いちゃいちゃさせたかった
 仙狐として九輪偽惑迦(くりんぎまどか)は世を渡り歩いている。
     人を化かして迷惑を掛けながら面白おかしく生きていた。
     そのような趣味である。彼女は真面目に不道徳な行いに取り組んでいる、趣味なので。
     なので思い付きでキョンシーを使役しようと考え実行した。
     具合の良い死体が目の前にあったのと、大嫌いな神への嫌がらせでもあった。
     キョンシーを産みだしてからはよく手入れをするようになった。
     彼女は真面目ゆえに道具の手入れもきっちりしてしまう。これはもう性分である。
     彼女はとある男たちの残滓の寄せ集めで生まれたのであるが、まぁその元となる男たちの性分に抗うことなどできないのだ。
     しかし彼女も抵抗する心はあるので手入れの仕方を凝った。
     神に対しての嫌がらせのためもある、あと女性的な手入れをするのは彼女の個性である。
     寄せ集めといっても彼女としての自我は生まれていた。
        
    
    
      ◇◇◇◇
    
    
    「新色が出たからお前は私のお下がりを塗ってあげる」
    
     キョンシーの手入れをした爪に惑迦はマニキュアを塗り始める。
     死体であるキョンシーは抵抗も何もせずただされるがままだ。
     惑迦の手入れにより髪も肌も一般的なキョンシーより艶が良い。ほぼ扱いが人形であった。
    
    「お前、勝手にしゃべったりしていいのよ?」
    
     顔を覆う札をぺろりとめくりあげて呟くがキョンシーの光を通さない虚ろな目は惑迦を見ていない。
    
    「話し相手にもならないなんて役に立たないんだから。反応もしないからセックスしても楽しくないし」
    
     キョンシー化した直後は硬直状態で硬かったが今は年月が過ぎて柔らかくなった。
     独りでするのも物足りないのである。
    
    「暇だしその辺の手入れしようかしら…?覚悟しなさいね、めちゃくちゃに喘がせてやるわ」
    
     ケツの穴を縦割れにしてやると恐ろしいことを呟きながら惑迦は貪るようにキスをする。
    
    「…見せる相手がいないのよねぇ」
    
     惑迦の口紅で赤くなったキョンシーの口元は惑迦が札から手を離すことで隠れてしまった。