよろよろだ。
「あら、痛み止め飲む?」
「このクソババア…!ケツがズタズタになったぞ!!」
猿がヒェェ…と怯えている。
「あなたも大人だからそれぐらいどうってことなくなるから。すぐ治って今度は寂しくなるわよ」
「なるかこの傻子ゥゥゥ!!!!」
「ほほほ、生娘ね」
リウから放たれる暴風をいなしながら焚火に土をかぶせる。
「まだまだ私らに保護されてるんだからもっと強くならないとダメなのよ。何度も私に掘られることになるからね」
「ぐぬぬ…」
悔しがるリウ。関係のない猿がビビりまくっている。猿は掘られたことはないが、もともとがボス猿なので掘られることを恐れているのだ。
ちなみに猿は細マッチョなので狐の性的対象外である。
「がんばんなさいねー」
適当に言いながら狐はリウの頭をポンポン撫でる。
「…師匠、もっと修行を。手加減なしで」
「は、はい」
「チビに気圧されてる…」
リウの気迫に押されてカクカク頷く猿を横で見ながら水怪は呻くように呟いていた。
猪はもうその場でうたた寝。大物である。
メモ
花精霊(シェ・ファーリン)
↑適当な造語読み
↓読みの元
邪(シィエ)花(フゥア)霊(リィン)
赤い紐、赤い糸は狐の地毛(金輪の髪)なんだけど、聖人属性の髪だから妖怪的に気持ち悪く感じるってワケ。